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既存住宅の住みながら改修 による居住性向上の可能性

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国総研レポート2020(研究期間:平成30年度~)
国総研 住宅研究部 住宅計画研究室
室長 藤本 秀一
主任研究官(博士(工学) 渡邊 史郎
住宅性能研究官(博士(工学)) 長谷川 洋
住宅ストック高度化研究室 室長 片山 耕治

(キーワード) 既存住宅,居住性,改修,住宅性能

1.はじめに
築後年数の経過した既存住宅は、遮音性、省エネルギー性、バリアフリー性等の水準は低く、また、間取りや設備の陳腐化等が進んでいる。ストックの有効活用の観点からは、多様な世代が快適に居住できるための居住性向上の改修が必要である。既存住宅ストックの居住性向上は、若年世代等の流入促進等を通じて高経年化した郊外住宅市街地の再生にも効果的である。一方、区分所有マンションでは合意形成の観点から、賃貸住宅ではまとまった仮移転先の確保の困難等から、住みながら改修(※1)とすることも重要なポイントとなっている。

2.既存住宅の仕様・性能と改修の要求水準
 共同住宅を対象に、建設年代による仕様・性能の変遷(トレンド)を整理し、改修のベースとなる既存住宅の仕様・性能を把握した。また、郊外住宅地への居住意向を有する世帯の居住ニーズをwebアンケート調査から把握し、既存住宅で改善が求められる主要な仕様・性能項目と満足すべき水準レベルを設定した。

3.住みながら改修の現状と可能性
耐震性等の安全性のほか、若年子育て世帯、高齢世帯にニーズが高い居住性項目であるバリアフリー性、温熱環境等の住みながら改修の実態と、既存住宅の仕様・性能レベル、改善による要求水準の関係から課題と可能性を整理した。
階段室型中層住棟のバルコニー側へのエレベータ設置、階段室単位での仮移転による移転住戸の最少化、狭小住戸の2戸1化による住戸面積拡大、外断熱化と二重サッシ化による断熱性向上の工事実施条件、施工計画等の注意ポイントを整理、建物躯体の斫り、穿孔等に伴う騒音・振動等の実態と居住者への影響を把握し、住みながら改修の可能性について検討を行った。

※1 本稿では、工事期間中にすべての居住者が同時に移転する状態を伴わずに実施できる改修で、住戸内に入ら
ないで実施できる改修、工事の対象住戸以外の居住者が住んだままで実施できる改修、対象住宅の居住者が仮住まい期間を最短化できる改修等を含むものとしている。

写真-1 2棟間へのエレベーター設置(公的賃貸住宅)

写真-2 外断熱+二重サッシ化による断熱性向上(民間マンション)

写真-3 2戸1化による住戸拡大(公的賃貸住宅)

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