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首都東京ゼロメートル地帯 高台まちづくり「命山」計画の提案

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Proposal for upland community development to save lives in zones below mean sea level in Tokyo

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

技術参与 土屋 信行
まちづくり・防災グループ 研 究 員 渡邊 康示
まちづくり・防災グループ グループ長 阿 部 徹
主席研究員 水草 浩一
まちづくり・防災グループ 次 長 竹内 秀二
水循環・水環境グループ 研 究 員 和 田 彰

高規格堤防整備事業は、人口、資産等が高密度に集積した低平地等を抱える大河川において、施設の能力を上
回る洪水、いわゆる超過洪水等に対し堤防の決壊に伴う壊滅的な被害の発生を回避するため、まちづくりと一体
となって幅の広い緩傾斜の堤防を整備するもので、現在は関東地方および近畿地方の 5 水系 5 河川(荒川、江戸川、多摩川、淀川、大和川)で実施されている。
平成 29 年 3 月末時点の高規格堤防の整備状況は、整備区間の約 120km に対して約 14km(約 12%)が整備済みで、このうち、高規格堤防の基本的な断面形状が確保されている区間は約 3.3km(約 2.8%)となっている。今後、高規格堤防の整備の推進を図るためには、これまでの高規格堤防整備の中で得られた知見や様々な課題を整理したうえで、効率的・効果的に進めていくために必要な推進策を検討する必要があると考えられる。
本稿では、このような認識に立ち、高規格堤防整備の推進にあたっての課題を整理するとともに、首都東京の
ゼロメートル地帯を例として、高規格堤防を活用した高台まちづくりの将来像について提案を行った。

キーワード: 高規格堤防、高台まちづくり
High-standard levee construction is conducted in an integrated manner with community development projects to build broad, mildly sloped riverbanks along major rivers that run through densely populated and built-up low-lying areas to avoid devastation from levee breaches caused by flooding that overwhelms the designed levee capacity. Currently, such projects are underway along five rivers (Arakawa River, Edo River, Tama River, Yodo River, and Yamato River) that belong to five riverine systems in the Kanto and Kinki regions.
As of the end of March 2017, around 14 km (about 12 percent) out of 120 km of target segments has been improved with high-standard levees. The basic cross-sectional shape of a high-standard levee has been ensured with roughly 3.3 km (about 2.8 percent) of these segments. Further improvement must be sought in an efficient and effective manner by exploring necessary measures while sorting out findings and challenges encountered in the construction of high-standard levees so far.
This paper takes zones below the mean sea level in Tokyo as an example to present the current state and challenges encountered in the construction of high-standard levees. It proposes a desired future for upland community development that incorporates high-standard levees.

Keywords: high-standard levees, upland community development

1.はじめに
リバーフロント研究所では、地域の実情に応じた柔軟な発想と工夫による高規格堤防の整備を促進する仕組みの提案を目的に、平成 28 年度から自主研究に取り組んでいる。令和元年度は首都東京に着目し、近年の気候変動による災害リスクの増大や社会情勢の変化等を踏まえ、沿川地域のまちづくりにとって高規格堤防整備のより良いあり方を見出すことを目的に勉強会を開催した。
本稿では、勉強会の内容を踏まえ、高規格堤防整備を促進するために解決すべき制度面等の課題を整理するとともに、大規模災害時に首都東京ゼロメートル地帯の人命を守るための避難高台まちづくり「命山」計画を提案する。なお、高台まちづくりの避難場所としての活用の可能性の調査研究の詳細については、リバーフロント研究所報告第 31 号の P33 に示す。

2.東京ゼロメートル地帯の脆弱性
2-1 気候変動と降雨激甚化
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第 5次評価報告書(平成 25~26 年公表)では、中緯度の陸地などで 21 世紀末までに降雨がより強く、頻繁になることなどが示されており、気候変動に伴う降雨量の増加や海水面の上昇等による洪水被害の頻発化・激甚化が懸念されている。
我が国においては、平成 30 年 7 月豪雨や令和元年10 月の台風 19 号による洪水被害が記憶に新しく、人命や家屋、社会経済へ甚大な被害をもたらした。

首都東京ゼロメートル地帯 高台まちづくり「命山」計画の提案

図-1 気候変動に伴う洪水発生頻度などの変化 1)

2-2 大都市東京の集中が故のリスクの増大
我が国の社会経済活動の中心である首都東京は、都市機能が高度に集積する一方、地盤沈下により海面水位より低くなってしまった密集市街地が広がるなど、洪水・地震等の自然災害に対するリスクが極めて高い地域である。このため、ひとたび大規模災害が発生すると多くの人命が失われる可能性があるとともに、社会経済活動が麻痺し、ひいては我が国全体や世界に影響を及ぼす恐れがある。
世界有数の再保険会社であるスイス・リー社は、東京が世界一自然災害リスクの高い都市と公表した。また、ミュンヘン再保険会社のリスク指数では、東京・横浜は 710 ポイント、第 2 位はサンフランシスコの 167ポイントとなっており、スイス・リー社と同様に東京が極めて危険性の高い都市と判断している。世界は東京をこのようにハイリスク都市と評価している。

図-2 世界大都市の自然災害リスク指数 2)

2018 年 3 月に東京都は、高潮浸水想定を浸水区域 17区、最大水深 10m、浸水区域内昼間人口 395 万人と発表した。また同年 6 月、公益社団法人土木学会は、この高潮被害が 115 兆円に上ると推計した 3)。

図-3 東京都高潮浸水想定区域図[想定最大規模]4)

さらに同年 8 月、江東 5 区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)は、洪水・高潮浸水地域内住民 250 万人全員を区域外に避難誘導する「広域避難計画」を発表、中でも江戸川区は自区内に留まることを「ここにいてはダメです」と強い表現のハザードマップを作成し、区民全員の 24 時間前の事前避難を決定した。

図-4 江戸川区ハザードマップ 5)

この様な東京の現実を直視し、安全な未来都市東京を実現することは、首都東京にとっても日本の存続にとっても喫緊の課題である。

3.高規格堤防整備を促進するために解決すべき
制度面等の課題と対応策
高規格堤防は決壊しない堤防であることから、超過洪水や気候変動による水害リスクの増大に対して非常に有効な対策であるものの、様々な要因により整備に時間を要している。
本章では、その要因の内、高規格堤防整備における制度面等の課題に対して対応策を整理・検討した。

3-1 都市計画決定

 高規格堤防の整備事業は沿川自治体のまちづくり事業に合わせて行うことと整理されているが、自治体にとって事業をすべき必然性も義務もないと言う立場である。
 河川管理者と自治体にとって、共に取り組まなければならない法的根拠を定めることが必要である。

高規格堤防整備事業は河川事業として始まっており、住居側に幅の広い緩傾斜の堤防を構築することから、沿川のまちづくり事業との共同事業とし実施することとされた。約 120km という高規格堤防事業の範囲は、概ね海抜ゼロメートル地帯と言われる地盤沈下地帯であり、高密度に人口が密集し経済活動がなされている地域である。この地域は過去に土地区画整理事業や再開発事業、木造密集地域不燃化事業など既に様々なまちづくりに取り組んできた地帯であり、新たなるまちづくり事業は予定されていない。自治体が先行してまちづくり事業を開始する可能性はほとんどないのが現実である。したがって、高規格堤防事業がまちづくり事業に合わせ実施されるという事業スキームは事実上困難となる。
そこで河川管理者から各自治体に高規格堤防整備の必要性等について説明を行い、共同事業者としての協力を働きかけ、共に取り組まなければならない法的根拠・計画を再度認識、または新たに定める必要がある。協同で策定すべき計画としては、沿川整備基本構想があるものの策定年度が古いため、近年の災害リスクの増大や社会情勢・地域実情の変化等を考慮し、協同で改訂を行う必要がある。また、防災・避難の観点などから高規格堤防と連携したまちづくりを自治体のマスタープランに位置付けることは、自治体が共同事業者としての事業を実施するうえでの法的・計画的根拠となるため、マスタープラン等を随時改定することが有効である。
計画の改定・策定にあたって、河川管理者は事業年度について一定の目標年次を定めなければならない。まちづくりの更新サイクルを考えると、概ね 50 年程度で都市インフラの更新が行われている。この更新サイクルを 1 つの目安として高規格堤防の整備を進める事は、無駄な投資をすることを防ぐことができ、また都市のリニューアル、リノベーションの必然性に合わせることもできるため、50 年という目標年次は妥当なものと考える。

3-2 面整備事業規模の拡大
 区画整理事業や再開発事業など面的整備事業は、開発利益を生み出し、その利益を事業に還元することが可能である。
 面的整備の有効性を活かすために、事業規模の拡大化を目指す必要がある。

土地区画整理事業などの面的整備事業は、一定規模の地区設定により、道路や公園等の各種公共施設を整備することで地域に増進の利益が生ずる。この増進を根拠に減歩を課している。地区面積があまりにも小さい場合は、区画整理による各種施設の再配置の自由度も小さくなり、地区全体として利便性や防災性、土地利用の転換などが十分に進められない。
望ましい事業規模は概ね 20ha 程度必要で、多くの土地区画整理事業がこの規模で取り組まれている。都市計画制度の観点からも、土地利用計画を定め用途地域を変更するには、20ha 程度が望ましい。江戸川区の葛西沖土地区画整理事業は、公有水面埋め立て事業と合わせた 380ha の区画整理事業で、公共基盤整備・公共関連施設整備費の約 90%を地域住民の減歩により賄った。この様に大きな事業規模で面整備を行うことで、高規格堤防整備事業に伴う区画整理事業はほぼ開発利益を充当する事が可能となり、公共投資額を大幅に削減することができる。

3-3 用地買収制度導入
 高規格堤防事業は約 3 年の盛土築造期間を経過後、従前の地権者が元の場所に建築物を再建するという事業である。しかし、現実的には 3 年という時間を考慮し、これを機会に他地区へ移転することを選択する地権者も多い。
 事業協力を得るために、柔軟な用地買収制度等が必要である。

用地買収制度の導入にあたっては、高規格堤防整備の範囲内であれば買い取り希望者の土地を「バラ買い」してそれを集約し、堤防または民間利用に供することも必要である。これまで河川管理者が用地買収方式の採用を見合わせてきた要因の 1 つに「バラ買い」した場合、買収地を集約することができるか否かという課題があったが、土地区画整理事業では「バラ買い」した用地の集約を可能としている。区画整理事業や再開発事業などの面的整備を導入することにより、これらの課題は解決する。
集約した用地は民間事業者に売却することも可能とされており、集約用地は一般的に高価値となるため、開発利益を事業全体に還元することで、事業総費用を抑制することができる。また、買収した土地の全てを所有しける必要はなく、河川縦断方向に高規格堤防事業の事業用地、いわゆる種地として利用することで事業の進捗を図ることも可能である。用地買収は事業推進のための手段として活用もできる。
江戸川の上流部においては、首都圏氾濫堤防強化事業が 7H 範囲(計画堤防の高さの約 7 倍の範囲)で用地
買収方式としてすすめられている。一方、高規格堤防事業においては、同じ治水事業でありながら、用地買収制度が全く織り込まれていないために、地域住民との交渉が停滞するケースもある。一定程度の用地買収方式の制度に改定することや、河川防災ステーションなどの防災上必要な土地を公的に確保し、高規格堤防事業の種地に利用できるスキームの検討等が今後必要である。

3-4 容積率の活用
 民間事業者は高規格堤防整備事業への参画に消極的である。
 容積率の付与、地域内移転、容積率売却などを、洪水発生時に同一の危機にさらされる、流域自治体地域内において可能とする仕組みが必要である。

高規格堤防整備の事業総額は膨大になると想定されるため、公共事業費を少しでも軽減させることが必要である。解決する対策の 1 つとして、民間活力・資金を導入する手法が考えられる。そのためには、民間事業者にとってインセンティブのある事業にすることが重要である。
インセンティブとしては容積率の緩和等があり、これまで容積率の活用による賃貸床建設などは、都市計画上、大きなメリットであると考えられてきた。しかし、都心地域ですら既存の容積率の割増制度を使い切れていないところもあり、多くの民間不動産開発業者は、容積率を魅力ある収益の対象とはみなしていない傾向が伺える。高規格堤防が予定されている江戸川河口部、荒川下流域部、多摩川河口部は郊外に位置しているため、郊外部においては、その地域で容積率を必要とする高規格堤防整備事業として立ち上げない限り、民間事業者の参入は望めない。
高規格堤防整備事業として、容積率を活用する手法の一つとしては、自治体が抱える社会的な課題などの
解決策に利用すること等が考えられる。例えば、荒川下流の周辺の自治体には、老人福祉関係などの施設整
備の需要が高いため、施設の効率的な集積が求められており、経営者によっては容積率の割増しを希望する
可能性が高い。そのためには、同一の浸水想定区域内等を条件に、高規格堤防整備地区から他地区へ容積率
を移転させることが可能となるような制度緩和などを行うことによって、容積率をボーナスと捉えた民間事
業者の参入が望めるようになる可能性がある。
売却を可能にする方法については、取得を希望するデベロッパーがあり、容積率を売却した対象地である高規格堤防用地では容積率をゼロに制限し、その帰属は高規格堤防事業者とすることが考えられる。このような手法で高規格堤防整備を実施することにより、結果として、事業の中で公共用地として幅の広い緑の堤
防や道路が確保できることとなる。
また、荒川以東の足立区、葛飾区、江戸川区の低平地において、地域防災上「洪水ハザードマップ」では、
自区内に充分な避難高台が存在せず、やむなく埼玉県、千葉県、東京都西部地域への広域避難計画が策定され
ている。地域内での垂直避難を可能とするには、避難高台、避難ビルなどの建設が必要である。この様なゼロメートル地域特有の行政課題解決のための容積の活用であれば、自区内容積率の移転等は必然であり、そのための都市計画や地区計画の定めも必定である。

3-5 河川管理者の啓発活動
 水害対策として高規格堤防整備が有効であることが、自治体や地域住民に十分に周知・認識され
ていない。
 河川管理者からの働きかけが必要である。洪水や高潮、さらには首都直下地震にあっても住民生活や経済中枢機能を損なわなくてすむ「ここにいれば安心です!」という絶対安全高台地域「命山」を造る

平成 22 年の民主党政権時の事業仕分け第 3 弾で、高規格堤防が廃止と評価判定された経緯等もあり、多く
の自治体は高規格堤防の治水事業としての必要性について認識が低く、事業実施に消極的になっている。
現在の頻発する洪水を鑑み、早急にゼロメートル地帯の超過洪水に対しての安全性を確保しなければならない。地球温暖化などの要因が考えられる気候変動により、治水のおかれた緊迫する危機に対処すべく、沿川自治体の高規格堤防整備の必要性と継続についての認識を再確認するため、河川管理者からの自治体に対する働きかけが必要である。

4.首都東京ゼロメートル地帯「命山」計画
令和元年 10 月の台風 19 号では、江東 5 区での大規模水害時における広域避難の運用課題が明確になり、
域内避難の重要性が認識されたところである。一方、荒川と江戸川の沿川 7 区(江東区、江戸川区、墨田区、
葛飾区、足立区、北区、板橋区)において、大規模洪水時に避難が必要な区域内の人口約 295 万人のうち、現在浸水しない指定避難所及び避難場所に収容できる区域内避難人口は約 95万人の約 3割程度であることが確認された 6)。
本章では、首都東京ゼロメートル地帯の大規模災害に対する防災・避難対策の一つとして、高規格堤防整備を活用した高台まちづくり、「命山」計画をリバーフロント研究所として提案するものであり、高台まちづくりの将来像・ビジョンを下記のとおり設定し研究を実施した。

洪水や高潮、さらには首都直下地震にあっても住民生活や経済中枢機能を損なわなくてすむ「ここにいれば安心です!」という絶対安全高台地域「命山」を造る

◆安全未来都市「命山」のまちづくりビジョン
①激甚化する自然災害に対して災害 BCP・業務継続地区(BCD)の構築(地震、水害などあらゆる災害に安全で独立した都市機能を維持できること)
②国連 SDGs(持続可能な開発目標)に沿った国際環境都市の創出
◆必要な機能(事前防災+まちの課題解決)地震、洪水に対応したまちづくりの基本方針
①事前防災都市づくり(洪水・地震・火災、都市問題の解消)
②域内避難を可能にする広域防災公園、防災活動拠点
③災害時にも対応可能な緊急輸送道路等
④地域の拠点を形成する都市施設の再編(国の施設、自治体施設、市役所、警察、消防、商業施設、病院、学校、保育園、幼稚園、高齢者施設、福祉施設、市民生活施設、企業ビル、ビジネスセンター、ホテル、商業施設等)
⑤高台都市を連絡する南北基幹軸交通(都市計画街路、LRT・BRT 自動運転等)
⑥既存の交通結節点との接着連携
⑦グリーンインフラに隣接した就業空間と居住空間(防災避難ビル)
⑧重要インフラの高台への集約配置(高圧電線洞道
の複線化、電線地中化等)
◆防災拠点が具備すべき機能
①市民住宅(災害時避難住民支援機能を具備する)
②仮設住宅建設が可能な避難広場となる環境アメニティー公園
③水辺を楽しめる都市空間と応急的な避難場所の機能と規模
④高架道路や堤防等の非浸水エリアへ避難可能なアクセス路の接続
⑤都市を縦貫する河川の導線機能の拡充、グリーンインフラの充実
⑥電力、ガス、上下水道、情報通信など独立して維持できる施設
◆概要
ⅰ 「命山」を「コンパクトシティ」とすると同時に「スマートシティ」として整備する事で新しい東京の機能を創設し、世界都市東京として安全と高機能を兼ね備えた「未来都市・東京」とする。
このことは国連が提唱する SDGs(SustainableDevelopment Goals)にもかなった計画となり、被害が発生してから行われる「復旧・復興」よりもはるかに効率が良く経済的にも投資効率の高い「事前防災」を実現することができる。「命山」計画は、これまで東京の発展の歪みとして積み重なってきた都市構造の課題を解決する絶好のチャンスであり、高規格堤防の考え方を包含し、河川に沿った高台地を連続的に繋ぐ再開発型の新都心建設となる。
横断的な形状は、高規格堤防形状を踏襲するのではなく、十分な都市としての機能を持つ安全な高台地として整備し、これまで防災上ハイリスクな場所として考えられてきたゼロメートル地帯を、高機能でリスクの極めて低い一等地として生まれ変わらせることになる。
ⅱ 「命山」計画にあたっては、水害犠牲者ゼロを目指してゼロメートル地帯の都民全員の避難を可能とする避難高台地として計画する。
ⅲ 高齢者住宅や福祉施設、障害者施設の全てを「命山」に配置する。
災害時弱者と言われる要支援者の方々は、健常者に比べ避難に時間を要する傾向にあるため、避難しなくても良い「命山」に住んでいただくことで、非常時の災害対策の大きな課題の 1 つは解消する。
ⅳ 「命山」に配置する公園や緑地は、ゼロメートル地帯全域の一時避難場所として十分な広さを整備する。
避難広場として使える緑地は東日本大震災の避難可能時間などを考慮し、1 km ごとに避難広場として配置する。このことで広域避難をする必要がなく、かつ避難導線の短い避難場所を確保する。
ⅴ 河川堤防の天端には、河川管理用の堤防天端道路兼防災避難道路を配置するとともに、河川堤防の高さよりも高い位置に遊歩道やサイクリングロードなどを整備する。
これらは、災害時の物資輸送道路として使用する他、地域の避難広場を有機的に繋げ、さらなる広域的な避難を可能にする。避難広場となる「命山」は、孤立しないように整備する。
ⅵ 「命山」に都市施設のうち重要な建築物を集約し、いかなる自然災害があっても機能停止に陥らないよう震災や水災害時にも安全性を確保する。
国の施設、東京都施設、区役所、警察署、消防署、学校、保育園、幼稚園、高齢者施設、福祉施設、病院、企業ビル、ビジネスセンター、ホテル、商業施設、大規模公園、緑地等市民生活施設などあらゆる
施設が考えられる。これらの施設を「命山」に配置することで東京都の災害 BCP を確保する。

図-5 「命山計画」イメージ横断図

ⅶ これらの施策を実現するにあたっては、老朽空家住宅についても買収し、居住空間の再配置と居住者
の募集により、少子高齢化等の都市の課題を解決する。
ⅷ 「命山」は電力、ガス、上下水道、情報通信など独立して維持できる施設として整備し、首都直下地震
や大規模水害においても孤立することなく、レジリエンスを確保できるように整備する。
ⅸ 計画は荒唐無稽ではなく、これまでの防災まちづくりの継承である。これまでも東京都はゼロメートル地帯の命山建設として「葛西臨海公園地域(380ha)」「大島小松川公園(24ha)」を完成してきており、現在も「篠崎公園(86ha)」を整備中である。墨田区、江東区地域においては「白髭東地区防災拠点」「白髭西地区防災拠点」「亀戸・大島・小松川地区防災拠点(100ha)」など 7 カ所を完成させてきた。遡れば東京の災害対策において関東大震災復興事業、戦災復興事業、木造密集地帯改善事業など数多くの都市構造改善事業に取り組んできた実績があり、ノウハウの積み重ねと人材が集積しているのも東京都だからである。
ただし、いずれの公共機関職員の転勤も非常に短期間(2~3 年)で技術の継承ができなくなってきている。東京都が蓄積してきたノウハウを継承して継続的に取り組むことができるまちづくり組織の構築が必要である。

図-6 葛西臨海公園地域(約 380ha)7)

図-7 「命山」計画イメージ平面図

5.おわりに
本研究では、高規格堤防整備をより推進させるための課題の整理と対策案の検討、及び首都東京のゼロメ

トル地帯の高台まちづくり「命山」計画の提案について調査研究を行った。
高規格堤防整備の課題については、対策の具体化と施策としての仕組みづくりを関係機関で調整の上、進
めていくこと、また東京高台まちづくり「命山」計画については、本研究成果を参考に、各河川でモデル検
討等を実施し、高台まちづくり実施の課題を抽出するとともに、その対応策の検討を進めて頂きたい。
最後に、研究にあたり国土交通省水管理・国土保全局治水課を始め、関東地方整備局河川部、各河川事務
所など関係する方々には、多大なるご協力とご指導を頂いた。ここに厚く御礼申し上げる。

<参考文献>
1) 第1回配布資料 資料 4:気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会
2) 平成 16 年度版防災白書:内閣府
3) 『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書:土木学会レジリエンス委員会
4) 高潮浸水想定区域図:東京都
5) 江戸川区水害ハザードマップ:江戸川区
6) 高規格堤防整備と連携した高台まちづくりの避難場所としての活用の可能性の調査研究:リバーフロント研究所報告第 31 号,リバーフロント研究所
7) 写真提供:江戸川区

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