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細粒土砂の挙動を考慮した土砂・ 洪水氾濫事例の再現

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(研究期間 : 平成 25 年度~令和元年度)
国総研 土砂災害研究部 砂防研究室
室長(博士(農学)) 山越 隆雄
研究官(博士(工学)) 泉山 寛明
招聘研究員(博士(農学)) 内田 太郎

(キーワード) 数値計算プログラム,流砂形態,山地河川

1.はじめに
土砂災害の防止・軽減のためには、将来生じうる土砂移動現象を精度良く予測することが重要である。そのためには、河床変動計算は有効なツールである。例えば、平成29年7月九州北部豪雨では、筑後川水系赤谷川(福岡県朝倉市)にて、上流域での多数の斜面崩壊・土石流の発生にともなって大量の土砂が生産され、それが流下・氾濫し、下流域に甚大な被害を与えた。当災害では細粒土砂の大量の流下が、被害拡大の一因となったと考えられる。砂防研究室では、九州北部豪雨での土砂・洪水氾濫に対して、細粒土砂の挙動を考慮した計算による河床変動の再現を試みた。

2.使用したモデルの概要
細粒土砂の一部は、水と同じく乱流状に挙動し、流体力の増加に寄与するため、これを考慮できるモデルとした。また、河床勾配や土砂濃度によって土砂の移動形態(図-1)が遷移するため、計算モデルでは流れの抵抗、土砂の河床との交換条件式(侵食・堆積速度式)、平衡濃度式の土砂移動形態による変化が考慮できるようにしている。

3.モデルの検証結果
赤谷川流域における土砂動態を対象にモデルの検証を行った。計算は2ケース行い、侵食・堆積速度式と平衡濃度式を河床勾配のみで制御した場合(Case1)と、河床勾配と流れの濃度で制御した場合(Case2)で行った。LPデータの差分解析より算出した各地点の河床変動量の実績値と計算値を図-2に示す。Case1では、計算上土砂移動形態が遷移する地点で異常堆積が起きてしまうが、Case2ではそのようなことがなく、下流域での河床上昇がより実態に近く再現できていることが分かる。

図-1 山地河川における土砂動態のイメージ

図-2 河床変動の再現計算結果

4.おわりに
今回行った検証により、山地河川での土砂動態モデルの再現精度向上のためには、細粒土砂の挙動を考慮すると共に、土砂移動形態の遷移を十分考慮する必要があることが分かった。今後は、その汎用性を確認すると共に、砂防施設の効果を精度良く考慮できるようモデルの改良を進め、より実務で活用できる技術にしていきたい。

☞詳細情報はこちら
1) 中村ら(2019):豪雨時の山地河川における多量の細粒土砂を含む土砂動態計算,2019年度砂防学会研究発表会概要集

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0904河川砂防及び海岸海洋
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