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境川修景整備計画(案)の検討

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Consideration on a proposed landscaping plan for Sakai River

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

まちづくり・防災グループ 研 究 員 二瓶 智
技 術 参 与 土屋 信行
主席研究員 水草 浩一
まちづくり・防災グループ 研 究 員 阿部 充
まちづくり・防災グループ 研 究 員 佐治 史

1. はじめに
かつては漁師まちであった千葉県浦安市。そのまちの中心を流れ市民の生活と密接に関わってきた一級河川利根川水系境川(以下「境川」という)を、市の顔として誇れるように整備するため、昭和 63 年に境川水辺空間整備基本計画(案)、平成 2 年には境川環境整備基本計画を策定し、現在、元町エリアの新橋~東水門の中流区間(B・C ゾーン)において、千葉県の河川環境整備事業とあわせて、水辺空間の修景整備事業が行われている。
一方、西水門~新橋の上流区間(A ゾーン)及び東水門から河口に至る下流区間(D ゾーン)については修景
整備が未着手、或いは親水性が不十分であると認識されている。
本検討は学識者と市庁内関係部署で構成された境川修景整備検討会(以下「検討会」という)を開催し、平成 2 年境川環境整備基本計画では未計画、未着手である区間を中心に、境川の水辺空間全体の修景整備に向けた計画(案)として取りまとめたものである。

図-1 ゾーン設定

2. 検討会概要
2-1 検討会メンバー
検討会の会長には、水辺都市の空間構造に関する研究を専門とし、国内外を問わず水辺のまちづくりに関する知見を広く有している法政大学陣内特任教授に、副会長には、景観部門の専門であり土木学会デザイン賞選考委員会委員長、また平成 2 年度の境川修景検討部会の部会員でもあった早稲田大学佐々木教授に務めて戴いた。その他会員として、市役所から企画部長、市民経済部長、都市整備部長、一般社団法人浦安観光コンベンション協会専務理事に、そして、オブザーバーとして千葉県葛南土木事務所次長に参加戴いた。

2-2 検討会開催
対象範囲は A 及び D ゾーンとし、D ゾーンにおいては第 1 期埋立地部である D1 と第 2 期埋立地部である
D2 に分け、更に D1 を公共施設が集中する D1-1 と住宅街である D1-2 に分けて検討を行った。
検討会は全 3 回とし、表-1の日程で開催した。第1 回では、事務局より境川及び周辺市街地の現状と課題及び整備方針事務局案等について説明し、検討会メンバーから意見等を聴取した。第 2 回では第 1 回の議論等を踏まえ修正した整備方針案を基に議論し、第 3回で本検討会の最終的な整備方針案としてとりまとめた。

表-1 検討会開催概要

写真-1 検討会開催状況

3. 検討会の成果
3-1 検討会での意見
全 3 回の検討会の中でいただいた主な意見は以下のとおりである。
(1)全川をとおして
・全川をとおして親水性に乏しい現状である。
・地域住民が利活用したいと思える場所が望ましい。
(2)A ゾーン(元町エリア)
・同じ元町エリア(旧漁師まち)にある B ゾーンには歴史的建造物が多く残されており、エリア一体としてとらえ、まちと水辺を繋げるよう考えるべきである。
・浦安駅からも近く、水上レストランなどの商業活動の可能性が高い場所である。
(3)D1-1 ゾーン(第 1 期埋立地部・市役所周辺エリア)
・市民が集まれる広々とした水面を有し、現在立入禁止となっている境川排水機場敷地を開放し、境川公園、管理用通路の一体整備を行うことで水面を楽しめる場所になる。
(4)D1-2 ゾーン(第 1 期埋立地部・中町エリア)
・車道・歩道・小段の各空間について、街側の緑と水際の緑が繋がるとよい。
(5)D2 ゾーン(第 2 期埋立地部・新町エリア)
・現状では、水辺へのアクセス路が少ないことや、堤防上から水辺へ立入禁止になっており親水性に乏しい。

3-2 整備方針
現状と課題、検討会での意見等を踏まえて以下のと
おり整備方針を設定した。
(1)全体
・水辺へのアクセスが少なく親水性に乏しい現状から、基本テーマを「水辺の開放と地域住民の生活を彩る憩いの場づくり」とした。
(2)A ゾーン(元町エリア)
・歴史的景観を活かして水辺に賑わいを取り戻すことを目的とし、テーマを「漁師町の風情を伝える水辺の思い出」とした。
(3)D1-1 ゾーン(第 1 期埋立地部・市役所周辺エリア)
・行政、福祉、公益サービスや商業を一体化する中心的な立地であり、市民が集まり楽しめる水辺を目的とし、テーマを「境川の中心・水辺の賑わい」とした。
(4)D1-2 ゾーン(第 1 期埋立地部・中町エリア)
・住宅街であり、日常生活に緑豊かでうるおいを高めることを目的とし、テーマを「沿川住民の憩いの場となる緑豊かな水辺」とした。
(5)D2 ゾーン(第 2 期埋立地部・新町エリア)
・河口付近で穏やかな水面を有しているものの、親水性に乏しい現状から、利用しやすくすることを目的とし、テーマを「水遊びが楽しめる水辺の公園」とした。

3-3 まとめ
まちと川の一体的な捉え方、水辺へのアクセス性、全体的に緑豊かで安全・快適な歩行者空間となるよう、各配慮事項を考慮し具現化した整備イメージを図-2のとおりゾーン毎に作成した。A ゾーンでは小段部を木の質感にして和船を浮かべ昔の風情に、D1-1 ゾーンでは松並木を残しつつ公園と河川空間を一体的に整備して水辺に近づきたくなるように、D1-2 ゾーンではまちと川が共存するよう道路と管理用通路の繋がりに配慮し通行し易い空間となるように、D2 ゾーンでは既存のコンクリート護岸を緑化することで水辺を気持ちよく楽しめる空間になるようにそれぞれ工夫した。
これら整備方針は検討会にて承認され、最終的な計画(案)としてとりまとめた。

図-2 整備イメージ図
(左上:A、右上:D1-1、左下:D1-2、右下:D2)

4. おわりに
埋立とともに発展してきた近代都市である一方、旧漁師まちの風情を色濃く残す浦安市で、新旧が共存する美しい水辺空間づくりを行うことは意義深い。
本検討で作成した計画(案)は境川及びその周辺を整備し、市民や民間企業等による多様な活動の舞台として利活用されることを想定している。そのため、今後事業化に向けて市民や民間企業等が参画する「かわまちづくり」を推進していき、河川空間等の利活用に係る市民活動の機運醸成が求められる。
最後に、本検討事業発注者の浦安市役所をはじめ、法政大学陣内特任教授、早稲田大学佐々木教授、千葉県葛南土木事務所の皆様には、多大なるご協力とご指導をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。

<参考文献>
1) 境川環境整備基本計画:浦安市,1990
2) 水際線整備構想:浦安市,2010
3) 緑の基本計画:浦安市,2014
4) 浦安市総合計画:浦安市,2019
5) 利根川水系江戸川左岸圏域河川整備計画:千葉県,2006

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