調査に要する費用・日数を平均 50%以上削減
2021-04-21 国土技術政策総合研究所
近年の豪雨の増加により雨天時浸入水が増加し様々な問題が顕在化していますが、このための調査には多大な費用と日数を要していました。
「AI による音響データを用いた雨天時浸入水検知技術」により、調査日数・費用を 50%以上削減できることが確認され、本技術の普及を図るため、国総研では、技術導入ガイドライン(案)を策定し公開しました。
この新たな技術の導入により、下水道施設における雨天時浸入水調査の推進が期待できます。
1.背景・経緯
雨水と汚水を分けて排水する分流式下水道では、従来より雨天時に汚水管内の下水流量が増加する現象が確認され、近年の豪雨の増加により、さらにこの現象が増加するものと見込まれています。この現象は雨天時浸入水と言われ、マンホールからの汚水の溢水や宅内への汚水の逆流といった公衆衛生上の問題や、下水処理場における処理能力の低下といった様々な問題を発生させる原因となりますが、現状では十分な対策が取られていません。対策が進まない要因の一つとして、雨天時浸入水の発生箇所を絞り込むための調査に、多大な費用と日数を要する場合が多いことが挙げられます。
そこで国土交通省では、下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト※)として「AI による音響データを用いた雨天時浸入水検知技術の実用化に関する実証研究」を令和元年度に実施し、その成果をガイドラインにまとめました。
※ B-DASH プロジェクト:Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage High Technology Project(下水道における新技術について、国土技術政策総合研究所の委託研究として、民間企業、地方公共団体、大学等が連携して行う実規模レベルの実証研究)
2.本技術の特徴・効果
本技術は、安価なボイスレコーダを用いて下水道管内の流水音データを収集し、晴天時と雨天時の流水音の違いを AI で解析することにより、従来よりも安価かつ短期間で雨天時浸入水の有無を調査可能な技術です。また、本技術の効果を検証するため、雨天時浸入水の発生が疑われる5つの都市において実証を行った結果、従来と比べて調査に要する費用・日数が平均 50%以上削減できました(別紙1参照)。従来よりも安価かつ短期間で調査可能な本技術を導入することにより、今後増大することが予想される豪雨への対応の一つとして雨天時浸入水調査の推進とともに、対策の推進も期待できます。
3.本ガイドライン(案)の公開
「AI による音響データを用いた雨天時浸入水検知技術導入ガイドライン(案)」
本ガイドライン(案)は、下水道事業者が本技術の導入を検討する際に参考にできるよう、技術の概要・評価、導入検討、設計・維持管理等に関する技術的事項についてとりまとめています。本ガイドライン(案)は、国総研ホームページで公開しています。
ダウンロード先URL : http://www.nilim.go.jp/lab/ebg/b-dash.html
(問い合わせ先) 国土技術政策総合研究所 下水道研究部 下水道研究室 岡安・松浦