2026-07-31 Tii技術情報研究所
はじめに
今月公開された建設・土木・防災・環境分野の研究・技術開発を見ると、「気候変動への適応」「AI・DXによる施工・維持管理の高度化」「脱炭素化」「インフラレジリエンスの向上」という四つの潮流が、これまで以上に鮮明になった。
豪雨や山火事、土砂災害など複合災害への対応では、人工衛星やAI、IoTセンサを活用した予測型防災が急速に実用段階へ移行している。一方、CO₂固定コンクリートや副産物利用、リニューアブルディーゼルなどGX(グリーントランスフォーメーション)技術も社会実装が進み、建設産業そのものが脱炭素社会の実現を支える役割を担い始めている。また、施工現場ではAI画像認識、遠隔測量、3Dマシンガイダンスなどのデジタル技術が現場全体を支える基盤となりつつある。
本稿では、今月公開された53件の記事を俯瞰し、今後の研究開発や社会実装への影響が大きい10のテーマとして整理した。

§1 今月の注目テーマ TOP10
第1位 AI・DXによる建設現場の高度化
概要
建設DXは、個別の施工支援から現場全体を統合管理する段階へ進んでいる。AI画像認識、3D施工、遠隔測量、電子施工管理、IoT監視などが相互に連携し、施工品質・安全性・生産性を同時に高める基盤技術として成熟し始めた。
対象記事
- AIによる画像判定機能付きクレーン用ズームカメラ
AIによる画像判定機能付きクレーン用ズームカメラ(KT-260016-A)クレーンブーム先端に取付けた専用カメラより吊荷真下付近の状況をズーム機能で撮影した画像を元にAIによる画像判定機能で判定し運転者に画像と警告音で注意喚起出来る技術開発会社:株式会社TCI区 分:システムNETIS登録技術本技術は、クレーン... - GradeMetrix® 後付け2D・3Dマシンガイダンスシステム
GradeMetrix® 後付け2D・3Dマシンガイダンスシステム(KT-260014-A)オフセットブームやスイングブーム仕様の小型バックホウから中・大型バックホウまで対応した、後付け2D・3Dマシンガイダンスシステム開発会社:Hemisphere GNSS社区 分:システムNETIS登録技術本技術は、中大型機から小型機のバッ... - 自動測量遠隔管理システム「ソナーリモート360」
自動測量遠隔管理システム「ソナーリモート360」(QSK-260001-A)〜浚渫船・起重機船への360°旋回ソナー搭載による水中施工のリアルタイム可視化〜開発会社:株式会社白海区 分:システムNETIS登録技術360°旋回架台にソナーを搭載し浚渫船または起重機船に設置する。浚渫船ではナローマルチビームにより海底... - 現場施工管理資料の電子化アプリ「ミライ工事シリーズ」
現場施工管理資料の電子化アプリ「ミライ工事シリーズ」(KT-260010-A)現場での施工管理で行う点検、日報、出面、KY安全指示書等の記録をスマートフォン等で作成し、報告書の出力や工事写真の管理ができるアプリ開発会社:株式会社ミライ工事区 分:システムNETIS登録技術本技術は、工事写真台帳や各種報告書をアプリか... - 高精度2次元レーザー計測システム
高精度2次元レーザー計測器を用いた計測システム(KT-260012-A)トンネル等の断面や測線の計測において,高精度 2 次元レーザー計測器を用い出来形計測や施工管理を行うシステム開発会社:五洋建設株式会社区 分:システムNETIS登録技術本本技術は、レーザー距離計を回転させ断面形状の2次元点群計測を行うシス... - 維持管理に着目した既存港湾施設の3次元モデルの要件設定及び簡易作成手法
維持管理に着目した既存港湾施設の3次元モデルの要件設定及び簡易作成手法2026-07-07 国土技術政策総合研究所本研究は、高潮や波浪による浸水被害が増加するコンテナターミナルを対象に、施設全体の浸水脆弱性と対策効果を定量的に評価する実務的手法を提案した。気候変動の影響により浸水リスクの増大が懸念される一方、... - BizStack Construction Apps 水中ポンプ監視App
BizStack Construction Apps 水中ポンプ監視App(SK-260003-A)センサーによる水中ポンプの稼働状況の監視および通知システム開発会社:セーフィー株式会社、MODE,inc.区 分:システムNETIS登録技術本技術は水中ポンプの死活状況をセンサーで無人監視し異常を即時通知するシステムで、従来は作業員が定期...
第2位 気候変動適応と防災インフラ
概要
豪雨・山火事・高潮・海岸侵食・土砂災害など、気候変動に伴う自然災害への対応技術が急速に進展している。AIやシミュレーション技術を活用した予測型防災への転換が今月の最大の特徴である。
対象記事
- 越流対策型布製型枠工法
越流対策型布製型枠工法(HR-260006-A)河川堤防の裏法面を保護し、越流に対して粘り強い表面被覆型/布製型枠工法開発会社:布製型枠協会区 分:工法NETIS登録技術本技術は透気防⽔シートと布製型枠による堤防裏法⾯保護⼯法で、従来は連節ブロック張⼯で対応していた。本技術の活⽤により... - 米国650万人の地すべりリスクを示す新データベース
米国650万人の地すべりリスクを示す新データベースを構築(6.5 million Americans face landslide risks — a new database shows where they live)2026-07-29 ワシントン大学(UW)米国ワシントン大学の研究チームは、世界各地の土砂災害に対する人口やインフラの曝露状況を評価できる全球規模の「土砂災害曝露データベース」を開発・公開した。従来は土砂災害の危険性や被害状況を地域ごとに... - カリフォルニア州の山火事被害リスクマップ
カリフォルニア州の山火事被害リスクマップを開発(UC Irvine Researchers Create California Wildfire Damage Risk Map)2026-07-27 カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)カリフォルニア大学アーバイン校(UC Irvine)の研究チームは、カリフォルニア州全域を対象とした100メートル解像度の建物被害リスクマップ「Wildfire Building... - 豪雨時の下水処理場への浸水被害を防ぐ運転支援技術
豪雨時の下水処理場への浸水被害を防ぐ雨天時の 浸入水量予測・運転支援技術のガイドラインを公開 ~近年の豪雨増加による下水処理場の浸水リスクを軽減~2026-07-24 国土技術政策総合研究所国土技術政策総合研究所(国総研)は、豪雨時に分流式下水道で発生する雨天時浸入水による下水処理場の浸水リスクを低減するため、「分流式下水道の雨天時浸入水量予測及び雨天時運転支援技術」の導入ガイドライ... - 土砂災害の発生は「土の厚さ」で決まる
土砂災害の発生は「土の厚さ」で決まる2026-06-18 筑波大学筑波大学の研究グループは、航空レーザー測量(LiDAR)による高精度地形データを用いて、豪雨による斜面崩壊の発生要因を解析し、土砂災害の規模を左右する主要因が斜面の「土の厚さ」であることを明らかにした。複数の豪... - 海岸崖崩落を予測する早期警戒システム
海岸崖崩落を予測する早期警戒システムの可能性を報告(New Report Outlines Potential to Predict Coastal Cliff Collapses)2026-07-09 カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)スクリップス海洋研究所の研究チームは、海岸崖の崩落を事前に予測できる可能性を示す報告を発表した。研究では、サンディ... - 気候変動に伴う既存防波堤改良の意思決定
気候変動に伴う作用条件の変化に対する既存防波堤の改良に関する 意思決定問題における応答曲面法の適用2026-07-07 国土技術政策総合研究所国総研は、気候変動による波浪条件や水位などの作用条件の変化を考慮し、既存防波堤の性能評価と補強対策を効率的に実施するための実務的手法を提案した。気候変動の進行により、防波堤は従来より厳しい外力を受...
第3位 脱炭素建設材料・GX技術
概要
建設材料自体がCO₂を固定する時代が現実となった。副産物利用や代替燃料も含め、建設産業のGXが実証段階から普及段階へ移り始めている。
対象記事
- CO₂固定コンクリート製品の現場実証
人工石灰石を用いた製造時固定量110kg CO2/m3のCO2固定コンクリート製品の現場実証を完了2026-07-23 新エネルギー・産業技術総合開発機構,住友大阪セメント株式会社,大成建設株式会社NEDO、住友大阪セメント、大成建設は、グリーンイノベーション基金事業の一環として、人工石灰石を用いたCO2固定コンクリート製品の現場実証を... - CO₂固定混和材の実用化
製鉄副産物を原料としたコンクリート用CO2固定混和材の実用化に目途 ~新たな環境配慮型コンクリートの社会実装に向け4者で共同研究~2026-06-30 鹿島建設株式会社,東北大学,宇都宮大学,JFEスチール株式会社鹿島建設、東北大学、宇都宮大学、JFEスチールは、製鉄副産物である製鋼スラグに排ガス由来のCO₂を固定した「炭酸化スラグ」をコンクリート用混和材として利用す... - リニューアブルディーゼル(RD)
リニューアブルディーゼル(RD):軽油代替燃料(KT-260011-A)廃食油・非可食油等を原料とした環境配慮型の軽油代替燃料開発会社:NESTE Corporation区 分:製品NETIS登録技術本技術は、建設現場の建設機械や運搬車両で使用する廃食油や廃動植物油脂等を原料とした水素化精製の環境配慮型軽油代... - 古代コンクリート耐久性の新知見
古代コンクリートの卓越した耐久性の仕組みに新たな知見(Researchers shed new light on ancient concrete’s extraordinary durability)2026-07-08 カリフォルニア大学バークレー校ローマ時代のコンクリートが約2000年にわたり高い耐久性を維持してきた理由について、カリフォルニア大学バークレー校を中心とする研究チームが新たな知見を発表した。従来は、火山灰と石灰の反応に...
第4位 地下エネルギー・資源開発技術
概要
地熱発電やCCUS、地下資源開発を支える新しい岩盤制御技術が相次いで発表された。エネルギー安全保障と脱炭素化を両立する重要技術群である。
対象記事
- 新しい水圧破砕法
岩盤に低負荷で流路をひらく新しい水圧破砕法を開発 ―国産エネルギー資源をより身近にする新技術―2026-07-16 東北大学東北大学の研究グループは、地熱発電や天然ガス開発に不可欠な水圧破砕技術を改良し、地下岩盤により低い負荷で流路を形成できる「反応性増粘流体破砕法」を開発しました。従来は、高温地下では水の粘度低下により流体が漏れや... - CO₂と反応性増粘流体を用いた岩石破砕
CO2と反応性増粘流体を用いた岩石破砕で、高温・高圧地下環境でも閉じにくいき裂を形成-地熱発電・天然ガス開発など地下資源開発への応用に期待-2026-07-08 東北大学東北大学を中心とする研究グループは、CO₂水押破砕と反応性増粘流体を組み合わせることで、高温・高圧の地下環境でも閉じにくい岩石き裂を形成する新技術を開発した。従来の水圧破砕では、形成されたき裂が地圧で閉じやすく... - 植物由来薬剤による地下浸透性改良技術
植物由来薬剤による地下浸透性改良技術を開発 ―CCUS事業の推進に向けたCO₂の圧入性向上と地下エネルギー開発への応用に期待―2026-07-09 東北大学石油資源開発(JAPEX)と東北大学の共同研究グループは、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)の効率向上を目的として、植物由来の生分解性キレート剤GLDAとフッ酸系成分、塩水洗浄を組み合わせた地下浸透性改...
第5位 インフラ維持管理・長寿命化
概要
老朽化インフラへの対応では、補修技術だけでなく維持管理のデジタル化や性能評価技術の高度化が進展している。
対象記事
- ボンドKEEPメンテ工法 SF-ONE
ボンド KEEPメンテ工法 SF-ONE(KK-260023-A)1工程・ローラー施工のコンクリートクリアコーティング開発会社:コニシ株式会社区 分:工法NETIS登録技術本技術は、既設コンクリートのはく落防止工で、1液型ポリウレアウレタン樹脂を用い1工程で、耐久性、自己消火性があり、透明で下地視認性の... - 既設基礎杭の耐荷性能評価及び補強方法
既設基礎杭の耐荷性能評価及び補強方法に関する共同研究報告書20206-06-30 土木研究所本共同研究では、既設道路橋の基礎杭について、大規模地震後の供用可否を合理的に判断し、効率的な補修・耐震補強を実現する技術を検討した。まず、地震で損傷した場所打ち杭を対象に鉛直載荷試験を実施し、損傷後も一定の... - トンネル補修技術共同研究報告書
トンネルの補修技術に関する共同研究報告書 -新たなはく落対策工の耐荷力特性と長期耐久性の検討-20206-06-30 土木研究所本共同研究では、道路トンネル覆工の材質劣化によるうき・はく離対策として、小規模なはく落塊を対象とした新たな補修工法の耐荷力特性と長期耐久性を評価した。従来広く用いられてきた炭素繊維シート工法に対し、養生時間... - 国内空港滑走路・誘導路の変状調査
国内空港の滑走路・誘導路に発生する変状の実態2026-07-07 国土技術政策総合研究所国総研は、空港滑走路・誘導路の巡回点検を効率化するため、舗装変状の発生傾向を分析した。現在、国内空港では安全確保のため定期的な巡回点検が実施されているが、将来的な人口減少に伴う点検作業員不足が懸念... - 船舶係留施設衝突事故分析
船舶の係留施設への衝突事故に関する基礎的分析(その2)2026-07-07 国土技術政策総合研究所本研究は、2017~2021年度に発生した360件の国有港湾係留施設の損傷事故を対象に、事故の発生状況と復旧負担の実態を分析した。前報で整理した事故発生経緯や操船状況に加え、今回は係留施設の損傷内...
第6位 施工技術・生産性向上
概要
施工品質を向上させながら、省人化・省力化を実現する施工技術が数多く公開された。熟練技能のデジタル化が進んでいる。
対象記事
- 打設高さマーキングライト
打設高さマーキングライト(KK-260024-A)型枠から地山に向けて、一定間隔で光のラインを照射し、コンクリート打設作業のリフト高の目印として活用する技術開発会社:岐阜工業株式会社区 分:工法NETIS登録技術本技術は、覆工コンクリート打設において、セントル組立時に設置した透明窓から地... - 幅広3列熱ゴテ式溶着機「デカごて」
幅広3列熱ゴテ式溶着機「デカごて」(KK-260022-A)トリプルワイド シーム型「デカごて」で溶着不良発生リスクを低減開発会社:株式会社ケー・エフ・シー区 分:機械NETIS登録技術本技術は、トンネル防⽔⼯で使⽤する溶着機で、シート接合部の溶着ラインを3列に配置した機械であり、従来の溶着ライン... - TP工法
無足場傾斜地削孔工法「TP(トレインパイル)工法」(KT-260015-A)TP専用機械による狭小部・急峻部での場所打ち杭工及び落石防護柵等の支柱建込み工法開発会社:TP工法研究会、内田産業株式会社区 分:工法NETIS登録技術本技術は、TP工法専用の削孔機とモノレールクレーンより落石防護柵等の削孔及び支柱の建込... - グラブバケット空掘り判別システム
グラブバケット空掘り判別システム「カラミエール」(QSK-260002-A)水中で空掘りか掴んでいるかを自動で判別する技術開発会社: 株式会社白海区 分:システムNETIS登録技術浚渫・床掘工事におけるグラブバケットに装備した荷重計・深度計のデジタルデータをリアルタイム演算し、水中での空掘りを自動判別・即時通知す... - ノロ止めテープ「コンク離シール」
ノロ止めテープ「コンク離シール」(CB-260013-A)型枠とコンクリートとの隙間からノロが流れ落ちるのを防止し、使用後の撤去も簡易な隙間テープ。開発会社: 株式会社 長大、光洋産業株式会社区 分:製品NETIS登録技術本技術は、コンクリートの打設時に型枠と既設コンクリートの隙間からのノロの漏... - 多能工施工による生産性向上共同研究
多能工施工によるコンクリート躯体工等の土木現場施工の生産性向上に関する共同研究2026-07-21 国土技術政策総合研究所国総研資料 第 1352 号国土技術政策総合研究所(国総研)は、将来的な建設技能者不足への対応を目的として、現場打ちコンクリート躯体工を中心とした土木工事の生産性向上に関する共同研究を実施した。研... - 可塑性グラウト増深工法
可塑性グラウト増深工法(KTK-260001-A)既設の重力式岸壁・護岸を対象とした増深工法開発会社:(一社)日本埋立浚渫協会、(国研)海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所、五洋建設株式会社、東洋建設株式会社、東亜建設工業株式会社、若築建設株式会社、あおみ建設株式会社、株式会社本間... - HS-beam
高強度の腹起し、切梁、隅火打ち部材「HS-beam」(TH-260009-A)SS400素材からSM570素材へ材質変更して、部材中間部のボルト孔を無くした土留支保工用の腹起し、切梁、隅火打ち部材開発会社:株式会社エムオーテック区 分:製品NETIS登録技術本技術はSS400素材からSM570素材へ材質変更して、部...
第7位 現場安全・IoT監視
概要
IoTやAIを活用した現場監視、安全管理技術が急速に普及しつつある。危険予知や遠隔監視が標準装備となる時代が近づいている。
対象記事
- 現場ハザードウォッチャー
現場ハザードウォッチャー(KTK-260002-A)多様な気象海象情報や各種警報、熱中症警戒アラート、メッセージ、現場毎に設定した作業中止基準の超過などを自動で取得し、作業員へリアルタイムかつ確実に通知するシステム開発会社:東亜建設工業株式会社、株式会社ジャストプランニング・システム、シスメ... - 超音波流向・流速計
樋門・樋管の排水管理用に利用可能な超音波センサを活用した「超音波流向・流速計」(KT-260013-A)水門・樋管の排水管理において人間の目視が困難な箇所等の流向・流速確認を可能とする超音波センサを活用した流向・流速機械計測システム開発会社:東京計器株式会社区 分:製品NETIS登録技術本技術は、樋門・樋管の排水管理のため水路両岸に超音波セ... - ワイヤレス気象観測機器
ワイヤレスの各種気象観測機器類(風速計等)(CG-260005-A)データ記録機能搭載ワイヤレス式風速計開発会社: 株式会社エンボリック、環境クラウドサービス株式会社区 分:製品NETIS登録技術本技術は、大型のLED表示可能なワイヤレス風速監視システムで、従来は有線式風速計で対応していた。本技術の活用に... - お天気クラウドNext
お天気クラウドNext(CG-260004-A)WBGTから河川水位まで機器設置不要で高精度な気象システムを実現。建設現場の安全対策をどこまでもスマートに。開発会社:日本気象株式会社区 分:システムNETIS登録技術本技術は、機器設置不要で現地の気象データ(雨量、気温、WBGT等)を計... - 非火薬破砕剤検知装置
非火薬破砕剤検知装置(QS-260006-A)RFIDを利用した、非火薬破砕剤の残留薬筒(カートリッジ)を検知する技術開発会社:有限会社ソクテック区 分:システムNETIS登録技術本装置は、非火薬破砕剤を用いた工事において、着火せず残留した薬筒(カートリッジ)を安全に検知するものであ...
第8位 河川・水環境・生態系管理
概要
河川管理は治水だけでなく、生態系保全や水資源管理を統合的に考える段階へ入った。衛星観測の活用も新たな展開を見せている。
対象記事
- 河川管理が世界有数の湿地保全の主要因
河川管理が世界有数の湿地保全の主要因であることを解明(Researchers reveal why river management is so crucial to protecting one of world’s most important wetlands)2026-07-27 スウォンジー大学スウォンジー大学の研究チームは、イラク南部の世界遺産「メソポタミア湿地」の保全には、現地の降雨量よりもチグリス川・ユーフラテス川の上流域における河川管理が決定的に重要であることを明らかにした。研究では、... - 人工衛星を利用した河川水温解析
人工衛星を利用した大規模河川水温解析手法を開発(Researchers unlock new tool to study river temperatures over large scales)2026-07-20 バージニア工科大学(Virginia Tech)バージニア工科大学(Virginia Tech)の研究チームは、人工衛星のリモートセンシングデータを用いて河川水温を高精度に推定・監視する手法を開発した。河川水温は水生生... - 河川健全性評価法の限界
河川健全性評価法の限界を明らかに(Widely-Used Method for Assessing Stream Health Doesn’t Work Very Well)2026-07-13 ノースカロライナ州立大学(NC State)米国ノースカロライナ州立大学(NC State University)の研究チームは、米国で広く利用されている河川の健全性評価手法には重大な問題があり、実際の河川環境を正確に... - 乾燥化する気候で都市水道料金が上昇
乾燥化する気候で都市の水道料金が大幅上昇する可能性(Drier Climate Could Nearly Double Water Bills in Some Cities)2026-07-08 スタンフォード大学米国スタンフォード大学の研究チームは、気候変動による高温・乾燥化が家庭の水道料金を押し上げる要因になっていることを明らかにした。研究では、カリフォルニア州の長期間の気象データと水道料金を分析した結果、...
第9位 環境共生型インフラ
概要
建設技術においても、生態系保全や循環型社会への配慮が重要な評価軸となっている。材料や施工方法にも環境性能が求められる時代である。
対象記事
- SBフィルター
侵食防止型防草フィルター「SBフィルター」(HK-260007-A)侵食防止と防草効果の2つの効果を持ち合わせる、HYBRID型製品開発会社: 多機能フィルター株式会社区 分:製品NETIS登録技術本技術は、法面に施工する防草シートである。防草対策に付帯して侵食防止が可能な仕様となっており、従来技術の課題... - バイオマス材料を使用した保安灯
バイオマス材料を使用した保安灯(TH-260010-A)本体ボディ部にバイオマスプラスチックを配合した保安灯開発会社:株式会社キャットアイ区 分:製品NETIS登録技術本技術は、本体ボディ部にバイオマスプラスチックを配合した保安灯で、従来は、石油資源由来プラスチックを使用した保安灯で対応してい... - 生分解性プラスチック薬液注入管
生分解性プラスチックを用いた薬液注入管「バイオパイプ・シリーズ」(QS-260005-A)薬液注入管に生分解性プラスチック製注入管を用いることにより、地盤改良後の残置管による環境負荷を低減する技術。開発会社:強化土エンジニヤリング株式会社区 分:材料NETIS登録技術本技術は薬液注入工に関する技術である。従来は、硬質ポリ塩化ビ... - 鉄道建設と外来植物研究
鉄道建設が外来植物の定着に有利な条件を生み出す可能性(Railway Construction May Create Favorable Conditions for Invasive Plants)2026-07-13 中国科学院(CAS)中国科学院(CAS)西双版納熱帯植物園(XTBG)の研究チームは、大規模な鉄道建設が土壌環境や地下の菌類群集を変化させ、外来植物の侵入を促進することを明らかにした。中国・ラオス鉄道沿線の14駅と周辺... - 繊維製護岸法覆工「FIT-SLOPE」
繊維製護岸法覆工「FIT-SLOPE」(HR-260005-A)剛性のある化学繊維を用いたスロープ型かごマット開発会社:前田工繊株式会社区 分:製品NETIS登録技術本技術は、剛性のある化学繊維を用いたスロープ型の繊維製護岸法覆工で、従来は鉄線製のかごマット(スロープ型)で対応していた。本技術の活用に...
第10位 AI・データサイエンスの社会実装
概要
AIは建設分野だけでなく、防災、交通、安全、社会システム全体へ応用範囲を広げている。ビッグデータ解析による意思決定支援が今後の研究開発の鍵となる。
対象記事
- 大規模言語モデルで交通事故解析を高度化
大規模言語モデルで交通事故解析を高度化(UH Professor Uses Artificial Intelligence to Make Roads Safer)2026-07-16 ヒューストン大学ヒューストン大学の研究チームは、交通事故の発生要因をより高精度に分析・予測するため、人工知能(AI)を活用した新たな解析手法を開発した。従来の交通事故分析では、道路構造や交通量、気象条件などの要因を個別... - 近所づきあいと災害への備えの全国調査
近所づきあいの良さは災害への備えの実施と関連 ―全国2.8万人調査で社会・居住条件別の差も明らかに―2026-07-29 東北大学東北大学の研究グループは、全国インターネット調査JACSIS2023の28,481人を対象に、地域とのつながりと災害への備えの関係を分析した。その結果、近所づきあいや地域への信頼、助け合い、地域への愛着が高い人... - 生体認証サービス「SAKULaLa」を活用した顔認証改札
生体認証サービス「SAKULaLa」を活用した、 国内の主な改札機と連携可能な顔認証改札の仕組みを実現 ~既存改札を手軽にウォークスルー型顔認証改札へ ~都内初、池袋駅で導入し、改札から店舗までつながる「手ぶらで快適な生活体験」を具現化2026-07-09 株式会社日立製作所,東武鉄道株式会社,オムロンソーシアルソリューションズ株式会社,日本信号株式会社,株式会社東芝,パナソニック コネクト... - 細菌をマイクロ電源とした高効率リチウム回収
細菌をマイクロ電源とした高効率リチウム回収を実現 — 「電気化学方式に匹敵する効率と速度」と「細菌と材料の自己組織化」で大スケール化を可能に —20026-06-29 物質・材料研究機構,東北大学,東京大学物質・材料研究機構(NIMS)、東北大学、東京大学の共同研究チームは、細菌をマイクロ電源として利用し、外部電源を使わずにリチウムイオンを高効率で回収する新しいバイオ電気化学的手法...
§2 今月見えた技術トレンド
① AI・DXによる建設現場の高度化
今月最も顕著だった技術潮流は、AIやIoT、3D計測技術が個々の施工機械を支援する段階から、現場全体を統合的に管理するプラットフォームへ進化し始めたことである。
AI画像判定機能付きクレーン用ズームカメラは、安全確認や吊荷監視を自動化し、熟練オペレータの判断を補完する技術として注目される。一方、GradeMetrix®による2D・3Dマシンガイダンスや、自動測量遠隔管理システム「ソナーリモート360」は、ICT施工の適用範囲を拡大し、施工精度と作業効率を同時に向上させることを目指している。さらに、施工管理資料の電子化や港湾施設の3次元モデル整備は、施工だけでなく維持管理を含めたインフラライフサイクル全体のデジタル化へと発展している。
しかし、DXの本質は単なるデジタル化ではない。現場で取得される膨大なデータをリアルタイムで共有・解析し、設計、施工、維持管理へと循環させることで初めて価値が生まれる。
今後はデジタルツインやBIM/CIMとの連携が進み、AIが施工計画や品質管理、さらには災害時の迅速な意思決定まで支援する時代が到来するだろう。建設現場は経験と勘に依存した世界から、データ駆動型の高度なマネジメントへと大きく転換しつつある。
② 気候変動適応型インフラへの転換
豪雨、山火事、土砂災害、高潮、海岸侵食など、気候変動に伴う自然災害が激甚化する中で、防災技術は「被害を受けてから対応する」時代から、「被害を予測して備える」時代へ移行していることが、今月の研究から鮮明に読み取れる。
米国650万人を対象とした地すべりリスクデータベースや、カリフォルニア州の山火事リスクマップは、人工衛星データや地形解析を活用して広域的な危険度を可視化する試みである。また、豪雨時の下水処理場への浸入水量予測や、海岸崖崩落の早期警戒システム、防波堤改良の意思決定支援なども、気候変動を前提としたインフラ設計への転換を示している。
日本では従来、過去の気象データに基づく設計が一般的であったが、今後は気候変動による将来予測を設計条件へ反映することが不可欠となる。さらに、防災は構造物の強化だけではなく、AIやIoTセンサによる監視、避難情報の高度化、地域社会との情報共有を組み合わせた総合的なレジリエンス戦略へ発展していくと考えられる。
今月の研究群は、建設技術が気候変動への適応を支える社会基盤へ進化していることを象徴している。
③ カーボンネガティブ建設材料の社会実装
脱炭素化に向けた建設分野の研究は、新素材の開発段階から社会実装の段階へ移りつつある。
今月発表されたCO₂固定コンクリート製品の現場実証では、人工石灰石を利用して製造段階で大量のCO₂を固定する技術が示され、環境負荷を低減するだけでなく、建設材料そのものが炭素吸収源となる可能性を示した。また、製鉄副産物を活用したCO₂固定混和材の研究は、循環型社会の実現と資源有効利用を両立する技術として期待される。さらに、リニューアブルディーゼルの導入は建設機械の運用段階でのCO₂排出削減を後押しし、古代コンクリートの耐久性研究は長寿命化によるライフサイクル全体の環境負荷低減につながる知見を提供している。
今後重要となるのは、材料単体の性能だけでなく、ライフサイクルアセスメント(LCA)を通じて製造・施工・維持管理・更新までを含めた総合的な環境評価である。さらに、CO₂固定量を経済価値として評価するカーボンクレジット制度との連携が進めば、環境性能が建設材料の競争力を左右する時代が訪れる可能性が高い。
建設産業は「CO₂を排出する産業」から「CO₂を固定・削減する産業」へと大きな転換点を迎えている。
④ 地下エネルギー・資源開発技術の新展開
エネルギー安全保障と脱炭素化を同時に実現するためには、地熱発電やCCUS(CO₂回収・利用・貯留)、地下資源開発の高度化が不可欠である。
今月発表された新しい水圧破砕法や、CO₂と反応性増粘流体を用いた岩石破砕技術は、高温・高圧環境でも閉じにくいき裂を形成することで、地下流体の流動性を向上させる新たなアプローチを示した。また、植物由来薬剤を用いた地下浸透性改良技術は、CCUSにおけるCO₂圧入効率の向上だけでなく、地下エネルギー開発全般への応用も期待されている。
従来の地下開発技術は、効率向上と環境負荷低減の両立が大きな課題であった。今回の研究では、岩盤へのダメージを抑えつつ資源回収効率を高める技術が提案されており、持続可能な地下利用への道を切り開く可能性がある。
今後はAIによる地下構造解析やシミュレーション技術との融合により、地下資源開発の安全性・経済性・環境性を同時に高める技術開発が進むだろう。エネルギー転換が進む中で、地下空間は新たな社会インフラとして、その重要性を一層高めていくと考えられる。
⑤ インフラ維持管理は「補修」から「予防保全」へ
高度経済成長期に集中的に整備された社会インフラは、一斉に更新時期を迎えている。一方で、建設技術者の減少や維持管理予算の制約により、従来のように「損傷してから補修する」方式では持続的な管理が困難になりつつある。
今月発表された既設基礎杭の耐荷性能評価技術やトンネル補修技術、港湾施設の3次元モデル整備、滑走路・誘導路の変状調査などは、この課題に対する具体的な解決策を提示している。
これらの技術に共通する特徴は、構造物の状態を定量的に把握し、損傷が深刻化する前に補修や補強を実施する「予防保全」の考え方である。さらに、3Dモデルやデジタルツインを用いることで、構造物の履歴情報や点検データを一元管理し、将来の劣化予測や維持管理計画の最適化が可能となる。
今後はドローン、AI画像解析、IoTセンサなどとの連携により、点検・診断・補修・更新までを一体化した維持管理システムが標準となるだろう。建設産業の競争力は、新設工事だけでなく、既存インフラをいかに長寿命化するかによって左右される時代へ移行している。
⑥ 建設現場は「省人化」から「知能化」の時代へ
今月紹介された施工技術には、打設高さマーキングライト、多能工施工、TP工法、グラブバケット空掘り判別システム、HS-beamなど、多様な現場改善技術が並んだ。一見すると個別の施工機械や工具の改良に見えるが、その背景には深刻な技能者不足への対応という共通の課題がある。
従来の省人化は、人手を減らすことが主な目的であった。しかし現在は、少人数でも熟練者と同等の品質を確保できる「知能化」が重要なテーマとなっている。AIによる施工判断、ICT施工、施工支援システムなどを組み合わせることで、経験や勘に依存していた作業をデータに基づいて標準化し、品質のばらつきを抑えることが可能になる。また、多能工化は単なる人員削減ではなく、一人の技術者が複数工程を柔軟に担うことで現場全体の生産性を高める取り組みとして注目される。
今後はロボット施工や自律施工機械との融合が進み、施工現場は「人が作業する場所」から「人がシステムを監督する場所」へと変化していく可能性が高い。
⑦ AI・IoTによる安全管理はリアルタイム監視へ進化
建設現場では、労働災害の防止が最重要課題の一つである。
今月は現場ハザードウォッチャー、ワイヤレス気象観測機器、超音波流向・流速計、非火薬破砕剤検知装置など、安全管理を支援する技術が数多く発表された。これらは従来の巡回点検や経験に頼る管理手法から、リアルタイムで危険を把握する管理方式への転換を示している。
IoTセンサによる気象観測や水位・流速監視は、豪雨や河川工事における危険を早期に検知し、迅速な避難や施工中止の判断を可能にする。また、AI画像解析による危険行動の検出や設備異常の自動認識は、人的ミスの削減にも大きく貢献する。
今後はウェアラブルセンサや位置情報システムと連携し、作業員一人ひとりの安全状態をリアルタイムで把握する技術も普及すると考えられる。安全管理は、事故発生後の対応ではなく、「事故を発生させない仕組み」を構築する段階へと進化しており、AIとIoTはその中心的な役割を担うことになる。
⑧ 河川・自然環境との共生が新たなインフラ設計思想になる
今月の研究では、河川管理が湿地保全に果たす役割、人工衛星による河川水温解析、河川健全性評価法の課題、外来植物の定着メカニズムなど、自然環境とインフラの関係を再評価する研究が数多く発表された。これらは、従来の治水・利水を中心とした河川管理から、生態系や気候変動を含めた総合的な流域管理へと考え方が変化していることを示している。
河川や沿岸域は、洪水防止だけでなく、生物多様性の保全、水質改善、炭素固定、地域景観など多様な機能を持つ社会資本である。人工衛星やリモートセンシング技術の発展により、これまで把握が難しかった広域の水環境を継続的に監視できるようになったことも大きな進歩である。一方、鉄道建設による外来植物の侵入リスクなどは、インフラ整備が生態系へ与える影響を事前に評価する必要性を示している。
今後は「自然を制御するインフラ」ではなく、「自然と共生するインフラ」が設計思想の中心となり、Nature-based Solutions(NbS)の考え方が建設分野にも一層浸透していくと考えられる。
§3 まとめ
今月紹介された53件の研究・技術を俯瞰すると、建設・土木分野は大きな転換期を迎えていることが分かる。その変化を支える柱は、「デジタル化」「レジリエンス」「脱炭素」「自然共生」の四つである。
- 第一に、AIやIoT、3Dモデル、人工衛星などのデジタル技術は、施工支援にとどまらず、設計、施工、維持管理、防災までを一体化する基盤技術となりつつある。データをリアルタイムで収集・解析し、意思決定に反映する仕組みは、建設産業全体の生産性向上と品質確保を支える中核となるだろう。
- 第二に、豪雨や山火事、土砂災害などの激甚化を背景として、防災技術は「被害への対応」から「被害の予測と回避」へと進化している。人工衛星やAIを活用したリスク評価、IoTセンサによる常時監視、地域社会との情報共有は、今後の防災インフラに不可欠な要素となる。
- 第三に、CO₂固定コンクリートや副産物利用、リニューアブルディーゼルなどの研究は、建設産業が脱炭素社会を支える主体へ変わりつつあることを示している。これからは構造物の性能だけでなく、ライフサイクル全体での環境負荷や炭素固定量も重要な評価指標となるだろう。
- そして第四に、河川や湿地、生態系を含めた自然環境との共生が、新しいインフラ整備の基本理念となり始めている。治水・利水・環境保全を一体で考える流域マネジメントやNature-based Solutionsの考え方は、気候変動時代における持続可能な社会基盤整備の鍵となる。
今月の研究開発は、単なる新技術の紹介ではなく、建設産業そのものの役割が「造る産業」から「社会・環境・経済を統合的に支える産業」へと変化していることを示している。
今後の研究開発では、個別技術の高度化だけでなく、それらを統合して社会全体のレジリエンスと持続可能性を高める視点が一層重要になるだろう。
