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環境DNAが河川の生物調査でも有効であることが示されました

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~河川水辺の国勢調査テーマ調査R1結果報告~

2020-07-10 国立研究開発法人土木研究所

国土交通省河川環境課及び土木研究所では、河川水に含まれる生物の組織片からDNAを抽出し、生物情報を得る環境DNA技術を、河川・ダムで行っている生物調査への活用を目指し、パイロット的な調査を実施しています。調査開始年度である令和元年度の取り組みで、河川の生物調査でも有効であることが示されました。

☆背景

河川における生物情報は、多自然川づくりをはじめとするさまざまな事業を実施していく上で重要な情報です。国土交通省河川環境課及び土木研究所では、生物を直接採補し、種リストを作成してきた従来の河川環境調査に併せ、環境DNAを使った生物調査を活用することで、多自然川づくりの一層の推進を図ることを目指し、環境DNA技術の適用性について令和元年度より試行調査を開始しました。

☆方法と結果

環境DNAに関わる分析技術の開発に伴い、河川における環境DNAの研究事例は急速に広がっています。河川管理の現場においても従来の手法による魚類調査に併せて環境DNAの分析を実施するケースも出てきました。そこで、河川水辺の国勢調査(以下「水国調査」)における魚類調査の際に環境DNA調査を行った事例を全国から集め、従来の手法との整合性や留意点について検討しました。全国から平成28~31(途中)年度の期間の水国調査(魚類)の総件数の約3割にあたる、21水系43河川と20ダムの情報を元に、分析を実施しました。
水国調査における直接採捕の結果と同地区の河川水から環境DNA分析により得られた魚種リストを比較すると、調査対象とした76地区の88.2%にあたる67地区で、双方のリストの間に強い関係があることが確認されました(図-1)。高い相関が得られなかった地区には、「魚類そのものが少ない地区」、「従来調査と環境DNAのサンプリング時期にずれがある」、「感潮の影響がある地区」といった傾向が見られました。
全76地区における魚類の総検出数・確認種で比較すると(図-2)、海洋性・汽水性の魚類の検出率が回遊性や淡水性の魚類よりも低くなりました。これは環境DNA分析用のサンプルが、採水時の潮汐の向きに影響を受けたためと推察され、感潮域においては潮汐の影響を加味した調査計画が必要であることが示されました。淡水域においては、本川との連続性が低い水域やワンドに生息する魚類や生息個体数が極めて少ない種の検出率が低くなり、現地の水環境に合わせたサンプリング地点やサンプル数の設定が重要であることが示されました。一方、底生魚においても良好な成果が得られており、採捕や目視確認が難しい条件においては、環境DNAの活用により調査効率や精度の向上につながることが期待されます。
このように、まだ検討すべき課題はあるものの、河川の生物調査でも、環境DNAが有効であることが示されました。精度をさらに向上させるために、水国調査の枠組みの中で、引き続き試行調査が予定されています。


国土交通省 水管理保全局 河川環境課 ・ 国立研究開発法人 土木研究所 水環境研究グループ
問い合わせ先 土木研究所水環境研究グループ(河川生態) 上席研究員 中村圭吾・総括主任研究員 村岡敬子

参考:北川哲郎・村岡敬子・山田拓也・中村圭吾(2020)河川水辺の国勢調査(魚類)における環境DNAメタバーコーディング解析の試行事例分析.河川技術論文集,26: 319–324.

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