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常時微動観測による実桟橋固有周期の 推定手法に関する基礎的検討

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国総研レポート2020(研究期間 : 平成 30 年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 港湾研究部 港湾施設研究室
研究官 菅原 法城
室長(博士(工学)) 宮田 正史
主任研究官 福永 勇介

(キーワード) 桟橋、固有周期、常時微動観測、H/Hスペクトル比、変位軌跡、ねじり振動、せん断振動

1.背景・目的
桟橋の固有周期は耐震設計の重要なパラメータである。近年、既存施設の改良事例が増加しており、その中には実桟橋で常時微動観測を行い、固有周期設定の際の参考とする取り組みもある。しかし、常時微動観測を用いて固有周期を推定する際、周辺海域の波浪や潮位、渡版の拘束条件等が推定結果に及ぼす影響について実測に基づく検証がなされておらず、桟橋の振動モードなどについても不明点が多い。
本研究では、常時微動観測により実桟橋の固有周期を精度良く推定するための基礎的検討として、実桟橋で常時微動観測を行い、波浪や潮位条件が推定結果に及ぼす影響を評価した。また、渡版有無の条件の異なる隣接ブロックで観測を行い、渡版有無の影響を評価した。最後に、微動観測により実桟橋の固有周期の推定を行う際の留意点について整理した。

2.実施した観測内容及びその観測結果の整理
全国3地点(小名浜港、川崎港、神戸港)の実桟橋で常時微動及び桟橋前面水位の連続観測を行った。常時微動観測による桟橋固有周期の推定では、図-1に示すような桟橋上(観測点1)および背後地盤上(観測点2)の観測点で得られた微動観測記録の水平成分データをフーリエ変換し、得られたフーリエ振幅スペクトル(Hスペクトル)について、背後地盤上(観測点2)に対する桟橋上(観測点1)の比(H/Hスペクトル比)をとることで、桟橋の伝達特性のみを取り出し、桟橋固有周期を把握した。
本検討では、新たな試みとして、桟橋ブロックの多数の観測点位置での固有周期付近における変位軌跡を求めて、桟橋ブロックの振動モードを確認した。

図-1 桟橋での微動観測位置のイメージ

図-2 桟橋の伝達特性の求め方のイメージ

3.観測結果から得られた知見
潮位変化によるH/Hスペクトル比の全体形状及びピーク周波数の変化は確認されなかった。波浪の影響については、H/Hスペクトル比にピークとして現れる場合があったが、桟橋の固有周期が一般的に存在する帯域に比べかなり長周期側であったため、桟橋固有周期の推定には影響しないと考えられた。渡版の影響については、渡版が上部工の構成ブロックのうち数ブロックのみに設置されている程度の拘束が小さいケースでは、渡版の有無は推定結果に影響しないと考えられた。一方で、渡版が桟橋法線方向全面にわたり設置されており、渡版による上部工の拘束効果が大きいケースでは、渡版による拘束が桟橋の振動モードに影響し、せん断振動またはねじり振
動が生じていると変位軌跡の結果から考えられた。

☞詳細情報はこちら
1) 国総研資料 No.1082 http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1082.htm

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