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多様化する生活支援機能を踏まえた都市構造の分析・評価技術の開発

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国総研レポート2020(研究期間:平成29年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 都市研究部 都市施設研究室
室長 中西 賢也
主任研究官 吉田 純土

(キーワード) コンパクトシティ,集約型都市構造,居住地選択要因,DID,評価指標

1.研究の背景と目的
人口減少・超高齢社会の急速な進展及び行政の厳しい財政制約下で、都市においても持続可能性や生産性の向上等を図ることが我が国にとって喫緊の課題である。都市の持続可能性や生産性の向上に繋がる集約型都市構造(コンパクトシティ)への転換を促進するために、平成26年5月に改正された「都市再生特別措置法」において、都市機能誘導区域や居住誘導区域を定めることにより都市の集約化を図る立地適正化計画制度が導入されるなど、都市のコンパクト化に向けた制度的枠組みが強化されつつある。
そのような、コンパクト化が必要な全国の都市においては人口規模や都市形成過程等の違いに伴う多様な都市・地域特性があり、その特性に応じて「コンパクト化の方向性」にも多様なバリエーションがあり得るものと考えられる。そのため、都市の特性に応じ、日常生活に必要な生活支援機能を有する施設の分布状況を勘案した、適切な都市構造の選択を可能とする評価手法の検討が必要である。

2.DID(人口集約地区)データの分析
都市の集約化の現状を定量的に把握するためにDIDと人口密度等の関係について、2005年~2015年を対象に分析を行った。なお、以下では、5%以上の増加、±5%以内、5%以上の減少を、それぞれ、「増加」、「現状維持」、「減少」としている。
・全912都市中、DID面積が増加している都市は241都市(26.4%)、現状維持の都市は582都市(63.8%)、減少
いている都市は89都市(9.8%)。
・DID面積が増加している都市で、DID人口密度が増加している都市は33都市、現状維持は142都市、減少している都市は66都市となっている(図-1)。DID面積増加とDID人口密度が減少している都市については、市街地のスプロール化やスポンジ化が生じている可能性が高いと考えられる。
・DID面積が減少している都市で、DID人口密度が増加している都市は14都市、現状維持は30都市、減少している都市は45都市となっている(図-2)。DID面積減少とDID人口密度が増加している都市については、人口が集約し、都市構造も集約化が進んでいると考えられる。

図-1 (DID面積増)DID人口密度の増減別都市数

図-2 (DID面積減)DID人口密度の増減別都市数

2.居住地選択要因調査
都市構造の形成要因を把握するため、転居検討層に対してアンケート調査を行い、居住の実態、居住地選択要因等について把握した。調査の概要は以下の通り。
<アンケート調査概要>
対 象 者:東京都府中市、石川県金沢市の世帯主あるいは世帯主の配偶者
調査方法:WEB調査
回答者数:府中市、金沢市それぞれ500名
調査時期:2019年1~2月

金沢市におけるアンケート結果をみると、転居先を自由に決められる場合の希望する転居先(図-3)は、拠点的なエリアであるエリア1が47.6%で、現在の居住地(図-4)と比較すると、その比率が現況の3倍位近くになっている。希望のエリアに住めない要因(図-5)は、土地・住宅の価格の高さが最も多く、次いで通勤・通学の不便さ、買物の不便さである。この結果より、拠点的なエリアに住みたい方は多いが、価格の高さ等が障害になっている事がわかる。
あわせて、コンパクトシティ政策の認知度を尋ねたところ、「知っている」と回答した方は16.8%であり、55.6%は「全く知らない」と回答しており、コンパクトシティ政策に関する認知度が低い現状が明らかになった。

図-3 転居先を自由に決められる場合の転居先

図-4 現在の居住地

図-5 住みたいところに住めない要因

3.都市構造評価指標の整理
既存の都市構造評価で用いられている指標を整理するため、25の研究等のレビューを行った。その結果、ⅰ)人口密度が一定値以上の面積を基礎とする指標(DIDなど)、ⅱ)都市機能へのアクセス性、交通施設の拠点性を示す指標(施設からの一定距離の人口カバー率など)、ⅲ)生活サービス施設の利便性を示す指標(施設の人口カバー率など)、ⅳ)都市の形状を考慮する指標(人口集積地の分布を示す「標準距離」など)、に分類できた。

4.今後の取り組み
簡易かつ分かりやすい都市構造の評価手法の構築を行い、その実用性の検証を進めているところである。

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0903都市及び地方計画
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