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コンクリートによる空気中のCO2固定を証明する方法を開発

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2023-11-24 東京大学

発表のポイント

◆ セメントを使った材料が空気中のCO2と反応して無機炭酸塩の形で固定化したことと、その固定化したCO2量を、14Cを用いて明らかにする手法を開発した。
◆ 従来までに、セメントを使った材料が空気中のCO2を抽出して固定化したことやその量を証明する手法はなかった。
◆ コンクリート関連分野でのカーボンニュートラルへの貢献を定量的に示すことが可能になる。

概要

東京大学大学院工学系研究科の丸山一平教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所の南雅代教授の研究チームは、コンクリートなどのセメントを用いた材料が空気中からCO2を固定した場合の固定量の特定と空気から固定したことの証明を、14C(注1)を用いて同時に行う手法を開発しました。カーボンニュートラルに向けて、コンクリート関連分野では、空気中のCO2を無機炭酸塩の形で固定化し、カーボンニュートラルに貢献していくことが求められていますが、天然の炭酸カルシウムと人工の炭酸カルシウムを見分ける方法や、どれだけのCO2を空気から取り込んで固定化したかを定量する手法は今まで存在していませんでした。今後、炭素税や排出権取引を想定するとCO2の固定が重要な評価対象先と見込まれることから、これらの手法によって偽物を排除し、取引が適切に行われるようになると期待されます。

key

空気中のCO2が反応した時のセメントペーストの微細構造の例

発表内容

現在、世界では年間に45億t(2015年時点)のセメントが生産され、1tのセメントを作るのに約800kgのCO2が排出されています。このうち50%がカルシウムを得るための炭酸カルシウムの分解によるもので、その他が輸送や焼成に関わる燃料によるものとなっています。現在までの人類の活動由来のCO2排出量のうち5~8%がセメント生産によるものと言われています。このような背景と、建設分野におけるCO2排出量抑制の観点から世界的規模でさまざまな技術開発が行われています。

現在、この対応策の一つとして、コンクリート中に炭酸カルシウムを析出させて長く用いる二酸化炭素回収・有効利用・貯留(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、CCUS)が、CO2排出の相殺手段として評価・検討されつつあります。コンクリート中やコンクリート用材料に炭酸塩として固定化するCO2ガスは、工場での燃焼排ガスや炭酸カルシウムの分解によるもの、あるいは空気が想定されています。この中で空気中のCO2は濃度が低くて取り出しにくいため、直接空気回収技術(Direct air capture、DAC、注2)と呼ばれるさまざまな技術開発が行われているところです。このような背景の中、CO2排出の相殺手段としてDACによる炭酸塩の固定化が経済的価値を生み出す社会では、偽物の炭酸塩固定が市場に出てくる可能性も懸念されます。そのため、健全な市場形成のためにDACを用いた材料の真贋と、どの程度の量が対象ガス(本検討では空気)から固定されたかの判定方法が求められていましたが、その手法は存在していませんでした。

コンクリートは古くから空気中のCO2と反応して炭酸カルシウムができること(炭酸化反応)が知られているため、本研究では、コンクリートの中で炭酸カルシウムと反応する主要部分であるセメントペースト(水とセメントが反応して硬化したもの)を、十分に硬化反応が進んだ後に粉砕し、空気に暴露させました。一定期間後に炭酸化反応が進んだことを粉末X線回折による鉱物組成分析で確認するとともに、サンプルをリン酸で溶解させて無機炭酸塩のみを分解してガスを捕集し、そのガスの放射性炭素(14C)濃度を名古屋大学宇宙地球環境研究所の加速器質量分析装置を用いて測定しました。炭酸カルシウムが析出する場合の化学反応において、13Cと12Cの割合(13C/12C、δ13Cとして表示されます)は空気中のものと反応後の炭酸カルシウムの中で変化(同位体分別)しますが、13C/12Cを用いて14C/12Cの同位体分別補正を行うことにより、14C測定結果から、空気中から固定したCO2量を求めることが可能です。

測定した14C濃度と、空気中のCO214C濃度と暴露後に生成した炭酸カルシウム中の炭素量から見積もった14C濃度とはよい一致が見られました(図1)。

fig1
図1:測定した14Cと空気中の14C量を用いて予測した値の比較
縦軸は、測定した放射性炭素(14C)濃度、横軸は空気中の14C濃度と炭酸カルシウムの形で固定化された炭素量から見積もった14C濃度で、測定値と計算値が整合している。このことから、サンプル内の炭酸カルシウム中の14C濃度を測定することによって、空気中のCO2がセメント系材料に炭酸カルシウムとして固定した総量を適切に評価できることがわかる。


このことから、空気に暴露する前後のセメント系材料の試料を用意し、14C濃度ならびに無機炭酸塩としてとらえられた炭素量がわかれば、その試料が空気中のCO2を用いたものかどうか判定することができます。

本成果は、今後、コンクリートサンプルの適用性や測定可能範囲の同定などを確認した上で、コンクリート業界のDACによるCO2固定化の真贋評価などに活用することで、健全な排出量取引などに貢献できるものと期待されます。

発表者・研究者等情報

東京大学大学院工学系研究科
丸山 一平 教授

名古屋大学宇宙地球環境研究所
南 雅代 教授

論文情報

雑誌名:Journal of Advanced Concrete Technology
題 名:Verification method of direct air capture by cementitious material using carbon isotopes
著者名:Zhenzhen Wang, Abudushalamu Aili, Masayo Minami, Ippei Maruyama
DOI:10.3151/jact.21.934
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jact/21/11/21_934/_article/-char/en

研究支援

本研究は新エネルギー・産業技術総合研究開発機構(NEDO)グリーンイノベーション基金事業/コンクリートにおけるCO2固定量評価の標準化に関する研究開発(課題番号:JPNP21023)の支援により実施されました。

用語解説

(注1)14C:
5,730年の半減期で放射壊変する、炭素の放射性同位体。炭素は12、13、14の質量数の異なる3種類の同位体(12C、13C、14C)が存在しますが、14Cは最も多く存在する12Cに比べると、1兆分の1程度しか存在しないため、加速器質量分析計などの特殊な装置を用いて分析します。14Cの減少を利用して考古学や古環境学の分野の年代測定に一般的に用いられるほか、石油や石炭などの化石燃料中の炭素に14Cが含まれないことを利用して、自然・人為起源のさまざまな物質の発生源探索や動態解明の自然起源トレーサーとして用いることが可能です。

(注2)直接空気回収技術(Direct Air Capture、DAC):
大気から直接、二酸化炭素(CO2)を分離・回収する技術のこと。

プレスリリース本文:PDFファイル
Journal of Advanced Concrete Technology:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jact/21/11/21_934/_article/-char/en

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