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水位観測から決壊発生を捉える 技術開発

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国総研レポート 2020(研究期間 : 令和元年度~)
国土技術政策総合研究所 河川研究部
水防災システム研究官(博士(工学))
服部 敦 部長(博士(工学)) 佐々木 隆

(キーワード) 決壊、水位観測、氾濫流量

1.背景と目的
東日本を中心に広域に強い豪雨と災害をもたらした2019年台風19号の特徴のひとつとして、ある時間帯に氾濫が集中多発したことが挙げられる。こうした厳しい状況下においても、越水・決壊の発生把握や確認の迅速化が必要なことが明らかとなった。
一方、水害リスクラインや危機管理型水位計の導入が進み、きめ細かく地先ごとに実況水位情報を取得できる環境が整ってきた。これら新技術を活用して水位観測から決壊発生を捉え、発生地点を絞り込み、氾濫流量を推算する技術開発について報告する。

2.決壊が発するシグナルを観測する
決壊が発生すると、大量の河川水の流出(氾濫)に伴い河道内水位が急低下し、決壊地点周辺で水面が窪む(図-1参照)。この窪みは深さを増すとともに、一種の波として河川の上下流に伝播し、その範囲を広げていく。こうした様子は、決壊地点に近い水位計から順に現れる一連の水位変化として観測される。決壊発生は、水面の窪みによる一連の水位変化を決壊発生のシグナルと見なし、それを複数の水位計で観測することで捉えられる。決壊発生地点の絞り込みは、各水位計にシグナルが現れた時間差を利用して行う。また氾濫流量は、「水位観測データの同化によりリアルタイム洪水流解析の精度を向上する」という水害リスクラインに用いられている技術を応用して、決壊地点を挟んだ上下流における洪水流量を算定し、その差分として推算する。

3.技術開発のポイント
大河川の下流域に相当する緩勾配の河道を想定して、決壊発生から30分までの水深縦断分布を一次元不定流解析により算定した結果の一例を図-2に示す。この例は、決壊の影響が水深変化に直に表れるシンプルな条件下の計算結果であり、決壊により形成された水面の窪みが上下流に伝播する様子が示されている。決壊から10後には10cm以上の窪みの範囲が上流に1km程度、下流に2km程度まで広がっている。
上記のオーダーで伝播する決壊のシグナルを決壊発生から数十分以内に捉えるためには、水位計の設置間隔を10kmオーダー以下とする必要がありそうである。このようなきめ細かな水位観測が、危機管理型水位計の導入により実現可能となった。
上記のように河道状況や観測環境を想定して、技術開発を進めているところである。

図-1 決壊シグナル観測に関する説明図
 一様矩形断面河道に一定流量が流下する等流状態で決壊発生
 等流水深h0=6m.氾濫流量/一定流量=約12%、フルード数0.24

図-2 水面窪みが伝播する様子の計算例

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