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交通安全対策への ETC2.0 プローブ情報の 効果的な活用方法の提案

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(研究期間 : 令和元年度~)
国総研 道路交通研究部 道路交通安全研究室
主任研究官 掛井 孝俊
研究官 川瀬 晴香
交流研究員(博士(理学)) 郭 雪松
室長(博士(工学)) 小林 寛

(キーワード)ETC2.0プローブ情報,ドライブレコーダー,可搬型路

1.はじめに
昨今、子供が犠牲になる事故や高齢運転者による事故が相次いで発生しているなど、交通安全対策の効果的な推進が喫緊の課題となっている。国総研では、これまでに、車両の動き(位置、速度、前後加速度等)を広域に収集できるETC2.0プローブ情報を活用し、潜在的な危険箇所を抽出する手法の開発に取り組んできた。
しかし、ETC2.0プローブ情報の分析手法の効率化や精度向上、データサンプル数の確保など、「質」と「量」の面でさらなる工夫の余地がある。
そこで、本稿では、交通安全対策へのETC2.0プローブ情報の効果的な活用方法の提案として、「ドライブレコーダーデータの分析結果を活用したETC2.0プローブ情報の危険事象の見極め方法の提案」と「ETC2.0可搬型路側機の効果的な活用に向けた研究」を紹介する。

2.ドライブレコーダーデータの分析結果を活用したETC2.0プローブ情報の危険事象見極め方法の提案
国総研では、ETC2.0プローブ情報の急減速データ(例えば前後加速度-0.3G以下)を分析し、潜在的危険箇所を抽出する手法を開発してきた。しかし、図-1に示すように、この急減速データは単純に一定値以下の前後加速度を示した減速行動を取り出したものであるため、その中には、危険事象以外の行動(例えば赤信号手前の単なる急ブレーキ等)も含まれている。そのため、分析精度の向上を図るには、ETC2.0プローブ情報の急減速データが、危険事象か非危険事象かを効率的に見極めることが必要となる。
そこで、本研究では、加速度データを記録するドライブレコーダー(以下、ドラレコ)を活用し、ドラレコの前方映像の目視確認から、図-2に示すように、運転挙動が危険事象か非危険事象かに判定した上で、発生場所の道路構造や急減速データ(ドラレコに記録されている前後加速度の値)等との照合を行った。
その結果、図-3に示すように、前後加速度-0.3G以下の場合では、単路部及び交差点内部においては、概ね9割の確率で危険事象があったと考えられることがわかった。一方で、交差点流入部については、非危険事象が概ね7割含まれることがわかった。図4は、交差点流入部において、前後加速度別に危険事象・非危険事象の割を示したものである。この図からは、交差点流入部では、前後加速度が-0.6G以下であれば、約8割が危険事象であると見極められる一方で、前後加速度が-0.25G~0.6Gの範囲では、約4~6割の非危険事象が含まれることがわかる。このため、今後は、停止線の有無や車線数などの道路構造から危険事象の見極め方法を開発する予定である。

図-1 ETC2.0プローブ情報の急減速データが抱える課題

図-2 ドラレコデータの分析による危険事象の判定と道路構造との関係性整理

図-3 急減速発生位置別の危険事象・非危険事象の割合
(前後加速度-0.3G以下の場合)

図-4 交差点流入部における前後加速度別の危険事象・非危険事象の割合

3.ETC2.0可搬型路側機の効果的な活用に向けた研究
ETC2.0プローブ情報は、主に高速道路や直轄国道上に設置された路側機を、専用の車載器を搭載した車両が通過することでデータが収集される。このデータには、車両の位置や時刻、走行速度等を記録する「走行履歴データ」と、前後加速度や左右加速度等を記録する「挙動履歴データ」とがある。しかし、現状の路側機の配備状況では、路側機までの距離が遠いエリアでは、蓄積容量の関係もあり、分析に必要な挙動履歴データが収集できていないことがある。
そこで、本研究では、図-5に示すような可搬型路側機を一時的に設置することで、必要なデータ取得が可能になると考え、実際に可搬型路側機が設置されたエリアを対象とし、その設置効果を分析した。
具体的には、走行履歴データと挙動履歴データについて、50mメッシュ単位でカーネル密度推定を実施してそれぞれの密度推定値を求め、50mメッシュ単位で得られたそれぞれの値から「走行履歴密度推定値あたりの挙動履歴密度推定値」算出した。この値を設置前後で比較したものを図-6に示す。可搬型路側機の設置後、対象エリアにおいて挙動履歴密度推定値の比率が高くなっていることがわかる。すなわち、可搬型路側機を設置することで、これまで取得できていなかった挙動履歴データが新たに取得できていることが示されている。また、設置前の段階で、このような密度推定による分析を広域に行うことで、挙動履歴密度推定値の比率が相対的に低い地域が明らかとなり、可搬型路側機の効果的な設置エリアの検討が容易となる。今後は、効率的な設置箇所や方法、必要なサンプル数確保のための設置期間等について、詳細な検討を進めていく予定である。

図-5 ETC2.0可搬型路側機(一時的な設置が可能)

図-6 走行履歴密度推定値あたりの挙動履歴密度推定値(可搬型路側機設置前後の比較)

4.おわりに
引き続き、ETC2.0プローブ情報の「質」と「量」の面で分析上の工夫を図り、全国の交通安全対策の立案や評価等への活用を進めていく所存である。

☞詳細情報はこちら
道路交通安全研究室HPhttp://www.nilim.go.jp/lab/geg/index.htm

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