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インフラ被災情報のリア ルタイム収集・集約・共 有技術の運用状況報告

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国総研レポート2020(研究期間:平成26年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 防災・減災研究推進本部
防災・減災研究推進本部
社会資本マネジメント研究センター 国土防災研究官 植田 彰  情報研究官 菅原 謙二
社会資本情報基盤研究室 主任研究官 大手 方如  交流研究員 細川 武彦
土砂災害研究部 土砂災害研究室 室長博士(農学) 中谷 洋明  主任研究官 野村 康裕
道路構造物研究部 道路地震防災研究室 室長博士(工学) 片岡 正次郎  研究官 大道 一歩

(キーワード) 防災・減災,初動対応,スペクトル分析情報,CCTVカメラ,SAR画像

1.はじめに
 地震発生直後に有用な情報の迅速な取得は容易ではない。適切な初動体制を構築するには、被害状況の把握が必須である。国総研では、迅速で的確な情報収集を目的にスペクトル分析情報、既設のCCTVカメラ及び合成開口レーダ(SAR)等を用いたインフラ被災情報のリアルタイム収集・集約・共有技術の開発に取り組んできた。(国総研レポート2019参照)
本稿では、本研究で開発した技術の運用状況を、2019年度に発生した災害事例を挙げて紹介する。

2.スペクトル分析情報の配信
国総研がSIPで開発した情報分析・意思決定支援システム1)は、地震発生直後に「スペクトル分析情報」を作成、自動配信するものである。過年度では地震発生から情報配信までに15分程度要しており、システム不具合等で配信不能となる事態も発生していたが、防災科研との共同研究により情報取得体制の改良を行うことで、2020年1月現在、地震発生後6分~7分でスペクトル分析情報の安定した配信が可能となっている。
図-1は2019年12月19日15時21分に青森県東方沖で最大震度5弱の地震が発生した際に配信したスペクトル分析情報の一部である(15時28分配信)。強震記録が得られた観測点の内、計測震度上位10地点の加速度応答スペクトルと被害発生ラインを比較することで、被害の規模感を把握することが可能となっている。スペクトル分析情報は、図-1の他、震度分布図や被害発生ラインの見方、近年の代表的な被害地震の特徴等を記載した3枚組のpdfで配信している。
今年度から、スペクトル分析情報は地方整備局の道路管理班等にも配信され、震後道路点検の必要性判断への活用が検討されている。

図-1 スペクトル分析情報(一部抜粋)

3.効果的にSAR画像を活用するための技術
防災担当者が衛星SAR画像を用いて崩壊地等を効率的に判読できるSAR画像判読支援システムの開発を行った。衛星SARを用いることで、悪天候時や夜間といったヘリ等による災害把握が難しい状況下であっても、安定的に広域の画像情報を得ることが可能となる。
土砂災害研究部では本システムを試行的に活用するなど、広域での豪雨災害や地震災害等の発生直後に大規模崩壊地等の緊急的なSAR画像判読を行ってきた。2019年10月の台風19号による豪雨災害(図2)や6月の山形県沖地震等の直後には、ヘリ等による現地調査に先立ち、衛星SAR画像による崩壊地判読を行った。その結果を本省、地方整備局に提供することで災害対応に活用された。
また、今後さらなる活用が想定される地方整備局の防災担当者に対して、SAR画像判読を実施できるよう全国で研修等を行い、システムの活用・操作方法を習得してもらうとともに、研修等で実際に判読を行うことで操作性や実効性等についての改善意見の収集等を行った。また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究を実施することで、緊急時にSAR画像等の提供を効率的に行うための検討や共同でのSAR画像判読及び結果の確認等を行った。その成果として、SAR画像による崩壊地等の判読のための技術的な知見をまとめた国総研資料の作成を行った2)。
このように衛星SAR画像を活用した緊急時における効果的な災害把握に向けた取り組みを進めている。

図-3 SAR画像判読での土砂災害把握事例
(2019年10月台風19号等(山梨県早川町))

4.CCTVカメラの試験運用状況
国土交通省がインフラ管理のため全国に設置しているCCTVカメラの映像は、発災直後の被害把握にも活用されている。しかし、被害状況を把握するためにはカメラを1台ずつ手動で操作する必要があり、時間を要する。そこで、地震発生直後に(a)カメラを自動旋回させパノラマ画像を作成する機能、(b)膨大な画像情報から被害の有無を自動で判定するための機能を実装したシステムの開発に取り組んでおり、今年度は試験運用と来年度の実運用に向けた開発を実施している。
(1)パノラマ画像を作成するシステムの試験運用
情報分析・意思決定支援システムは、地震発生時に市町村毎に震度を整理している。震度4以上の揺れを受けた市区町村に設置されているCCTVカメラを抽出し自動的にパノラマ画像を作成するシステムを試験運用している。今年度4月から2020年2月までに、パノラマ作成対象のCCTVカメラで震度4以上が観測された地震が3回発生しており、それぞれパノラマ画像が作成されている。例として、2019年12月14日10時38分に茨城県北部で地震が発生した際のパノラマ画像を図-3に示す。

図-3 パノラマ画像(例)

(2)実運用に向けた開発
実運用に向けて、パノラマ作成対象カメラの追加、ハードウェア増強、ログ管理機能強化、メール配信機能追加等の対応をした実運用システムを開発中である。8地方整備局のカメラを対象に2020年度から運用を開始する予定である。
また、AIを用いた被害画像検出の精度向上の研究を引き続き実施している。

5.おわりに
防災・減災研究推進本部では、本編で紹介した技術の一層の普及、改善を図っているところである。

☞詳細情報はこちら
1)情報分析・意思決定支援システム
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdr/14/2/14_333/_article/-char/ja
2) 国総研資料 No.1110 http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1110.htm

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