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柿田川生態系研究会の活動報告

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The Activity Report of Kakita River Ecosystem Workshop

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

自然環境グループ 研 究 員 澤田みつ子
自然環境グループ グループ長 森 吉 尚
主席研究員 宮本 健也

1.はじめに
柿田川は、富士山周辺の雪どけ水等を起源とする湧水を水源としている、静岡県清水町の中心部を北から南に流れる延長 1.2km の狩野川水系の支川である。2011 年には国の天然記念物に指定され1)、「日本で最も短い一級河川」として知られている。また、ミシマバイカモやアオハダトンボ等の動植物の生育地・生息地となっている。他の河川には見られない柿田川の特徴として、極めて安定した水量(湧水量 14t/秒)及び水質(BOD 0.1-1.5 ㎎/L)があげられる。さらに、水温の変化が少なく(年間を通じて 15℃前後)、土砂供給も小さい。河川の環境は一般的に変動のある生態系であるのに対して、柿田川は安定的な生態系を持っているため、環境の解析に最適な河川といえる 2)。
柿田川生態系研究会(以下「研究会」という)は、柿田川における生物の生活史、生態系の構造と機能等、
河川生態系の基本的な特徴を明らかにし、通常の河川における湧水の役割を理解する一助となることを目的に、多分野の学識者による共同研究プロジェクトとして活動・運営されている3)~4)。本研究ではこの活動の
支援を行った。

2.令和元年度の活動成果
令和元年度は表-1に示す活動を行った。

表-1 令和元年度の柿田川生態系研究会の活動

2-1 湧水環境の現地視察/第 35 回柿田川生態系研究会
5 月 11 日午後~12 日午前にかけて狩野川、柿田川にて、研究会会員による河川環境の現地視察を行った。
柿田川の湧水環境と、柿田川が合流する狩野川に与える湧水の影響について知見を深めた。現地視察後の 5月 12 日午後に開催した第 35 回研究会では、招聘講師の名古屋大学大学院工学研究科 戸田祐嗣教授から「数値河川生態系の構築~工学的視点での河川生態系把握に向けて~」をご講演いただいた。

写真-1 狩野川・柿田川の現地視察
(柿田川での現地調査)

2-2 柿田川サマーサイエンススクール
7 月 31日に清水町立清水小学校理科室及び教材園にて、地元の小学 5~6 年生(14 名)とその保護者(13
名)を対象に沼津河川国道事務所と共同主催で「親子でサマーサイエンススクール-柿田川の自然環境を考えよう-」を開催した。
本スクールは、研究会会員の指導による屋内外での水生昆虫等の採集、実験、観察、質疑応答を通じて身近な柿田川の環境や特徴を体感し、科学への興味や身近な自然環境への関心等を地域の児童とその保護者に一層深めてもらうことを目的としている。

写真-2 柿田川で水生昆虫を採取する児童

本スクール後、参加児童に対してアンケート調査を行ったところ、「また川で遊んでみたいと思いますか?」
および「今日の授業は楽しかったですか?」という質問に対して、いずれも「そう思う」という回答が 100%
となった。また、保護者からも「子供と一緒に川の中に入り、良い経験となりました」「楽しく学べました」といった概ね好意的な感想が寄せられた。

2-3 第 16 回 柿田川シンポジウム/第 36 回
柿田川生態系研究会
11 月 30 日に、静岡県三島市の三島商工会議所会館TMO ホールにて、沼津河川国道事務所との共催で第 16
回柿田川シンポジウム「湧水がはぐくむ柿田川の生態系」を開催した。当日は、地元の環境保護団体、柿田川の近隣住民、地元高校の理科系部活動の生徒・教員、行政関係者や研究者など計約 80 名が参加した。
シンポジウムのプログラムは表-2に示すとおりで、第一部では研究者からの話題提供として柿田川生態系研究会会員から柿田川の湧水環境の生態系についての講演を、第二部では主に地元の各機関及び高校から報告をいただいた。
第一部では、富士山の溶岩台地を起源とする湧き水から海に至るまでの水環境の連なり、および日本各地の河川と柿田川の環境の類似と相違について紹介いただいた。第二部では、最新のドローン調査や、水質浄化手法、アオハダトンボの危機的な現状など、地域での活動・取組みについて紹介いただいた。
なお、シンポジウムの参加者アンケートでは、シンポジウムを知った媒体に関する質問に対して、「ホームページ」が約 50%と最も多く、インターネットによる広報が重要であることが示された。
翌 12 月 1 日には、同会場にて第 36 回研究会を開催した。基調講演では、新会員であるふじのくに地球環境史ミュージアム 渋川浩一教授から「これまでの研究の紹介」、招聘講師である(公財)柿田川みどりのトラスト会員で放送大学大学院修士課程修了生である遠藤浩二氏から「湧水環境における沈水形オオカワヂシャ繁殖メカニズム」をご講演いただいた。
近年および令和元年度の活動を通じて、本研究会の研究上の関心は、柿田川からその水源の富士山麓のみならず、狩野川水系および沿岸海域の生態系の連なりまで着目点の視野が広がってきている。なお、第 35回および第 36 回研究会における講演・発表の記録の一部は研究会ホームページ5)にて公開している(令和 2年 6 月現在)ので、ぜひご一読いただきたい。

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