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レーダ雨量計による降雨観測

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2019-03-28 更新(河川情報センター)

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レーダ雨量計による降雨観測

1966年に群馬県の赤城山にXバンドレーダが設置され、建設省 土木研究所(当時)による「レーダによる降水量観測に関する研究」が開始されました。1976年には日本で初めて雨量観測を目的としたCバンドレーダ雨量計(赤城山)が設置され、以来、現在までにCバンドレーダ雨量計26基(うち16基がMP化されている。 2019年4月現在)、XバンドMPレーダ雨量計39基が全国に配置され面的な降水量分布の把握に活用されています。
また、2003年には全国26基のCバンドレーダ雨量計の連続的な合成と地上観測雨量を用いた補正による、レーダ雨量計の全国合成処理が開始され、Cバンドレーダオンライン合成雨量として川の防災情報で広く一般に提供されるとともに、河川管理や道路管理の実務に活用されています。2016年にはXバンドMPレーダ雨量計とCバンドMPレーダ雨量計の合成処理が開始され、XRAIN(CバンドMPレーダ・XバンドMPレーダ合成雨量データ)として1分毎の詳細な情報提供が行われています。
MPレーダは2つの偏波を使うことで、従来の単偏波観測よりもばらつきの少ない、より正確な雨量観測が可能で、かつ地上雨量による補正が不要であることから、リアルタイムに面的雨量情報の提供ができます。都賀川水難事故(2008年)等をきっかけとして、都市域での時間的・空間的に集中した豪雨を把握する技術としてXバンドのMPレーダが実用化され、その後、観測範囲が広いCバンドレーダのMP化も順次進められています。

レーダ雨量計による降雨観測
レーダ雨量計サイト(八本木山2018/04) >  解析・合成処理局(関東・近畿) >  Web

【図1】 レーダ雨量情報の流れ

 

【図2】 Cバンドレーダ(左)及びXバンドMPレーダ(右)雨量計の配置
(青円:MPレーダ定量観測範囲、赤円:非MPレーダ定量観測範囲、 2019年4月現在)

 1.レーダ雨量計の観測原理

レーダ雨量計は、回転するアンテナから指向性を持ったパルス状の電波を発射し、雨滴にあたり散乱して返ってくる電波を再び同じアンテナで受信し、以下のような仕組みで、降雨の強度と分布を観測します。
なお、現在主流となっているMP(マルチパラメータ)レーダと、従来の非MPレーダ(単偏波レーダ)では、発射する偏波の数や観測できるパラメータが異なります。
・電波の往復する時間から距離を測定
・アンテナの向きから方位を測定
・受信電力(返ってくる電波の強さ)や位相差(2種類の偏波の波形のズレ)から雨量強度を測定


【図3】 MPレーダと非MPレーダ

 2.レーダ雨量計の観測範囲

Cバンドレーダ雨量計は、半径200km(あるいは300km)、XバンドMPレーダ雨量計は半径80kmの範囲まで観測を行っています。
その内、出水期において、上空から落下する氷の粒が融けて雨の粒に変わる高さ(融解層)よりも低い高度の雨量を観測できる範囲(定量観測範囲:Cバンド半径約120km、Xバンド半径約60km)は、定量的雨量観測が可能となるよう、機器の設計と運用が行われており、それ以遠は定性的な観測範囲としています。

 3.受信電力Prと位相差Φdpの測定

レーダ雨量計は、降雨を直接観測する地上雨量計とは異なり、雨量強度に応じて変化する受信電力Pr(mW)や偏波間位相差φdp(deg)を測定します。レーダ雨量計で観測される受信電力および偏波間位相差は、観測メッシュごとに5分間または1分間の平均値で表されます。 一般的にレーダ雨量計では、ひとつの極座標メッシュ内で、1回転毎に、複数のパルス信号が平均されます。一定時間内に、できるだけ多くの信号を平均することが、降雨観測精度の向上につながります。


【図4】 レーダ雨量計と降雨との関係


【図5】レーダ雨量計観測(極座標)メッシュ
(Cバンド:256セクタ,200レンジ/300km
CMP:512セクタ,1200レンジ/300km
XMP:300セクタ,534レンジ/80.1km)

 4.レーダビームの遮蔽

レーダ雨量計で精度の高い降雨観測を行うためには、できる限り低い高度で観測することが望ましいのですが、観測仰角をあまり低くすると、山岳等によるレーダビームの遮蔽が生じます。
山岳等による遮蔽の影響があると、その分だけ雨滴に達する電波と反射電波の量が減少し、遮蔽がある割合を超えると、受信電力(または位相差)と雨量強度との関係が成り立たなくなって、適切な降雨観測ができなくなります。
なお、MP化したレーダ雨量計による偏波観測(位相差による雨量強度算出)では、反射電波の強さによらず、2種類の偏波の位相差から雨量を算出しているため、遮蔽域の観測値をそのまま使っていますが、受信電力を用いた雨量強度算出では、遮蔽域に対して受信電力を割り増しする遮蔽補正を行っています。


【図7】 レーダビームと山岳遮蔽の関係

 5.非降水エコー

レーダ雨量計の観測値には、雨滴からの反射によるものの他に、山や建物、海面、飛行機、船等からの反射によるものが含まれることがあります。これら非降水エコーのうち、地物によるものをグランドクラッター、海面によるものをシークラッターと呼びます。観測仰角を低くする程グランドクラッターやシークラッター等の成分は多くなります。
降雨観測を精度良く行うためには、グランドクラッターを除去する必要があります。この除去にはいくつかの方法がありますが、現在では、ほとんどMTI(Moving Target Indicator)方式による除去(以後MTIという)が行われています。
MTI方式は、非MP化レーダでは降水エコーと地形エコーの受信電力の振幅変動に差があることを利用して(ノンコヒーレントMTI)、グランドクラッターを除去しており、MP化したレーダでは地形と降雨からの反射エコーに、ドップラー周波数の違いがあることを利用して(コヒーレントMTI)除去しています。
MTIによりある程度までのグランドクラッターを除去することができますが、同時に降雨の成分にも影響を与えます。また、大きなグランドクラッターのあるところでは、降雨の最少検出限界が大きくなること、グランドクラッターと重なった部分の降雨強度が過大に評価される場合があることに注意する必要があります。
非降水エコーには、上記のような観測エリア内にある物によるエコーの他に、逆転層等による電波異常伝播によるものや、電波干渉、2次エコーなど、さまざまな要因によるものがあることが知られています。

 6.運用仰角

レーダ雨量計の観測仰角は、以下の点を考慮して、できる限り低くなるよう設定します。
(1)山岳等でレーダビームが大きく遮蔽されないこと
(2)レーダビームが雨雲より下にあること ※雨雲の高さは地域や季節によって異なる
(3)強いグランドクラッターができるだけ発生しないこと ※グランドクラッター強度には時間・季節変動がある
運用仰角数は、配信時間間隔と、観測範囲、繰り返し周波数、アンテナ回転速度等をもとに、レーダ雨量計毎に設定されています。

【表1】 レーダ雨量計の観測仰角

XRAINでは、各仰角の観測データを用いて合成を行っていますが、Cバンドレーダオンライン合成では、レーダ単位のデータを元に合成するため、複数の仰角による観測を行った場合、仰角毎の受信電力Prを雨量Rrに変換した後に合成(仰角合成)して、一枚の観測画面を作成しています。
仰角合成の概念図を図8に示します。
この例では、低仰角で観測した場合、レーダサイトに対して北東方向に山岳があり遮蔽域となっているため、この領域は高い仰角のデータを適用して合成を行っています。


【図8】 仰角合成の概念図

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