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高規格堤防整備と連携した高台まちづくりの 避難場所としての活用の可能性の調査研究

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A study on viability of upland community development and high-standard levee improvement to provide evacuation space

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

まちづくり・防災グループ 研 究 員 渡邊 康示
技術参与 土屋 信行
まちづくり・防災グループ グループ長 阿 部 徹
主席研究員 水草 浩一
水循環・水環境グループ 研 究 員 和田 彰

1.はじめに
高規格堤防整備事業は、人口・資産等が高密度に集積した低平地等を抱える大河川において、堤防の決壊に伴う壊滅的な被害の発生を回避するため、まちづくりと一体となって幅の広い緩傾斜の堤防を整備するものである。
現在では、関東地方及び近畿地方の 5 水系 5 河川(荒川、江戸川、多摩川、淀川、大和川)のゼロメートル地帯等の約 120km で事業が進められている。

図-1 高規格堤防の基本断面及び機能 1)

近年の気候変動により水害リスクの増大が懸念されており、令和元年 10 月の台風 19 号では、東日本を中
心に記録的な大雨となり、墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区の、いわゆる江東 5 区では大規模水害時における広域避難の運用課題が明確になり、域内避難の重要性が確認されたところである。
本稿は、河川管理者、自治体等へのヒアリング等による課題整理を踏まえ、高規格堤防整備と連携した高台まちづくりの避難場所としての活用の可能性について調査研究をとりまとめた。

2.調査研究内容
東京都内の荒川と江戸川の沿川 7 区(江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、北区、板橋区)が指定
する指定避難所及び都が指定する避難場所の高台化による超過洪水時の避難場所としての有効性について検証した。
検討にあたり、洪水・高潮浸水想定区域に含まれる浸水深 50cm 以上の区域・人口を、避難が必要な区域・
人口とした。
・ 避難が必要な区域の面積(避難面積) :約 21,100ha(7 区総面積の 87%)
・ 避難が必要な区域内の人口(避難人口):約 295 万人(7 区総人口の 85%)
①現在浸水しない避難場所
整備済みの高規格堤防特別区域内などの現在浸水しない指定避難所及び避難場所を「現在浸水しない避難場所」とし、これらによる避難区域及び避難者の収容可能な人数を検証した。なお、避難区域を避難場所から 2km とした。
・避難区域面積:約 6,400ha(避難面積の 30%)
・区域内人口:約 95 万人(避難人口の 32%)
・避難者収容可能人数:約 110万人(避難人口の 37%)
②高規格堤防特別区域内の避難場所が高台化された場合
荒川と江戸川の高規格堤防特別区域に含まれる指定避難所及び避難場所を「高規格堤防特別区域内の指定避難場所」とし、これらが高台化された場合の避難区域及び避難者収容可能人数を検証した。
・避難区域面積:約 14,800ha(避難面積の 70%)
・区域内人口:約 208 万人(避難人口の 71%)
・避難者収容可能人数:約 142万人(避難人口の 48%、区域内人口の 68%)
③現堤防の裏のり面の真上に位置する上面部を避難場所として活用した場合
荒川と江戸川の高規格堤防特別区域に含まれる指定避難所及び避難場所が高台化され(②のケース)、さらに現在の堤防裏のり面を避難場所として利用した場合の避難区域、避難者収容可能人数を検証した。
・避難区域面積:約 14,800ha(避難面積の 70%)
・区域内人口 :約 208 万人(避難人口の 71%)
・避難者収容可能人数:約 179万人(避難人口の 61%、
区域内人口の 86%)

3.おわりに
本研究では、高台まちづくりの避難場所としての活用の可能性について調査研究を行った。今後は、高台まちづくりの必要な機能について、高規格堤防特別区域内で確保すべき避難空間の他、背後の市街地まで取り込んで公園や住居、公共施設の嵩上げ等の検討が必要であると考える。
最後に、研究にあたり国土交通省水管理・国土保全局治水課を始め、関東地方整備局、近畿地方整備局、
各河川事務所など関係する方々には、多大なるご協力とご指導を頂いた。ここに厚く御礼申し上げる。

<参考文献>
1)よくわかる高規格堤防整備事業パンフレット:国土交通省荒川下流河川事務所

図-2 高台まちづくり概念図と避難者収容可能人数

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