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多様な入札契約方式の 現場への適用支援と改善

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国総研レポート2020(研究期間 : 平成 28 年度~)
国土技術政策総合研究所 社会資本マネジメント研究センター
社会資本マネジメント研究室
研究官 井星 雄貴
主任研究官 光谷 友樹
主任研究官 吉野 哲也
室長 中洲 啓太
交流研究員 石本 圭一
交流研究員 大野 琢海

(キーワード) 技術提案・交渉方式,事業促進PPP,災害時の随意契約,包括・個別二段階契

1.はじめに
我が国では、2014年6月の「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」の改正を契機に、工事の性格、地域の実情等に応じて、技術提案・交渉方式、事業促進PPP(Public Private Partnership)、災害時の随意契約等、多様な入札契約方式が適用されている。しかし、これらの方式は適用機会が少なく、地方整備局等の負担や不安が大きいことが、適用を拡大する上での課題となっている。
国総研社会資本マネジメント研究室は、地方整備局等での多様な入札契約方式の適用支援を通じて経験・ノウハウを蓄積し、後続手続やガイドラインに速やかに反映させている。本稿は、多様な入札契約方式の現場への適用支援と改善への取組を紹介する。

2.技術提案・交渉方式
技術提案・交渉方式は、2014年6月の品確法改正により規定され、施工者が設計段階から参画することにより、設計・施工の品質確保、生産性向上等を図る方式である。発注者が仕様やその前提条件を確定できない工事に適用する。
国土交通省は、令和2年1月現在、技術提案・交渉方式を13工事(表)に適用しており、内訳は施工者自らが設計する設計交渉・施工タイプ(図-1(a))2件、施工者が別契約の設計者に技術協力を行う技術協力・施工タイプ(図-1(b))11件となっている。技術提案・交渉方式は、施工契約締結(図-1、②)までに提案の反映、リスクへの対処、価格交渉、有識者会議への諮問等を行う。また、施工者の選定、提案の履行義務、リスク分担、工事費の透明性確保等の考え方が通常の設計・施工分離発注と異なるため、手続に慣れない担当者にとって負担が大きくなりやすい。国総研は、技術提案・交渉方式の手続の考え方が広く現場の担当者に理解され、効果的な活
用がなされるよう、適用支援を続けている(写真)。

表 技術提案・交渉方式の適用工事

図-1 技術提案・交渉方式の契約タイプ
※現場に応じた評価テーマ、条件設定の方法等を指導

(a)大樋橋西高架橋(中国) (b)城山トンネル(近畿)

3.事業促進PPP
事業促進PPPは、平成24年度から東北の三陸沿岸道路等の復興道路事業で導入され、その後、各地の大規模事業等にも適用されている。事業促進PPPを必要なときに速やかに導入するため、2019年3月に標準的な実施手法、業務内容、仕様書の記載例等を示した「国土交通省直轄の事業促進PPPに関するガイドラ
イン」が策定された。
国総研は、ガイドライン策定にあたり、事業促進PPP(8事務所11工区)の受発注者双方にヒアリングを行い、マネジメント業務を担う人材の確保、育成が主要な課題であることを把握した。そのため、ガイドライン策定後は、業務項目をプルダウン式で統一化した業務記録簿を活用した業務改善や、業務・工事の受注制限緩和による受注インセンティブの向上等について、地方整備局と連携しながら取り組んでいる。

図-2 事業促進PPPの体制

4.災害復旧における入札契約方式
(1) 災害時の随意契約等
災害復旧においては、2017年7月に策定された「災害復旧における適切な入札契約方式の適用ガイドライン」に基づき、随意契約等を適用している。しかし、現行ガイドラインは、測量・調査・設計業務に対応していない、本復旧段階の随意契約の適用条件が理解しづらいといった課題を有する。
国総研は、近年の大規模災害における入札契約方式の適用状況や、発注担当者から聞き取った課題等を踏まえ、業務・工事を問わず、土木構造物が本来有すべき機能・性能を回復するまでは随意契約の適用を基本とするよう整理を進めている(図-3)。

図-3 災害時における入札契約適用の考え方

(2) 包括・個別二段階契約
現在、災害協定、維持工事、一般土木工事等は、独立して公募するため、事務所の災害協定締結者(企業)が平常時に事務所管内で維持工事、一般土木工事等の受注経験がない例が生じている。国総研は、災害協定をより有効に機能させるため、災害協定を包括協定とし、災害協定締結者に維持工事等の個別発注を行う包括・個別二段階契約の実施手法(図-4)を試行導入に関心がある地方整備局と検討している。
包括・個別二段階契約の導入により、災害協定締結者が平常時から、発注者と顔の見える関係を構築し、地域・工事にも精通することで、より的確な災害対応が可能となる。また、包括協定の下、個別工事の長期的な受注見通しが得られ、24時間365日の厳しい対応が求められる維持工事の担い手となる企業の経営にも配慮した方式とも言える。

図-4 包括・個別二段階契約(案)

5.おわりに
国総研社会資本マネジメント研究室は、地方整備局等の業務改善に資する入札契約方式の適用支援を続け、更なる改善と適用拡大に向け研究を進める。

☞詳細情報はこちら
1) 「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」
http://www.nilim.go.jp/lab/peg/hatyusyasekininkondankai.html

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