2026-07-22 Tii技術情報研究所

はじめに
建設・インフラ分野では、AI、脱炭素、地下資源開発、気候変動への適応など、社会全体を変える可能性を秘めた研究が次々と発表されています。今回、Tiiで紹介された最新の研究記事を俯瞰すると、単なる新工法や新製品の開発にとどまらず、「建設技術そのものの方向性」が大きく変わり始めていることが見えてきます。
今回は、その中でも今後5~10年の技術開発に大きな影響を与えそうなテーマを10件紹介します。
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1. 地下資源開発を変える次世代破砕技術
地熱発電やCCUS(CO₂回収・貯留)、天然ガス開発などでは、地下の岩盤に効率よく流路を形成する技術が不可欠です。
今回紹介された研究では、従来の大規模な水圧破砕とは異なり、より少ないエネルギーで岩盤を破砕する新しい手法や、CO₂と反応性流体を利用して高温・高圧環境でも閉じにくいき裂を形成する技術が報告されました。



2. 大規模言語モデル(LLM)が交通・土木分野へ
生成AIは文章作成だけの技術ではありません。
交通事故解析へのLLM活用では、事故報告書や現場情報などの膨大なデータを解析し、人間では見落としやすい要因の抽出が期待されています。

3. 土砂災害予測の新たな鍵は「土の厚さ」
土砂災害といえば降雨量が重視されてきましたが、新たな研究では「土の厚さ」が発生を左右する重要な要因であることが示されました。
もしこの知見が広く実証されれば、LiDARやドローン、地中レーダーによる土層厚のマッピングが、防災の新たな基盤技術になる可能性があります。

4. CO₂を固定するコンクリートが実用段階へ
建設業界の脱炭素化では、CO₂排出量を減らすだけでなく、建設材料自体にCO₂を固定する技術が注目されています。
さらに今回、固定されたCO₂を炭素同位体比によって正確に評価する手法も発表されました。


5. 気候変動はインフラ経済を変え始めている
気候変動の影響は災害だけではありません。
水道料金の上昇予測、防波堤改良の意思決定、水災害対策の統合的な研究など、維持管理コストや社会経済への影響を含めた研究が増えています。



6. 古代コンクリートから未来の建設材料を学ぶ
ローマ時代のコンクリートが2000年近く残っている理由について、新たな知見が報告されました。
自己修復機構や長寿命化の仕組みが解明されれば、100年を超える耐久性を持つインフラ材料の開発につながる可能性があります。

7. リチウム・レアアース回収技術の競争が加速
細菌を利用したリチウム回収、岩石からの低コスト抽出、廃棄物からの重要元素回収など、資源確保の新技術が相次いでいます。




8. インフラDXは統合フェーズへ
デジタルツイン、3次元モデル、自動測量、遠隔監視など、個々のDX技術はすでに実用化が進んでいます。
最近の特徴は、それらを一体的に運用する方向へ進み始めたことです。




9. 自然環境評価の見直しが始まる
河川健全性評価の限界、鉄道建設による外来植物の定着、海岸崖崩落の予測など、環境評価そのものを見直す研究が目立ちました。


10. 建設材料もバイオ化・循環型へ
バイオマス保安灯、生分解性プラスチック製品、酵母由来建材など、建設材料にもバイオ技術が広がっています。




おわりに
今回取り上げた研究を俯瞰すると、建設・インフラ分野は大きく5つの方向へ進んでいることが分かります。
- 地下空間利用の高度化(地熱・CCUS・資源開発)
- AIによるインフラの知能化(LLM・デジタルツイン・遠隔管理)
- 気候変動への適応とレジリエンス強化
- 脱炭素を実現する新材料・CO₂固定技術
- 資源循環とバイオ技術の活用
これらは個別の技術ではなく、互いに融合しながら次世代の社会インフラを形づくっていくテーマです。
建設業界は「造る産業」から、「データを活用し、環境価値を創出し、社会全体を支える産業」へと大きく変わろうとしています。今後もこうした研究動向を継続的に追いながら、その変化を分かりやすくお伝えしていきたいと思います。