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既存建築物の長寿命化改修を目的 とした外装・防水層の長寿命化に 資する既存RC部材の評価技術の開発

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国総研レポート2020(研究期間:平成30年度~)
国土技術政策総合研究所 住宅研究部 住宅生産研究室
主任研究官(博士(工学)) 根本 かおり
主任研究官(博士(工学)) 三島 直生
建築研究部 材料・部材基準研究室
室長(博士(工学)) 脇山 善夫
主任研究官(博士(工学)) 土屋 直子

(キーワード) RC造建築物,外装,屋上防水,改修工事,品質確保,調査・診断技術

1.はじめに
本研究では、外装・屋上防水の補修・改修工事において既存部材(コンクリート躯体、モルタル、既存仕上げ)の改修時の要求性能を明確化し、診断基準の整備を行い、改修後の外装・屋上防水の品質確保ならびに耐久性の向上を図ることを目的とした検討を行う。建築物が竣工してから除却に至るまでの供用期間は、外装材は美観を保ち、かつ雨漏り等もなく快適であってほしいと思う。しかし日々、日射や雨・風・雪などの外気環境に曝される外装・屋根防水は、紫外線や温湿度変化、汚染物の付着により経年劣化が躯体よりも短期間で起こる。このため建築物の快適な状態を維持するには、定期的な点検や調査・診断、改修工事等の維持管理(図-1)を適切に実施していくことが必要となる。

2.研究の概要
検討対象は、屋上防水は改修された屋上防水層(以降、改修屋上防水層と呼ぶ)、外装は塗装仕上げ、ピンネット工法で改修した外壁(以降、ピンネット改修外壁と呼ぶ)ならびにシーリング目地とする。改修屋上防水層は、診断基準の整備のため、各種屋上防水材(露出アスファルト防水、保護防水、シート防水、ウレタン塗膜防水およびFRP防水)ごとに、改修後に防水層の耐久性に影響する要因や、改修前の屋根防水の劣化状態を判断基準となるよう画像を整理するほか、建築物の長寿命化に向けた新築時の屋上防水の設計要件の整理を行う。
外装仕上塗材仕上げは劣化に伴う塗替え改修工事に関して、劣化した既存仕上塗材の処理方法(例えば高圧水洗工法や水洗い工法)の違いが改修後の新規仕上塗材の耐久性に及ぼす影響や、建築物の供用期間中に複数回必要となる塗替え改修工事が部材の美観や性能を確保して実施できる回数の限界について実験により検討する。また、仕上塗材仕上げの劣化診断の誤差や補助的役割を目的として、AI技術の活用を検討する。
ピンネット改修工法は建築物に適用されるようになってから約30年経過しているが、劣化による事故が少なく、調査技術や診断方法、再改修工事への対策は遅れている。このためピンネット改修外壁が劣化したケースを想定し、調査技術および診断方法について試験体を用いた検討を進める。外壁シーリング目地は、改修工事による要求性能を満たすための既存シーリング目地の処理方法について検討する。

図-1 建築物供用期間の維持管理

3.今年度の研究成果について
改修屋上防水の検討では、改修後に防水層の耐久性に影響する要因を図-2とし、これと表-1に示す改修後の屋根防水の品質確保の観点から設定した屋上防水層の経年による劣化に関する判断基準に基づき画像を整理した(写真-1)。
外装仕上塗材仕上げの実験による検討は図-3のように進めている。また、外装仕上塗材仕上げの劣化診断AI技術活用のために、実建物の外装複層塗材Eの塗膜劣化画像を大量に撮影し、割れの等級(JIS K5600 8-4)に従って分類したものをAIに学習させる作業を行っている(写真-2)。本年度は検証まで行い今後の適用可能性を確認する。
ピンネット改修外壁は、試験体を用いて外壁改修前調査として実施する非破壊調査および破壊調査の
実施方法と有用性について検証実験を行った。ピンネット改修外壁は、既存仕上げ層をアンカーピンと弾性接着剤でコンクリート躯体に固定し、剥落防止を目的として表面から補強繊維や新規仕上げで覆うため、既存仕上げ層やコンクリート躯体に生じる劣化が外観目視調査や打診検査では検知しにくいとされている。今年度の検証実験で、新規仕上げ層の劣化、ピンネット改修層の不具合、既存仕上げ層の不具合を各調査方法でどの程度検知できるのか確認し(図-4)、新規仕上げ材の種類によって、外観目視検査が有効なもの、打診検査が有効なもの、破壊検査までに必要なものがあることを確認した。ただし、破壊検査は外装材のみならずコンクリート躯体にも
負荷が大きく掛かることが確認されたため、次年度以降は破壊検査を適用する劣化状況について議論を行うことを予定としている。シーリング目地については、暴露試験を昨年度から継続して行っている。

図-2 改修後に防水層の耐久性に影響する要因

表-1 既存の屋根防水の判断基準

写真-1 アスファルト防水の劣化に関する判断基準例

図-3 外装材の長寿命化改修工事のための実験


写真-2 AI学習用外装用仕上塗材仕上げの劣化度画像例

図-4 ピンネット改修外壁試験体を用いた検証実験
※ 図-4は、1500㎜×1500㎜の壁試験体中央部に設けた900㎜×900㎜の模擬剥離箇所をピンネット工法で改修したものについて、打診検査と赤外線法で調査した結果を示している。

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