2022-07-05 建築研究所
これまで、建物の省エネ性の評価は、最寄りの気象観測点のデータを使用していました。一方、ArcClimate を用いると、指定した任意の緯度・経度で気象データを取得できます。これにより対象の建設地点において地域特性を活かした設計が可能となります
建築研究所は、設計用気象データ作成ツール「ArcClimate(アークラメイト)」を開発しました。
これは、建築物の環境設計に用いることを目的とした設計用気象データの取得ができる計算プログラムです。このデータは、例えば、建築物における空調エネルギーのシミュレーションなどに活用できます。
これまで、これらのシミュレーションは、拡張アメダスデータ等、最寄りの気象観測地点におけるデータを用いて行っていました。
対して、本プログラムは、空間的な補間処理を行うことによって、指定した任意の緯度・経度におけるピンポイントの地点において、設計用の気象データ(※)を取得することができる画期的なものです。
※ 1年間の毎時の気温、湿度、日射量、大気放射量、風向・風速、気圧、降水量など当研究所環境研究グループでは、この「ArcClimate(アークラメイト)」を下記のサイトで公開することといたしましたので、お知らせします。
公開サイト
https://github.com/DEE-BRI/arcclimate
※1 計算方法の整備は、国交省の補助事業である建築基準整備促進事業E12「エネルギー消費性能の評価の前提となる気候条件の詳細化に向けた検討」(令和元年~2年度)の下、地方独立行政法人北海道立総合研究機構建築研究本部北方建築総合研究所および国立大学法人鹿児島大学との共同研究として実施されました。本計算プログラムはそこで開発された計算方法に則って開発されています。
※2 本プログラムでは無償かつ商用利用可能なMITライセンスを設定しています。CAD等の他のプログラムとの連携など、本プログラムの二次利用も可能ですので気軽にお問い合わせください。
(内容の問合せ先)
国立研究開発法人 建築研究所
環境研究グループ 三浦
ArcClimate(アークラメイト)の概要
・気象庁の MSM データを 1 時間ごとに整理し、そのデータを統計処理することでデータを作成しています。
・絶対湿度・日射量・大気放射量のデータは、既往研究をもとに独自のアルゴリズムで整理します。
・メッシュデータから任意の地点におけるデータを空間補間する方法を開発しました。標高補正を行うにあたって、国土地理院のデータを活用しています。
・設計用データに変換する方法は、拡張アメダスで採用されている方法を参考に開発しています。
・建築基準整備促進事業 E12 で開発した計算方法を束ねて1つのプログラムとし、データ・ストレージの整備などを行い、誰でも使用可能な形に整備しました。
・これにより、誰でも、任意の緯度・経度を入力すると、設計用の気象データが取得できるようになります。
・プログラムは建築研究所・環境研究グループの github ページで公開しています。
・緯度・経度を指定することで、年間の毎時刻のデータが取得できます。それらをグラフ化することで、例えば次のような図を容易に作成することができます。