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流域マネジメントの高度化に資する評価指標及び全国取組状況の研究

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A study on evaluation indicators and nationwide efforts for advancing river basin management

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

水循環・水環境グループ 研 究 員 和 田 彰
自然環境グループ グループ長 森 吉 尚
主席研究員 水草 浩一
自然環境グループ 研 究 員 澤田みつ子
自然環境グループ 研 究 員 川村 設雄

1.はじめに
水循環基本計画(2015 年 7 月閣議決定)に基づき、流域マネジメントの総合的かつ計画的な推進を図るための流域水循環計画(以下「計画」という)の策定が全国で進められており、これまでに 44 計画が認定・公表されている。2020 年 6 月には、新たな「水循環基本計画」へと見直され、各府省庁が一体となり、「流域マネジメントによる水循環イノベーション~流域マネジメントの更なる展開と質の向上~」などの 3 本柱を据えて重点的に取組むこととなっている。
流域マネジメントの高度化及び更なる推進に向けては、流域水循環の健全性や関連施策の効果、全国の先進的な取組等の各流域における現状を流域マネジメントの担い手に「見える化」する手法の検討が特に課題となっている。
本研究では、全国における計画策定を促し、流域マネジメントの高度化に向けた施策推進を目的に、各地で実施されてきた流域マネジメントの施策とその効果について、科学的な分析と地域特性を考慮した評価指標の確立に向けた検討を行った。また、流域連携の更なる推進に向けた流域マネジメントの取組状況を調査・分析した。

図-1 指標および評価手法の策定方法のフロー

2. 水循環の健全度の評価指標・評価手法提案
水循環の現状や各種施策の効果を評価する指標や手法は標準化されておらず、各地域において試行錯誤的に取組まれている現状にある。そこで、水循環の健全度や流域マネジメントによる効果を「見える化」するため、2018 年度末時点で公表されている 35 計画等における水循環に関する評価指標(定量・定性)及び評価手法について分析を行った。なお、流域毎の課題、地域特性に加え、総合的計画、地下水保全計画、閉鎖性水域保全計画など計画の主たる目的毎に評価の視点が異なることから、これらを適切に表現できるよう、各計画に記載の指標類を評価軸(カテゴリー)別に整理した。(図-1)
各計画の指標には定性表現を含むため、定量・定性が混在する評価指標から総合評価を算定する評価手法として、評価指標を変換表に基づき点数化して表現する方法(評価値固定方式)と、指標を被験者の感覚や認識に基づき点数化する方法(被験者評価方式)の二つの方向性がある。このうち、本研究で求められる目的により資する後者を採用し、主な評価手法の中から比較的簡便かつ汎用性の高い手法として AHP(階層分析法)を提案した。本手法は、水循環に関する流域の被験者へのアンケート調査を AHP の概念に基づき統計処理により点数化できる特徴がある。算定された点数は、レーダーチャートを用いて表現することで、評価軸(カテゴリー)毎に流域における優劣の見える化が可能となる。(図-2)
今後は、計画を有する実際の地域において、本手法を適用し有効性及び妥当性を検証しながら見える化に向けた課題や問題点を抽出し、評価指標及び評価手法の確立に取り組んでいく必要がある。

図-2 水循環の健全性の評価結果のイメージ

3. 水循環基本計画に基づく流域マネジメントの取組状況に関する調査
流域マネジメントの取組として参考となる全国 22事例について、水循環に関わる計画類に記載されてい
る各種施策の取組状況をヒアリング調査した。 流域連携の更なる推進に向けて重要となる事業者、団体等・住民の流域マネジメントへの参画状況、及び多様な主体の参画を実現する上で必要となる普及啓発、広報、教育の先進的な取組を類型化し、主な特徴を整理・分析した。(表-1~表-3)

表-1 事業者との連携の分類と主な特徴類型 主な取組内容 自治体が担える役割

表-2 団体等・住民との連携の分類と主な特徴

表-3 普及啓発・広報・教育の分類と主な特徴類型 主な取組内容 期待する効果

新たな水循環基本計画に基づく流域連携及び水循環の普及啓発・広報・教育の更なる推進に向けては、各
流域におけるこれまでの多様な取組を類型ごとに分類し、他地域の取組も参考に更に強化すべき取組を見出
し実践することで、流域マネジメントの拡がりと質の向上に繋がると考えられる。

4.おわりに
本稿は、内閣官房水循環政策本部事務局発注の「令和元年度水循環基本計画見直し及び流域マネジメント
推進に関する調査等業務」において検討した内容の一部をとりまとめたものである。本調査研究において流
域マネジメントの取組状況に関わる情報提供を頂いた全国の自治体等の関係者に厚く御礼申し上げる。

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0904河川砂防及び海岸海洋
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