2024-01-25 新エネルギー・産業技術総合開発機構,鹿島建設株式会社,株式会社不動テトラ
NEDOのグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクト(以下、本事業)の一環として、鹿島建設株式会社(鹿島)は、デンカ株式会社、株式会社竹中工務店とともに、本事業を実施するコンソーシアムであるCUCO®(クーコ)の幹事会社として、コンクリートの製造過程で排出される二酸化炭素(CO2)の排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリートの開発を進めています。
今般、鹿島と本事業の共同実施先である株式会社不動テトラは、カーボンネガティブコンクリートを市中のレディーミクストコンクリート工場(以下、生コン工場)において製造・出荷し、熱海ビーチライン(静岡県熱海市)の屋外製造ヤードで打設から脱型、炭酸化養生までの一連の作業を行い、消波ブロック「CUCO®-SUICOMテトラポッド」(以下、CUCOテトラ)を製造しました。これにより、製造段階で排出されるCO2を一般的なコンクリートで製造されるテトラポッドと比較して112%削減することに成功しました。また、鹿島が培ってきた炭酸化養生技術によりCUCOテトラ表面を低アルカリ化し、海洋生物との親和性も向上させた、より環境に優しいコンクリートを実現しています。
今後、NEDOとCUCOは、CUCOテトラの早期の社会実装を目指し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献できる取り組みを進めていきます。
図1 熱海ビーチライン沿岸に設置したCUCOテトラ
1.背景
海に囲まれ、台風や高波の被害が多い日本では、海岸沿いにテトラポッド※1を設置することで、沿岸の住居やインフラを守っています。このため、日本全国で年間約50万トンのテトラポッド(今回製造した4tの製品換算で12.5万個)が製造・設置されています。一方で、テトラポッドは製造時に大量のCO2を排出するセメントを用いたコンクリート製品であるため、より環境に優しい製品の開発が必要であると考えます。脱炭素社会の構築については、国土交通省から2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた「カーボンニュートラルポート構想※2」が打ち出されています。
このような背景の下、NEDOは2021年度からグリーンイノベーション基金※3の本事業※4で、カーボンネガティブコンクリート※5などの製造技術の開発に取り組んでいます。その一環として、鹿島はCUCO®※6のコンソーシアム幹事会社として「CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発」に取り組んでいます。
2.今回の成果
(1)CO2排出量を112%削減し、海洋生物との親和性の向上にも成功
これまでに本事業で開発した薄型のコンクリート製品※7で得た知見を発展させたCUCOテトラは、材料と製造方法の工夫により、大きな断面を持つ部材で初めてカーボンネガティブを達成しました。具体的には、製造時にあらかじめCO2を吸収・固定した材料(CCU材料)である炭酸カルシウムを大量に配合するとともに、炭酸化養生を行うことでCO2の吸収量と固定量が増大しました。これにより、一般的なコンクリートで製造したテトラポッドと比較して、製造時に排出されるCO2を112%削減できます。また、炭酸化養生により、コンクリート表面が低アルカリ化し、海洋生物との親和性も向上させた、より環境保全に適したものとなっています。
(2)製造までの全ての工程を現場で実施できることを確認
これまでは、炭酸化養生を行うコンクリートは、プレキャストコンクリート工場で製造・出荷されるものでしたが、今回、初めて市中の生コン工場で製造したコンクリートをアジテータ車で現場(熱海ビーチライン※8)に運搬し、打設・脱型、炭酸化養生までを実施しました。これにより完成までの全ての工程(図2)を現場で実施できることを確認しました。なお、主な製造の流れは以下のとおりです(図3~図5)。
図2 CUCOテトラ製造の概念図
図3 生コン工場でコンクリートを製造(左) 設置近傍の製造ヤードまで運搬(中央)
テトラポッドの型枠への打ち込み(右)
図4 脱型後、CO2を吸収させる炭酸化養生槽中でのCUCOテトラ設置状況
図5 CUCOテトラの完成・据え付け状況
(今回は耐久性試験のため、海岸への据え付けは行わず、海岸付近の陸上に設置)
3.今後の予定
NEDOはCUCO®と一体となって、引き続きCO2削減・固定・吸収技術の開発・改良に取り組み、カーボンネガティブを実現することで、脱炭素社会の実現に貢献します。また、今回の耐久性試験を経て、CUCOテトラの早期の社会実装を目指すとともに、将来、カーボンニュートラルポート構想にも貢献できる取り組みを進めていきます。
【注釈】
- ※1 テトラポッド
- 「テトラポッド」は不動テトラの登録商標です。
- ※2 カーボンニュートラルポート構想
- 「2050年カーボンニュートラル」などの政府目標の下、日本の産業や港湾の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素・アンモニアなどの受入環境の整備などを図るという構想です。
- ※3 グリーンイノベーション基金
- 日本の掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向けて、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などに対して研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援する事業です。本基金事業はグリーン成長戦略で実行計画を策定している重点分野を支援対象としています。
特設サイト:グリーンイノベーション基金事業 - ※4 本事業
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- 事業名:グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発/CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発
- 事業期間:2021年度~2030年度
- 事業概要:CO2を用いたコンクリート等製造技術開発
- ※5 カーボンネガティブコンクリート
- 製造時のCO2排出量よりもCO2削減・固定・吸収量の方が多いコンクリートです。
- ※6 CUCO®
- 鹿島、デンカ、竹中工務店の登録商標です。
CUCO® - ※7 これまでに本事業で開発した薄型のコンクリート製品
- (参考)鹿島リリース(2022年11月16日)
「NEDOグリーンイノベーション基金事業の成果としてカーボンネガティブを実現するコンクリートを用いた「CUCO-SUICOM型枠」を国土交通省発注の現場に初適用」 - ※8 熱海ビーチライン
- 1965年に供用を開始。鹿島が設計・施工を担当しました。その後、道路の維持管理は鹿島道路が担当。そして2021年、運営を鹿島グループが引き継ぐこととなりました。
(熱海ビーチラインより引用)
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:冨田、世良田
鹿島 広報室 報道グループ
不動テトラ 経営企画部 CSR推進室
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:瀧川、坂本(信)、柿澤、山脇