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剥離の生じたタイル仕上げ押出成形セメント板の補修技術の研究

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国総研レポート2020(研究期間 : 平成 30 年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 住宅研究部 住宅生産研究室
主任研究官(博士(工学)) 根本 かおり
室長(博士(工学)) 布田 健

(キーワード) 押出成形セメント板(ECP),タイル仕上げ,剥落防止,補修工法

1.はじめに
本研究では、剥離の生じたタイル仕上げの押出成形セメント板(Extruded Cement Panel 以降、ECPと
呼ぶ)の補修技術について検討している。タイル仕上げは、ECPやALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete,軽量気泡コンクリート)などの外壁パネルの外装としても適用されているが、ここ数年間に強風の吹き荒れた日にパネル外装の仕上げタイルが大規模に剥落するという事故が数件発生した。これらの事故では幸いにも怪我人は無かったものの、仕上げタイルの剥落は甚大な被害を引き起こす可能性があるため、あってはならない事である。大規模剥落が起きた仕上げタイルは、ECPの平滑なパネル面にモルタルでタイルを張付けた仕様であったことが分かった。修繕工法として新築時と同様の仕様、即ちモルタルでタイルを張替える仕様で補修工事を行っても剥落防止性能に不安が残る。また、同建築物の剥落の生じなかった仕上げタイルについても剥落防止への対策の必要性が考えられる。さらに、既存建築物には同仕様のものが多数あると考えられ、剥落防止を考慮した補修工法の整備が必要である。

2.研究の概要
ECPは強度があり靱性は高いが無筋で断面には中空層があり、かつ薄肉であるためRC造建築物のタイル仕上げの補修工法を適用することは難しい。これをふまえ、仕上げタイルの変形追従性を高め、剥離が生じた場合の剥落防止性能を付与するため、アンカーピンおよびエポキシ樹脂注入工法でECPに固定する補修工法を検討することとした。本研究は2年計画で実施しており、2018年度の検討結果から、仕上げタイルECP試験体の模擬剥離(図及び写真-1)の作製方法は、ECP表面の所要面積に特定の瞬間接着剤を塗布し十分に硬化した後、タイル張付けモルタルを施工して界面で材料が接着しない方法とした。ECPのダメージとなる割れ・欠けを生じさせずに穿孔する方法として、タイルの目地部分にECP専用ドリル刃を取付けた回転式電動ドリルで施工することに決定し
た。施工時の粉塵や騒音の少ない水循環式無振動ドリルによる施工は、ECPの割れ・欠けは無かったものの断面に中空層のあるECPでは水が循環できずに中空部に流入するため、今回の検討から除外した。
2019年度は、仕上げタイルをECPに固定するアンカーピンの種類(形状)や注入するエポキシ樹脂の粘度および注入方法を検討した。アンカーピンニングの検討に先立ち、ECPを欠損させず固定できるアンカーピン選定の予備実験を行い(写真-2)、11種類の中からリベットアンカー(ECP専用:径4.5㎜・長さ28㎜)、Pレスアンカー(皿頭形状:径4㎜・長さ38㎜)、ドリルビス(ジャックポイント)の3種類を選定した。エポキシ樹脂注入は充填や施工性も確認するため手動および低圧樹脂注入(2器具)とし、手動樹脂注入用は粘度の異なる2種について検討した。施工後の性能評価法は油圧式簡易引張試験器を用いて補修箇所の接着強度を確認した。仕上げタイルECP試験体の模擬剥離の浮き代(隙間)の確保は、屋内で一定期間養生した試験体を一時的に屋外に移し仕上げタイル面に日射を当て浮きの促進を図り、打診により一部に明確な浮き音(打診音が接着性を確保している仕上げタイルよりも高い)が確認できた時点で実験を開始した。

図 ECPの模擬剥離と中空の位置

3.結果について
固定方法は表に示す9種類とし、手動のエポキシ樹脂注入は、浮き代(隙間)0.1㎜、直径30cmの円状に充填することを想定し1箇所につき約9g注入した。引張接着試験の結果は、タイルの接着強度0.4N/㎜2を上回った固定方法は手動でエポキシ樹脂注入を行ったPレスアンカー1箇所とドリルビス2箇所であった。この3箇所に共通したのが、エポキシ樹脂注入前の打診で浮き音が確認された点である。試験で破断した接着面の周辺仕上げを剥がして観察したところ、接着強度が確保された固定方法はいずれもアンカーピンを中心に円状にエポキシ樹脂が充填されていた。一方、接着強度が確保されなかった固定方法はアンカーピン周辺にエポキシ樹脂が確認できず、低圧樹脂注入もエポキシ樹脂の粘度に関わらず充填を確認できなかった。その面をさらに詳しく観察したところ、エポキシ樹脂は極薄く広がっていることが分かった。このことから、タイル仕上げとECPを接着できるエポキシ樹脂には厚みが必要と推察される。今回の実験では試験体の浮き代(隙間)が不十分であったため、目的としたアンカーピンとエポキシ樹脂注入を併用した固定方法の有効性の確認が果たせなかった。試験体の模擬剥離に浮き代(隙間)を確実に設け、同じ固定工法と材料で再検討する必要がある。

4.今後の課題
これまでは補修工法を施工の面から検討してきたが、本来ECPに穴を開けることは断面欠損となり安全性確保のために力学的な検討が必要である。今後、力学的な観点からタイル仕上げECPにアンカーピンニングやエポキシ樹脂注入で補修することで、ECPの強度低下や仕上げタイルの剥落抵抗性がどの程度確保できるのかについて検討を行う必要がある。

写真-1 模擬剥離を設けたECP試験体の作製

写真-2 アンカーピンの選定のための予備実験

写真-3 タイル仕上げのECP固定法の検討

表 タイル仕上げ固定法引張試験の結果固定方法 エポキシ樹脂粘度 記号 枝番 接着強度(N/㎟)

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