土木学会論文集D2(土木史)Vol.73,No.1,pp.54-62,2017.
出村 嘉史 岐阜大学 工学部社会基盤工学科
抄録
木曽川上流支派川改修事業は,その後の中小河川改修事業へつながる河川整備史の中で画期的な出来事であったのみならず,それまで輪中によって構成されていた水利慣行を乗り越えて,一つながりに管理される近代的な農業水利系統へ地域を転身させた事例である.広大で理詰めなプランが県の技師によって作成されたことを契機に組織の統合的動きがはじまるが,既存組織の連携によって無理のない系統を新たに形成する方針へシフトした.この間に地主層は,因襲的問題を脱し難かった状況から,上流及び下流が連合して全域にある程度の責任を持つ姿勢へ転換している.本研究はこの事象を対象とし,広域的な水利のシステム形成において,関係人物とその動きを整理し,彼らが大きな組合の連合による基盤づくりへいかにして移行することができたのかを解明する.