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洗掘被害を受けやすい既設橋梁 の抽出方法の検討と台風第19号の 被害橋梁への適用性に関する調査

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国総研レポート2020(研究期間:平成29年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部 構造・基礎研究室
主任研究官 藤田 智弘
室長 七澤 利明
研究官 佐々木 惇郎

(キーワード) 洗掘,既設橋梁,線形判別分析,台風19号

1.橋梁の洗掘被害と既設橋梁のリスク評価
近年、局地的な集中豪雨等により、河川等を横断する橋梁の支持地盤が侵食・洗掘される等、機能回復に長時間を要する事例が確認されている。今年度も10月12日から13日未明にかけて、日本列島を通過した台風第19号により、広い範囲で記録的な大雨となり、広い範囲で道路の性能に影響が及ぶ被害が発生した。国道20号法雲寺橋や国道49号大善寺橋では、洗掘が原因と考えられる下部構造の沈下等により通行止めが行われた(写真-1)。災害に強い強靱な道路ネットワークを実現するために、洗掘による被害が生じる可能性が高い既設橋梁の条件を明らかにする手法(リスク評価手法)を確立し、優先度を付けて対策を実施していくことが求められる。
そこで、被災した既設橋梁の統計分析により洗掘被害を受けやすい河川特性や基礎構造等の条件(以下「洗掘要因」という。)を抽出することを試みたので、その検討の概要について報告する。また、検討した手法の台風第19号で被災した橋梁への適用性についても調査したのであわせて示す。

写真-1 法雲寺橋の被害

2.既設橋梁基礎の洗掘要因の抽出
平成23年から平成28年までの豪雨と平成30年7月豪雨で洗掘により被災した橋梁(183橋)と、洗掘により被災した橋梁と同水系を渡河するが洗掘が確認されなかった橋梁(207橋)についてのデータベース(以下「洗掘DB」という。)を構築した。
本検討では、洗掘要因の抽出を統計分析手法のうち線形判別分析にて行った。線形判別分析は、複数の情報(説明変数i)で表現された複数の部分集団から構成される母集団に対して、どの集団に属するかを最もよく判別することができる写像が得られる多変数の一次関数(説明関数)を決定するものである。簡単のため、二変数の場合の線形判別分析の概念図を図-1に示す。線形判別分析の結果得られる説明変数、判別係数(i)や説明関数は、洗掘被害を受けやすい既設橋梁の判別のための着目点や判断基準を定めるための参考にすることができる。

図-1 線形判別分析の概念図

表-1 線形判別分析の結果

統計分析を行うにあたり、洗掘要因となるものが説明変数から漏れないよう、既往の研究成果より考慮すべき洗掘要因を調査しつつ、実務レベルで得られる情報も考慮して、建設年次(西暦年)、橋長(m)、径間数(径間)、最大支間長(m)、流域面積(m2)、河床勾配、河道形状(湾曲:0、直線:1)を説明変数とすることとした。
前述の洗掘DBと説明変数とを用いて、洗掘あり・洗掘なしを判別する線形判別分析を行った。最も適合率が良い結果を表-1に示す。表中の数値は、各説明変数の標準化判別係数(標準化した説明関数の判別係数)を示す。絶対値が大きいほど寄与度が高いことを示す。数値が示されていない説明変数は、要因として考慮しない方が適合率が高くなることを意味している。適合率は74%で、寄与度が高いものから順に、橋長が短いほど、径間数が多いほど、河床勾配が急なほど、建設年次が古いほど洗掘しやすいという結果となった。特に、橋長と径間数の寄与度が他に比べて高い結果となった。それらの寄与度が高い理由は、橋長が小さく径間数が多い橋梁は、河積阻害率が高くなることが考えられ、河積阻害率が支配的な要因となることを示唆する結果となった。

3.検討手法の台風第19号の被災橋梁への適用性
台風第19号では、前述の通り法雲寺橋や大善寺橋で洗掘が原因と考えられる被害が生じた。法雲寺橋は、昭和34年に架設された笹子川を渡河する橋長64.27mの橋梁で、直接基礎による7基の壁式橋脚と2基の重力式橋台により支持された、8径間の単純PCプレテン床版橋である。大善寺橋は、昭和41年に架設された谷田川を渡河する橋長63.43mの橋梁で、直接基礎による3基の壁式橋脚と杭基礎による2基の逆T式橋台により支持された4径間の単純RCポステンT桁橋である。いずれの橋梁も橋脚の沈下や傾斜に伴い路面の沈下等が生じ(写真-1)、それぞれ、49日、20日の間、通行止めが行われた。

図-2 適用性の調査結果

検討手法の台風第19号の被災橋梁への適用性を調査するために、法雲寺橋と大善寺橋について、線形判別分析より得られた結果の妥当性の確認を行った。図-2は、洗掘DBの洗掘あり・洗掘なしの橋梁の説明関数の値とその頻度(%)の分布を示すグラフと、判定により洗掘あり・洗掘なしとなる領域を色分けして示した図である。領域の境界線(判定の閾値)は、本検討では洗掘ありと洗掘なしのいずれも判定の適合率が良くなる閾値となる、洗掘あり・洗掘なしの2つの分布曲線の重心値(0.146)とした。法雲寺橋と大善寺橋の値は、それぞれ1.527と0.453で、いずれも洗掘ありの判定となり、被害と整合する結果となった。いずれの橋梁も、河積阻害率の目安が解説で示された河川管理施設等構造令制定(昭和51年)前に建設された橋で、橋長に対して径間数が多いことが洗掘の主な要因となっていると推察される。

4.まとめと今後の課題
線形判別分析による洗掘要因の抽出を試みた結果、既往の研究等で洗掘要因とされている河積阻害率や流速との関連が強いと考えられる橋長、径間数や河床勾配が洗掘要因となる結果を得た。また、検討手法の台風第19号の被災橋梁への適用性を調査したところ、現地調査結果と整合する結果を得た。
今後、線形判別分析の適合率の改善と適合しない橋梁の個別分析、閾値の設定方法の影響の検討を行い、統計分析による評価手法に加えて、個別分析による知見を組み合わせて、洗掘被害を受けやすい既設橋梁の有効な抽出方法を提案する予定である。

☞詳細情報はこちら
1) 土木技術資料 No.11,pp.36-39,2019

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