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2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題

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2018-07-24 資源エネルギー庁

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日本における再生可能エネルギー(再エネ)の主力である太陽光発電は、2012年に固定価格買取制度(FIT)が導入されて以降、加速度的に増えてきました(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)。この太陽光発電に使用する太陽光パネルは、製品寿命が約25~30年とされています。そのため、FIT開始後に始まった太陽光発電事業は2040年頃には終了し、その際、太陽光発電設備から太陽光パネルを含む廃棄物が出ることが予想されています。

太陽光をはじめとした再エネを長期的に安定した「主力電源」(電力をつくる方法)のひとつにしていくためには、こうした廃棄物問題を避けて通ることはできません。どのような問題が懸念されており、どのような対策を行うべきなのか、太陽光パネルの廃棄問題について考えてみましょう。

太陽光パネルの廃棄に関するさまざまな懸念

太陽光発電事業は、ほかの発電事業と同じように長期的におこなわれる事業ですが、その一方、ほかの発電事業とは異なるいくつかの特色があります。ひとつは、参入障壁が低いため、従来の発電事業者だけでなく、さまざまな事業者が取り組みやすく、なおかつ、事業の途中で事業主体が変更されることが比較的多くあるということです。ふたつめは、太陽光パネルの種類によって異なる有害物質が含まれているということです。このような特性を持つことから、将来の太陽光発電設備の大量廃棄をめぐっては、次のような懸念が広がっています。

①放置・不法投棄されるのでは?

まず、太陽光パネルが適切に廃棄されないのではないかという懸念です。

建物に設置された太陽光については建物の撤去の際にいっしょに廃棄されるのが一般的であること、また借地でおこなわれている事業用太陽光発電については借地期間終了の際に現状復帰が義務付けられているのが一般的であるなどのことから、放置される可能性は低いと考えられています。

問題となるのは、事業者が所有している土地でおこなわれている事業用太陽光です。実質的に事業が終了していても、コストのかかる廃棄処理を行わずに、有価物だとしてパネルが放置される可能性があります。

また、いずれのケースでも、廃棄の費用を捻出できないあるいは準備しなかったなどの場合、他の土地に不法投棄されるのではないかという懸念もあります。

こうした放置や不法投棄をふせぐためには、電気を売って得た収入の一部を、廃棄などの費用としてあらかじめ積み立てておくことが有効です。しかし、実際に積み立てをおこなっている事業者は少ないのが実態です。

事業者に、将来的な廃棄を想定して廃棄・リサイクル費用の確保をしているか尋ねた際の回答を示したグラフです。

②有害物質が流出・拡散されるのでは?

太陽光パネルには、パネルの種類によって、鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質が含まれており、それぞれ適切な処分方法があります。

ところが、含まれる有害物質の情報が廃棄物処理業者に伝わっていないために、適切な処分が行われていないケースが見られます。たとえば、本来は水漏れをふせぐ設備のある「管理型最終処分場」という場所での埋め立てが望ましいのに、そうではない処分場に埋め立てている、といったケースです。

こうした有害物質の流出・拡散が懸念されるケースが起こる背景には、そもそも廃棄物を出す事業者が有害物質の含有を知らなかった、あるいは認識はしていたが確認していなかったというケースもあります。また、太陽光パネルメーカーも積極的に情報開示をおこなっていないケースもあります。

③最終処分場がひっ迫するのでは?

同時期に設置された太陽光パネルは、いずれ大量廃棄の時期を迎えます。ピーク時には、使用済み太陽光パネルの年間排出量が、産業廃棄物の最終処分量の6%におよぶという試算もあります。そのため、一時的に最終処分場がひっ迫する懸念があります。

太陽光発電設備の出荷推移(MW(モジュール)ベース、出荷先別)
2008年から2016年までの太陽光発電設備の出荷推移を示したグラフです。

(出典)JPEA統計資料よりNRIが作成

太陽電池モジュール排出見込量
太陽電池モジュールの排出見込量を、寿命20年・25年・35年別に示したグラフです。

(出典)環境省HP「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)」(PDF形式:3MB)

また、太陽光パネルは、その多くはガラスで構成されていますが、リサイクルの時に価格がつきやすい金属(アルミ、銀など)も含まれています。リサイクルを低コストで効率的におこなうことができれば、資源が有効に利用され、最終処分場のひっ迫の問題も緩和する可能性があります。

いま検討されている、太陽光パネルの適正な廃棄をうながす取り組み

こうした懸念に対して、現在、リサイクルを含む太陽光パネルの適正処理を進めるために、次のような具体的検討が進められています。

事業者がきちんと廃棄できるしくみ作り

太陽光パネルの廃棄処理は、ほかの事業とおなじように、発電事業者や解体事業者が責任をもつことが原則です。だからこそ、FITの再エネ買取価格は、廃棄に必要な費用を盛り込むかたちで設定されています。一般的にはあまり知られていませんが、これはFIT制度が創設されて以来続けられてきた価格設定の考え方です。

しかし、廃棄する時点で事業者の資金力が不十分であるといった場合には、事業終了後の太陽光パネルの放置や不法投棄のリスクが高まります。そのため、すでにFIT買取価格の中から事業者に廃棄費用を支払っていることも踏まえながら、事業者による廃棄などの費用の積み立てを担保するために必要な施策について、検討を開始しています。たとえば、第3者が外部で積み立てるしくみ作りなどが考えられます。

また、すぐに着手できることとして、現在のFIT制度を強化する検討も始まっています。具体的には、FITの認定を受けた事業者に、廃棄などの費用に関する積立計画・進捗状況の報告を義務化して、その状況を公表するとともに、必要に応じて報告徴収・指導・改善命令をおこなうことが検討されています。

情報不足を解消して有害物質を適正に処理

有害物質の適正処理には、情報不足が課題でした。このため、2017年12月に太陽光発電協会が策定した「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」にもとづき、太陽光パネルメーカーおよび輸入販売業者が、産廃事業者などに積極的に情報提供をおこなっていくことが望まれます。現在、一部の事業者が対応していますが、今後はさらに多くの事業者の対応が必要です。

太陽光パネルのリユース・リサイクル促進

最終処分場のひっ迫を緩和し、資源の有効活用を図るためには、太陽光パネルのリユース・リサイクルを促進する必要があります。ただし、現実にはまだ大量廃棄は発生していないことから、リユース・リサイクル・処分の実態が把握できていません。まずは正確な実態を把握するために、コストも含めた基礎的で包括的な実態調査を、環境省・経済産業省共同でおこなうことが求められています。

この実態調査から、将来出てくると想定される廃棄物の量や、リサイクルや廃棄処理の費用、リサイクルされた材料の需要動向などを把握し、リサイクル制度の必要性について検討を進めていきます。

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省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課

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長官官房 総務課 調査広報室

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0803資源循環及び環境
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