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多様で豊かな生物が生息する沿岸域づくり

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国総研レポート2020(研究期間 : 平成 26 年度~)
国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部
海洋環境・危機管理研究室
研究官(博士(地球環境科学)) 秋山 吉寛
主任研究官(博士(工学)) 内藤 了二
研究員 吉村 香菜美
室長(博士(工学)) 岡田 知也

(キーワード) 景観,ネットワーク,内湾生物,多様性,東京湾

1.はじめに
港湾域の在来生物群集の衰退に対して生息場を再生する際、単に生息場面積の増加だけでなく、生息場間のネットワークを考慮した生息場の空間配置が求められる。生息場間のネットワークは、繁殖、成長または撹乱回避のために生息場間の移動を必要とする多様な生物にとって重要なシステムである。
本研究の目的は、東京湾の干潟に生息する生物と干潟周辺のシースケープ(多様なタイプの生息場によって構成される沿岸域の空間)の関係を調べることである。

2.結果
大型底生動物の多様度指数は、干潟の周囲10 km以内の空間範囲におけるシースケープの多様度指数と有意に正相関したが、20 km以上では有意な相関は認められなかった(図)。
一方、アベハゼおよびエドハゼの出現率は、干潟の周囲10 km以内の空間範囲内の生息場面積と有意に正相関したが、20 km以上では有意な相関関係は認められなかった 。
これらの結果は、大型底生動物や魚類等の多様な生物が半径10 km以内の範囲にある生息場間を移動して、ネットワークを形成していることを示唆する。よって、在来生物群集を再生するために、複数の生息場配置候補地の中から生息場を再生する場所を選択する際には、候補地の周囲10 kmのシースケープの多様性や、ターゲットとする生物種の生息場の広さに基づき、個々の候補地の評価と比較を行うことによって、より在来生物群集の再生に貢献する場を選択できる可能性がある。

3.おわりに
大型底生動物や魚類の移動によって形成される生息場間のネットワークの空間的広がりは、10 km以内と考えられた。この結果の妥当性を確認するために、実海域における生息場間のネットワークを明らかにすることは今後の課題である。

図 干潟からの空間距離範囲に対する大型底生動物およびシースケープの多様度指数の相関係数の変化。
*は有意な相関関係を示す

☞詳細情報はこちら
1) 令和元年度環境研究機関研究交流セミナーポスター要旨集 P-18
http://kankyorenrakukai.org/seminar_01/pdf/yousisyu.pdf

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