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Tii建設技術:建設・インフラ技術は次の時代へ ― この1か月で注目すべき研究テーマ10選

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2026-07-22 Tii技術情報研究所

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はじめに

建設・インフラ分野では、AI、脱炭素、地下資源開発、気候変動への適応など、社会全体を変える可能性を秘めた研究が次々と発表されています。今回、Tiiで紹介された最新の研究記事を俯瞰すると、単なる新工法や新製品の開発にとどまらず、「建設技術そのものの方向性」が大きく変わり始めていることが見えてきます。

今回は、その中でも今後5~10年の技術開発に大きな影響を与えそうなテーマを10件紹介します。

重要テーマ10選と関連記事

1. 地下資源開発を変える次世代破砕技術

地熱発電やCCUS(CO₂回収・貯留)、天然ガス開発などでは、地下の岩盤に効率よく流路を形成する技術が不可欠です。

今回紹介された研究では、従来の大規模な水圧破砕とは異なり、より少ないエネルギーで岩盤を破砕する新しい手法や、CO₂と反応性流体を利用して高温・高圧環境でも閉じにくいき裂を形成する技術が報告されました。

地下利用技術は再生可能エネルギーやエネルギー安全保障とも密接に関わるため、今後最も注目すべき研究分野の一つといえるでしょう。
CO2と反応性増粘流体を用いた岩石破砕で、高温・高圧地下環境でも閉じにくいき裂を形成-地熱発電・天然ガス開発など地下資源開発への応用に期待-
CO2と反応性増粘流体を用いた岩石破砕で、高温・高圧地下環境でも閉じにくいき裂を形成-地熱発電・天然ガス開発など地下資源開発への応用に期待-
2026-07-08 東北大学東北大学を中心とする研究グループは、CO₂水押破砕と反応性増粘流体を組み合わせることで、高温・高圧の地下環境でも閉じにくい岩石き裂を形成する新技術を開発した。従来の水圧破砕では、形成されたき裂が地圧で閉じやすく...
岩盤に低負荷で流路をひらく新しい水圧破砕法を開発 ―国産エネルギー資源をより身近にする新技術―
岩盤に低負荷で流路をひらく新しい水圧破砕法を開発 ―国産エネルギー資源をより身近にする新技術―
2026-07-16 東北大学東北大学の研究グループは、地熱発電や天然ガス開発に不可欠な水圧破砕技術を改良し、地下岩盤により低い負荷で流路を形成できる「反応性増粘流体破砕法」を開発しました。従来は、高温地下では水の粘度低下により流体が漏れや...
植物由来薬剤による地下浸透性改良技術を開発 ―CCUS事業の推進に向けたCO₂の圧入性向上と地下エネルギー開発への応用に期待―
植物由来薬剤による地下浸透性改良技術を開発 ―CCUS事業の推進に向けたCO₂の圧入性向上と地下エネルギー開発への応用に期待―
2026-07-09 東北大学石油資源開発(JAPEX)と東北大学の共同研究グループは、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)の効率向上を目的として、植物由来の生分解性キレート剤GLDAとフッ酸系成分、塩水洗浄を組み合わせた地下浸透性改...

2. 大規模言語モデル(LLM)が交通・土木分野へ

生成AIは文章作成だけの技術ではありません。

交通事故解析へのLLM活用では、事故報告書や現場情報などの膨大なデータを解析し、人間では見落としやすい要因の抽出が期待されています。


3. 土砂災害予測の新たな鍵は「土の厚さ」

土砂災害といえば降雨量が重視されてきましたが、新たな研究では「土の厚さ」が発生を左右する重要な要因であることが示されました。

もしこの知見が広く実証されれば、LiDARやドローン、地中レーダーによる土層厚のマッピングが、防災の新たな基盤技術になる可能性があります。


4. CO₂を固定するコンクリートが実用段階へ

建設業界の脱炭素化では、CO₂排出量を減らすだけでなく、建設材料自体にCO₂を固定する技術が注目されています。

さらに今回、固定されたCO₂を炭素同位体比によって正確に評価する手法も発表されました。


5. 気候変動はインフラ経済を変え始めている

気候変動の影響は災害だけではありません。

水道料金の上昇予測、防波堤改良の意思決定、水災害対策の統合的な研究など、維持管理コストや社会経済への影響を含めた研究が増えています。

これからの土木工学には、工学だけでなく経済学や政策との連携がますます重要になるでしょう。
気候変動に伴う作用条件の変化に対する既存防波堤の改良に関する 意思決定問題における応答曲面法の適用
気候変動に伴う作用条件の変化に対する既存防波堤の改良に関する 意思決定問題における応答曲面法の適用
2026-07-07 国土技術政策総合研究所国総研は、気候変動による波浪条件や水位などの作用条件の変化を考慮し、既存防波堤の性能評価と補強対策を効率的に実施するための実務的手法を提案した。気候変動の進行により、防波堤は従来より厳しい外力を受...
乾燥化する気候で都市の水道料金が大幅上昇する可能性(Drier Climate Could Nearly Double Water Bills in Some Cities)
乾燥化する気候で都市の水道料金が大幅上昇する可能性(Drier Climate Could Nearly Double Water Bills in Some Cities)
2026-07-08 スタンフォード大学米国スタンフォード大学の研究チームは、気候変動による高温・乾燥化が家庭の水道料金を押し上げる要因になっていることを明らかにした。研究では、カリフォルニア州の長期間の気象データと水道料金を分析した結果、...
水災害リスク評価から対策実装までを結ぶ「End-to-end」の一気通貫型研究と現地実践活動
水災害リスク評価から対策実装までを結ぶ「End-to-end」の一気通貫型研究と現地実践活動
2026-05-29 土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)本報告書は、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)の2024年度(令和6年度)における活動実績を総括したものである。ICHARMは、水災害...

6. 古代コンクリートから未来の建設材料を学ぶ

ローマ時代のコンクリートが2000年近く残っている理由について、新たな知見が報告されました。

自己修復機構や長寿命化の仕組みが解明されれば、100年を超える耐久性を持つインフラ材料の開発につながる可能性があります。


7. リチウム・レアアース回収技術の競争が加速

細菌を利用したリチウム回収、岩石からの低コスト抽出、廃棄物からの重要元素回収など、資源確保の新技術が相次いでいます。

エネルギー転換が進む中、資源を「採掘する」だけでなく、「回収・再利用する」技術が国際競争力を左右する時代になっています。
細菌をマイクロ電源とした高効率リチウム回収を実現 — 「電気化学方式に匹敵する効率と速度」と「細菌と材料の自己組織化」で大スケール化を可能に —
細菌をマイクロ電源とした高効率リチウム回収を実現 — 「電気化学方式に匹敵する効率と速度」と「細菌と材料の自己組織化」で大スケール化を可能に —
20026-06-29 物質・材料研究機構,東北大学,東京大学物質・材料研究機構(NIMS)、東北大学、東京大学の共同研究チームは、細菌をマイクロ電源として利用し、外部電源を使わずにリチウムイオンを高効率で回収する新しいバイオ電気化学的手法...
岩石からリチウムを低コストで抽出する新技術を開発 (MIT Researchers Develop Low-Cost Technique to Extract Lithium From Rocks)
岩石からリチウムを低コストで抽出する新技術を開発 (MIT Researchers Develop Low-Cost Technique to Extract Lithium From Rocks)
20206-05-28 マサチューセッツ工科大学(MIT)米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、リチウムを含む鉱石から低コストかつ効率的にリチウムを回収する新手法を開発した。現在、電気自動車や蓄電池の需要拡大に伴いリチウム需...
廃棄物から重要元素を回収する技術を開発(Rising From the Ashes: A Hidden Supply of Critical Elements)
廃棄物から重要元素を回収する技術を開発(Rising From the Ashes: A Hidden Supply of Critical Elements)
2026-06-03 ジョージア工科大学米国ジョージア工科大学(Georgia Tech)の研究チームは、石炭火力発電所などから排出される石炭灰(Coal Ash)が、レアアース元素や重要鉱物資源の有望な供給源となり得ることを示した。レアア...
北米のレアアース供給能力を評価(Can North America Mine Enough Rare Earth Elements?)
北米のレアアース供給能力を評価(Can North America Mine Enough Rare Earth Elements?)
2026-06-15 ミシガン大学北米はレアアース(希土類元素)の需要を自給できるだけの資源を保有しているものの、採掘から精製・加工までを含む完全なサプライチェーンの構築には依然として大きな課題があることを、ミシガン大学の研究者らが指摘した...

8. インフラDXは統合フェーズへ

デジタルツイン、3次元モデル、自動測量、遠隔監視など、個々のDX技術はすでに実用化が進んでいます。

最近の特徴は、それらを一体的に運用する方向へ進み始めたことです。

AIが3Dモデルを解析し、現場状況をリアルタイムで把握・判断する仕組みが現実になりつつあります。
デジタルツイン施工管理システム「DXツインビュー」(KK-260017-A)
デジタルツイン施工管理システム「DXツインビュー」(KK-260017-A)
クレーン・吊荷・移動体等の施工情報をリアルタイムに3Dモデル等へ反映するデジタルツインシステム開発会社:高田機工株式会社、千代田測器株式会社、株式会社シーサイト区  分:システムNETIS登録技術本技術は、橋梁架設工事等において、クレーン・...
維持管理に着目した既存港湾施設の3次元モデルの要件設定及び簡易作成手法
維持管理に着目した既存港湾施設の3次元モデルの要件設定及び簡易作成手法
2026-07-07 国土技術政策総合研究所本研究は、高潮や波浪による浸水被害が増加するコンテナターミナルを対象に、施設全体の浸水脆弱性と対策効果を定量的に評価する実務的手法を提案した。気候変動の影響により浸水リスクの増大が懸念される一方、...
自動測量遠隔管理システム「ソナーリモート360」(QSK-260001-A)
自動測量遠隔管理システム「ソナーリモート360」(QSK-260001-A)
〜浚渫船・起重機船への360°旋回ソナー搭載による水中施工のリアルタイム可視化〜開発会社:株式会社白海区  分:システムNETIS登録技術360°旋回架台にソナーを搭載し浚渫船または起重機船に設置する。浚渫船ではナローマルチビームにより海底...
鋼製支保工遠隔建込み技術「クイックテレクター」(KK-260019-A)
鋼製支保工遠隔建込み技術「クイックテレクター」(KK-260019-A)
⼭岳トンネルの鋼製⽀保⼯を遠隔操作のみで建て込みする技術開発会社:株式会社大林組、マルマテクニカ株式会社、株式会社進富、構法開発株式会社区  分:工法NETIS登録技術本技術は、山岳トンネルの鋼製支保工を4本の専用エレクター等により遠隔操作...

9. 自然環境評価の見直しが始まる

河川健全性評価の限界、鉄道建設による外来植物の定着、海岸崖崩落の予測など、環境評価そのものを見直す研究が目立ちました。

これまで当たり前と考えられてきた評価方法を再検討し、より実態に即した管理へ移行する流れが始まっています。
河川健全性評価法の限界を明らかに(Widely-Used Method for Assessing Stream Health Doesn’t Work Very Well)
河川健全性評価法の限界を明らかに(Widely-Used Method for Assessing Stream Health Doesn’t Work Very Well)
2026-07-13 ノースカロライナ州立大学(NC State)米国ノースカロライナ州立大学(NC State University)の研究チームは、米国で広く利用されている河川の健全性評価手法には重大な問題があり、実際の河川環境を正確に...
鉄道建設が外来植物の定着に有利な条件を生み出す可能性(Railway Construction May Create Favorable Conditions for Invasive Plants)
鉄道建設が外来植物の定着に有利な条件を生み出す可能性(Railway Construction May Create Favorable Conditions for Invasive Plants)
2026-07-13 中国科学院(CAS)中国科学院(CAS)西双版納熱帯植物園(XTBG)の研究チームは、大規模な鉄道建設が土壌環境や地下の菌類群集を変化させ、外来植物の侵入を促進することを明らかにした。中国・ラオス鉄道沿線の14駅と周辺...
海岸崖崩落を予測する早期警戒システムの可能性を報告(New Report Outlines Potential to Predict Coastal Cliff Collapses)
海岸崖崩落を予測する早期警戒システムの可能性を報告(New Report Outlines Potential to Predict Coastal Cliff Collapses)
2026-07-09 カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)スクリップス海洋研究所の研究チームは、海岸崖の崩落を事前に予測できる可能性を示す報告を発表した。研究では、サンディ...

10. 建設材料もバイオ化・循環型へ

バイオマス保安灯、生分解性プラスチック製品、酵母由来建材など、建設材料にもバイオ技術が広がっています。

これからは「強くて長持ちする」だけではなく、「環境負荷が低く、資源循環に貢献する」ことが材料開発の重要な評価軸となるでしょう。
バイオマス材料を使用した保安灯(TH-260010-A)
バイオマス材料を使用した保安灯(TH-260010-A)
本体ボディ部にバイオマスプラスチックを配合した保安灯開発会社:株式会社キャットアイ区  分:製品NETIS登録技術本技術は、本体ボディ部にバイオマスプラスチックを配合した保安灯で、従来は、石油資源由来プラスチックを使用した保安灯で対応してい...
生分解性プラスチックを用いた薬液注入管「バイオパイプ・シリーズ」(QS-260005-A)
生分解性プラスチックを用いた薬液注入管「バイオパイプ・シリーズ」(QS-260005-A)
薬液注入管に生分解性プラスチック製注入管を用いることにより、地盤改良後の残置管による環境負荷を低減する技術。開発会社:強化土エンジニヤリング株式会社区  分:材料NETIS登録技術本技術は薬液注入工に関する技術である。従来は、硬質ポリ塩化ビ...
酵母由来の完全バイオベース建築材料を開発 (‘Baked’, printed, ready – premiere of architecture made from yeast)
酵母由来の完全バイオベース建築材料を開発 (‘Baked’, printed, ready – premiere of architecture made from yeast)
2026-06-03 チャルマース工科大学スウェーデンのChalmers University of Technologyの研究チームは、パン酵母を主成分とする完全バイオベースの建築材料を開発し、建築分野への応用を実証した。この材料は、酵母...
土壌藻類資材を配合した自然侵入促進型植生マット工「BSCソウリョクマット」(HK-260006-A)
土壌藻類資材を配合した自然侵入促進型植生マット工「BSCソウリョクマット」(HK-260006-A)
土壌藻類資材を活用しBSC(バイオロジカル・ソイル・クラスト)を形成する生物多様性保全型の植生マット工開発会社:日新産業株式会社区  分:工法NETIS登録技術本技術は、土壌藻類資材を配合しバイオロジカル・ソイル・クラストの早期形成を目的と...

おわりに

今回取り上げた研究を俯瞰すると、建設・インフラ分野は大きく5つの方向へ進んでいることが分かります。

  • 地下空間利用の高度化(地熱・CCUS・資源開発)
  • AIによるインフラの知能化(LLM・デジタルツイン・遠隔管理)
  • 気候変動への適応とレジリエンス強化
  • 脱炭素を実現する新材料・CO₂固定技術
  • 資源循環とバイオ技術の活用

これらは個別の技術ではなく、互いに融合しながら次世代の社会インフラを形づくっていくテーマです。

建設業界は「造る産業」から、「データを活用し、環境価値を創出し、社会全体を支える産業」へと大きく変わろうとしています。今後もこうした研究動向を継続的に追いながら、その変化を分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

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