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AI を活用した画像認識型交通量観測の導入

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国総研レポート2020(研究期間 : 平成 30 年度~)
国土技術政策総合研究所 道路交通研究部 道路研究室
研究官 里内 俊介
交流研究員 林 泰士
主任研究官 松田 奈緒子
室長 横地 和彦

(キーワード) 交通調査,AI,CCTV

1.はじめに
国土交通省では、これまでの5年に一度の全国道路・街路交通情勢調査を主体とした調査体系から、平常時・災害時を問わない新たな道路交通調査体系への移行を目指し、ICTをフル活用した常時観測体制の検討を進めている。
国総研では、この常時観測体制に向けた取組みの一つとして、既存の設備が活用でき、歩行者など車両以外の観測へも応用が期待される道路管理用の監視カメラ(CCTV)映像から、人工知能(AI)を活用した画像認識による交通量の観測(以下、「AI交通量観測」という。)(図-1)の実用化に向けた研究を行い、観測装置の機器仕様(案)を作成した。AI交通量観測の導入により、直轄国道において、トラフィックカウンター(以下、「トラカン」という)のみで実施されていた約2割の常時観測区間を、最大で約5割に拡大する見込みである(図-2)。
本稿では、AI交通量観測技術のヒアリング結果、サンプル映像による観測精度の検証結果及び機器仕様(案)の概要について述べる。

図-1 AI交通量観測の概要

図-2 常時観測カバー率の向上(直轄国道)

2.AI交通量観測技術のヒアリング結果
AI交通量観測装置の機器仕様(案)作成のため、AIによる画像認識の技術開発を行っている国内の民間企業9社を対象とし、観測可能車線数等の技術的要件のほか、観測精度等の性能的要件についてヒアリング調査を行った。調査結果の概要を表-1に示す。ヒアリングにより、自動車の車種(大型、小型)の分類や歩行者の観測は現行の技術で概ね可能であるが、二輪車(自転車、バイク)の観測には課題が残ることがわかった。また、観測精度については、日中の明るい時間帯の精度確保は可能であるが、夕方、夜間の暗い時間帯は精度確保が難しいとの回答であった。その他、精度確保のためカメラ毎の追加学習を行う必要があることや、フレア(ヘッドライにより映像が塗りつぶされる状況)やオクルージョン(車両の重なりにより対象が見えない状況)が観測精度に影響するとの回答を得た。

表-1 AI交通量観測技術のヒアリング結果(9社)

3.サンプル映像による観測精度の検証結果
ヒアリング対象者のうち6社の技術により、CCTVのサンプル映像を用いてAI観測を実施し、観測精度の検証を行った(写真-1)。サンプル映像は2地点の4時間帯、計8時間分とした。映像にはヘッドライトによるフレアなど、精度確保が難しいとされる状況のものも含まれている。
自動車全体(6社実施)及び大型車のみ(4社実施)の観測精度の検証結果を図-3に示す。なお、6社のうちC、Fの2社はサンプル地点の別映像による追加学習を行っている。自動車類全体の検出率で比較すると、朝、昼の各時間帯において観測精度が誤差±10%以内となったのは、地点1で5/6社、地点2では4/6社と高い割合であり、十分な精度が得られているといえる。一方、夕方、夜の各時間帯では、地点1では3/6社、地点2では2/6社と低い割合になっており、精度確保が困難であった。また、追加学習を行った2社においては、学習後に観測精度の向上がみられた。

写真-1 AI交通量観測技術の一例

図-3 サンプル映像による観測精度

大型車のみの観測精度については、全社においてほぼ観測精度が確保されていないが、こちらも追加学習により精度の向上がみられた。

4.AI交通量観測装置の機器仕様について
ヒアリング結果及びサンプル映像による観測精度の検証結果をもとに作成したAI交通量観測の観測装置機器仕様(案)を表-2に示す。

表-2 AI交通量観測装置機器仕様(案)概要

車線数については、4車線以下のみを対象とし、観測精度については、ヒアリング結果及び検証結果より、夕方や夜の時間帯において精度確保が難しいことが判明したため、日中の7~16時のみ観測精度の確保を求めるととした。また、車種分類については、検証結果より大型車の判別が難しいことが想定されるため、自動車類全体の交通量のみ±10%の観測精度を求めることとした。ただし、精度は求めないものの、今後の活用を見込み、小型車、大型車(バス、貨物)、自転車、自動二輪車の分類が可能であることを仕様として定めた。

5.おわりに
本研究において、AI交通量観測の現状や導入課題を整理し、機器仕様(案)を作成した。現在、本仕様に基づき、各地方整備局においてAI交通量観測装置の導入が進められているところである。
今後の課題として、精度確保が難しい夕方、夜の時間帯や車種分類について、観測精度の向上を図っていくとともに、補正による対応方法を検討していく必要がある。

☞詳細情報はこちら
1)画像認識型交通量観測装置 機器仕様書(案)(令和元年6月)
http://www.mlit.go.jp/tec/it/denki/kikisiyou/touitusiyou_18gazoutorakanR0106.pdf

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