2021-02-18 運輸安全委員会
概要
京浜急行電鉄株式会社の青砥駅発三崎口駅行き8両編成の下り(快特)第1088SH列車は、令和元年9月5日(木)、京急川崎駅を定刻に出発した。子安駅~神奈川新町駅間を速度約120km/hで走行中、列車の運転士は、神奈川新町第1踏切道の特殊信号発光機が停止信号を現示しているのを認め、常用ブレーキを操作した後、神奈川新町駅の異常報知装置も動作していることを認めたため、非常ブレーキを操作した。その後、同踏切道内の列車進路上に進入してくる普通貨物自動車を認めたため、気笛を吹鳴するとともに列車防護無線の非常発報操作を行ったが、同列車は同貨物自動車と衝突し、同踏切道から約67m行き過ぎて停止した。
列車には、乗客約500名、運転士1名及び車掌1名が乗車しており、このうち乗客75名(うち、重傷者15名)、運転士及び車掌が負傷した。また、同貨物自動車には、運転者のみが乗車しており、運転者は死亡した。
この衝突により、列車は1両目から3両目が脱線し、車体及び機器の一部が損傷した。また、同貨物自動車は大破、炎上した。
原因:
本事故は、普通貨物自動車が神奈川新町第1踏切道内に進入し、同貨物自動車が列車の進路を支障したことに起因し、同踏切道の特殊信号発光機が停止信号を現示していたにもかかわらず列車が同踏切道までに停止できなかったため、同貨物自動車と列車が衝突したことにより発生したものと認められる。
同貨物自動車が列車の進路を支障したことについては、同踏切道内に進入を開始した後に、踏切警報器が警報を開始し、同貨物自動車が踏切を通過する前に遮断が完了したため、同踏切道内に停滞したものと認められる。
同踏切道内に停滞したことについては、同貨物自動車が交差点を右折して同踏切道に進入する際に、同貨物自動車の大きさに対して道路の幅が狭かったことから、通行に時間を要し、同踏切道内に停滞する要因となった可能性が考えられる。
なお、同貨物自動車の運転者は、通常使用する経路での運行ができなかったことが関与し、迂回しようとして市道浦島第152号を経由して本件踏切に至った可能性が考えられるが、通常と異なる経路を使用した理由については、同貨物自動車の運転者が死亡していることから、明らかにすることはできなかった。
同踏切道の特殊信号発光機が停止信号を現示していたにもかかわらず列車が同踏切道までに停止できなかったことについては、同踏切道の特殊信号発光機の動作を運転士が視認可能となる位置で、同踏切道までに停止するためのブレーキ操作ができなかったことによるものと考えられる。
同踏切道の特殊信号発光機の動作を運転士が視認可能となる位置で、ブレーキ操作ができなかったことについては、予期しないタイミングで停止信号を現示する特殊性がある特殊信号発光機に対し、即座に反応することは困難であったと考えられることに加え、特発(遠)の視認が可能となる位置において見通しが確認されていたものの、視認が可能となる位置以降は、架線柱等により、特発(遠)の明滅状態が瞬間的ではあるが断続的に遮られる場面があったことが関与し、特発の動作に気づくのが遅くなった可能性が考えられる。なお、本事故では、本件運転士が常用ブレーキを操作した時点で、速やかに非常ブレーキにより緊急停止の手配をとることで、衝突時の速度を低減できた可能性が考えられるが、非常ブレーキ操作による緊急停止の手配が遅れたことについては、特殊信号発光機の停止現示があったときは、「速やかに停止するもの」と定めの下、列車を停止させるときの、常用ブレーキまたは非常ブレーキの使い分けについては、速度・距離など状況を考慮し運転士の判断に委ねており、運転取扱実施基準及び電車運転士作業基準においても使用するブレーキについて明文化されていなかったことが関与した可能性が考えられる。
報告書番号:RA2021-1-2
発生年月日:2019年09月05日
区分:鉄道
発生場所:本線 神奈川新町駅構内(複線)[神奈川県横浜市]神奈川新町第1踏切道(第1種踏切道:踏切遮断機及び踏切警報機あり)
事業者区分:大手民鉄
事業者:京浜急行電鉄株式会社(法人番号 7010401009277)
事故等種類:列車脱線事故(踏切障害に伴うもの
都道府県:神奈川県
死傷者数:死亡:1名(運転者)、負傷:77名(運転士、車掌及び乗客75名)
公表年月日:2021年02月18日
報告書(PDF):公表/説明資料