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全国アンケートからみた「かわまちづくり」の現状と課題

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Current state of community development utilizing rivers and challenges ahead identified from a national questionnaire survey

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

まちづくり・防災グループ 研 究 員 阿部 充
まちづくり・防災グループ グループ長 阿 部 徹
まちづくり・防災グループ 次 長 竹内 秀二
主席研究員 水草 浩一
まちづくり・防災グループ 研 究 員 二瓶 智
まちづくり・防災グループ 研 究 員 佐治 史

国土交通省では、平成 21 年度の『「かわまちづくり」支援制度』創設以来、河川空間とまち空間を融合し地域の魅力向上につながる「かわまちづくり」の取組みを推進してきた。近年は道路や公園等の公共空間活用の動きも踏まえ、地域の人々が中心となり河川とまちに賑わいを創出しその活動が評価される事例が多くなってきた。しかし、成功事例がある一方、河川空間をうまく活用して取組めていない地域も散見される。
本稿では、全国の地域活性化等に対する河川の活用可能性とかわまちづくりの課題に関するアンケートの回答
結果から、潜在的にかわまちづくりの可能性がある箇所について、自治体の河川を活用するという認識が浸透していない傾向があることを把握するとともに、かわまちづくりの段階ごとの課題とその原因について把握し、今後のかわまちづくりの推進に向けた方策の検討を行った。

キーワード: かわまちづくり、アンケート調査、全国、自治体、課題、テキストマイニング

The Japanese Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism has been pursuing community development utilizing rivers ever since fiscal year 2009 when it established the system needed to support the effort to enhance the appeal of local communities by bringing riverfront and urban spaces together. In recent years, there has been an increasing number of initiatives led by community members recognized for creating vibrant riverfront and urban spaces, in keeping pace with a popular trend to effectively utilize roads, parks, and other public spaces. Unfortunately, in contrast to these successful examples, some communities fail to effectively use their riverine spaces.
This paper draws on responses to a questionnaire survey regarding the feasibility of river-based revitalization of Japanese communities, as well as the challenges of community development utilizing rivers. It points out that there is little awareness of trying to utilize rivers in areas that have potential for community development utilizing rivers. It also identifies challenges encountered in each stage of community development utilizing rivers and their causes before considering measures for boosting these initiatives.

Keywords: community development utilizing rivers , questionnaire survey, nationwide, municipalities, challenges,text mining

1. はじめに
国土交通省では、平成 21 年度の『「かわまちづくり」支援制度(以下「支援制度」という)』創設以来、民間事業者等による営業活動を伴う河川敷地の利用を可能にした『河川敷地占用許可準則(以下「準則」とう)』の改正(平成 23 年度)、これまで河川を意識していなかった人々や民間事業者等が改めて水辺の価値を見出し主体的に河川の魅力を活用した取組みを推進する『ミズベリング・プロジェクト』の開始(平成 26 年度)、民間事業者等がかわまちづくり計画作成に参入することが可能となる支援制度の改定(平成 28 年度)、全国の「かわまちづくり」の中から他の模範となる先進的な取組みを讃える『かわまち大賞』の創設(平成 30 年度)など、河川空間とまち空間を融合し地域の魅力向上につながる「かわまちづくり」の取組みを推進してきた。
これらの取組みの結果、令和 2 年 8 月現在、全国で229 箇所の「かわまちづくり計画」が登録されている。近年はかわまち大賞受賞箇所をはじめとして、地域が中心となり河川とまちに賑わいを創出しその活動が評価される事例が多くなってきた。水辺に限らず、道路や公園等の公共空間を活用しようとする動き全体が活発化していることも背景にあると考えられる。しかし、成功事例がある一方、河川空間をうまく活用して取組めていない地域も散見される。
筆者らは過去に、かわまちづくり計画の登録地区に対してアンケートを行い、費用不足や情報発信不足、キーパーソンの不在など、かわまちづくりを進める上での全体的な課題の傾向や、事業完了前後でその傾向に違いがあることについて把握した。しかし、検討段階ごとの課題については推測の粋を出ず、詳細な課題把握と対応策の検討には至らなかった。そこで、本稿では、全国の市区町村(以下「自治体」という)に対して実施したアンケート結果を用い、改めて各地の河川の活用やかわまちづくりに関する課題認識を分析し、今後のかわまちづくりの推進に向けて必要な方策の検討を行う。

2. 検討方法
2-1 アンケート調査の概要
本検討におけるアンケート調査の概要を示す。
①目的:「かわまちづくり」の具体的な課題解決策の模索及びさらなる発展の参考に資することを目的とする。
②対象:1 級河川及び 2 級河川に隣接する自治体(市区町村)
③時期:令和元年 7 月 3 日~8 月 9 日
④方法:北海道開発局・各地方整備局・沖縄総合事務所及び都道府県を経由し、対象市区町村に対して配布・回収を実施。
⑤主な質問項目:
・河川の活用可能性
・活用方法
・活用できないと思われる理由
・支援制度の認知度
・かわまちづくり計画検討の有無
・かわまちづくり計画の検討段階
・かわまちづくりにおける課題・原因
・課題原因解消のために期待する国からの支援内容等
⑥回答状況:表-1にアンケートの回答状況を示す。全部で 1,614 の自治体から回答があり、回答率は全体の 9 割を超え、概ね全国の自治体の意識の実態を反映しているものと考えられる。また、図-1に自治体の市・区・町・村のそれぞれの回答割合の内訳を示す。市が 47.0%、町が 41.8%とほぼ同割合で、村が 9.8%、区が 1.4%であった。

表-1アンケートの回答状況
全国アンケートからみた「かわまちづくり」の現状と課題

図-1 回答市区町村の内訳

2-2 分析方法
アンケート結果をもとに「河川の活用可能性」「支援制度の検討経験」「かわまちづくり計画の段階と課題」
「課題の原因」について集計整理し、その傾向について分析を行う。
なお、課題の「その他」の自由記述内容については、テキストマイニングによる可視化を試みた。自由記述
のテキストデータを分析が行えるように形式を整えて表計算ソフト(Excel)に入力し、テキストマイニングのソフトウェア KHCoder を利用し分析を行った。分析にあたり、表記のゆれや送り仮名などの統一作業(いわゆるデータクレンジング)を行った上でデータを読み込み、頻出単語の抽出により出現パターンの似通った語を線で結んだ図(以下「共起ネットワーク図」という)を作成し、傾向について考察を行った。

3. 検討結果
3-1 河川の活用可能性
各自治体に、地域活性化や地方創生の一環として、河川が活用できると思うかどうか尋ねた結果を図-2に示す。「活用できる」が 921 箇所(57.1%)、「活用できない」が 692 箇所(42.9%)であった。また、「活用できない」と回答した各自治体に「活用できないと思う理由」について尋ねた結果(複数回答可)を図-3に示す。「①洪水等で危険であり、利活用を考えにくい」が 359 箇所(51.9%)、「②そもそも、具体的な河川の利活用方法を思いつかない」が 381 箇所(55.1%)、「③河川利用のための事務手続きが難解でわかりにくい」が90 箇所(13.0%)、「④現在の制度上、河川に設置できる施設が限定的で、利活用しにくい」が 21 箇所(3.0%)、「⑤その他」が 136 箇所(19.7%)であった。
活用できないと思う理由について、①利活用を考えにくい、②利活用方法を思いつかない、がそれぞれ 50%
を超える割合を示すが、後者については具体的な活用方法に関する情報提供を行うことで、利活用に前向きな意識に転換できる可能性があると考えられる。一方、③事務手続きが難解、④河川に設置できる施設が限定的、については比較的低い回答割合であり、対応策の優先順位は低い。⑤その他の具体的回答としては「(河川敷が狭いなど)利活用できる空間がない」という回答が最も多く、①の回答と合わせると、地理的な条件で活用できないと考える箇所が多いことがわかる。⑤その他で、回答数は少ないが「利活用可能な場所を把握していない」「県管理のため調整が難しい」などの回答があり、これらはかわまちづくりの検討を進めたり、河川管理者側から働きかけたりすることで活用に向けて状況が好転する可能性があると考えられるため、現場の河川管理者が制度活用や事例などを自治体側に説明できるような支援ツールの充実が重要になると考えられる。

図-2 地域活性化等に係る河川活用の可否

図-3 活用できないと思う理由

3-2 かわまちづくり計画の検討段階と課題
(1) 検討段階ごとの課題の有無
支援制度の検討経験があると回答した自治体 252箇所に対して、検討段階を尋ねた結果を表-2に示す。「構想段階」が 22.6%、「計画段階」が 10.3%、「整備段階」が 44.4%、「維持管理段階」が 27.0%であった。

表-2 かわまちづくり計画の段階

更に課題の有無について尋ね、各段階別に整理したのが図-4である。「課題あり」の回答割合が最も高いのは構想段階の 86.0%で、ついで計画段階 80.8%、維持管理段階 64.7%、整備段階 62.5%であった。特に構想・計画段階というかわまちづくりを進める初期段階において、高い割合で自治体が課題を認識しており、その後の段階である整備・維持管理段階につなげるためにも、初期段階での課題解消が重要な観点となると考えられる。

※n は検討経験がある自治体の各段階の数
図-4 段階ごとの課題意識

(2) 検討段階ごとの課題内容
段階別の課題内容について表-3及び図-5に示す。
「その他」以外の選択肢について着目すると、構想段階と計画段階では「構想はあるものの、なかなか計画策定まで至らない」という回答が最も多い結果となり、それぞれ 73.5%、57.1%であった。また、整備段階では、「河川の利活用施設の整備が計画通り進まない」「河川の維持管理に苦慮している」と回答する自治体の割合が高く、それぞれ 38.6%、40.0%であった。維持管理段階では、「河川の維持管理に苦慮している」という回答が最も多く 59.1%、次いで「河川の利用者数が増加していない(河川の利活用に苦慮)」という回答が多
く 40.9%であった。総じて、初期段階で計画策定まで至らないという課題が突出していること、整備後は多く
の地域で維持管理に苦慮していることがわかる。

表-3 段階ごとの課題内容の内訳(表)

※n は各段階で「課題が生じた(生じている)」と回答した自治体数
※カッコ内の割合は n に対する各内容の回答自治体数の割合


図-5 段階ごとの課題の内訳(グラフ)

(3) 課題「その他」の自由記述のテキストマイニング
課題を「その他」とする回答については、各段階で比較的高い割合を示し、それぞれ 3 割から 5 割の回答が得られた。特に整備段階では一番多い回答であった。そこで、各段階の詳細内容(テキストデータ)について、テキストマイニングを行った。テキストマイニングの結果である共起ネットワーク図を図-6に示す。共起ネットワーク図は、「共に出現する語と語の関係性を線の繋がりによって、出現頻度を円の大きさによって把握するもの」である。なお、分析を行うにあたり、2 回以上出現している語を対象とした。
それぞれの段階で特徴的な語句のグループがオレンジ色の凡例「1」、2 つの段階で特徴的な語句のグループが黄緑色の凡例「2」、3 つの段階で特徴的な語句のグループが緑色の凡例「3」で示されている。計画段階、整備段階、維持管理段階で事業の財源(費用・予算)確保が共通する課題として確認できる。構想段階では、具体的な課題ではない「構想にいたっていない」「協議中」「検討中」「過去に検討したが中断している」などの状況を示すような記述が多かった。計画段階では、他の段階に比べ抽出された語句が多く、整備後も含め幅広い事項について考える必要があることが伺える。また、計画段階と整備段階では、国との整備内容調整や民間事業者との連携などが共通の課題として確認できる。維持管理段階では、マンパワー不足や費用不足による維持管理への対応苦慮が特徴的な語句として抽出され主な課題であると認識できる。

図-6 課題「その他」の自由記述に関する共起ネットワーク図

3-3 課題の原因
アンケートでは、「課題」の内容だけでなく、「課題に対する主な原因」についても併せて回答を得た。原因
は、以下の 11 項目から複数回答選択とし、必要に応じ具体内容を記載する方式である。前項で挙げた 5 つの課題について、回答された 11 項目の原因の割合を段階ごとに整理し、分析を行った。
【課題に対する主な原因:選択肢】
a.河川管理者との連携不足
b.地元調整が困難
c.民間参入が困難
d.多様な主体と連携が可能なキーパーソンが不足
e.市区町村のマンパワーが不足
f.市区町村の予算が不足
g.協議会の活動が継続していない
h.情報発信が不足
i.計画策定時と社会情勢が変化
j.計画自体の熟度が足りなかった
k.その他
(1) 課題「構想はあるもののなかなか計画策定まで
至らない」の原因
当該項目を課題と回答した自治体 52 箇所に対する各原因の割合について整理したのが、図-7である。

図-7 課題「計画策定まで至らない」の原因

構想段階の回答が多いのが特徴で、「その他」以外の回答では、「d.多様な主体と連携が可能なキーパーソンが不足」と回答した割合が最も高く、次いで「e.市区町村のマンパワーが不足」「f.市区町村の予算が不足」、更に「a.河川管理者との連携不足」を挙げる箇所が多かった。「その他」の主な内容としては、「関係部局と費用、役割分担等について調整中」「治水上の課題等により適地が見つからない」などの回答が多かった。
キーパーソン不足が第一の理由となっていることから、キーパーソンの必要性は認識しているものの地域にそのような人材が不足しているかもしくは自治体とキーパーソンとの関係が構築されていない現状が推察される。キーパーソンの存在やネットワーク化については、かわまちづくりを進める上で重要な要素であることは既存の研究でも明らかになっており、人材の発掘や育成を支援する施策が必要と考えられる。
また他の段階や、後述する他の項目と比較し、「河川管理者との連携不足」の割合が高いのも特徴的である。構想段階はそれぞれの主体が取組みを進める初期の段階であり、各主体によるコミュニケーションが必要となる。特に、計画の中心となる自治体担当者と河川利活用の責任者である河川管理者との連携は重要で、連携できていない、または連携できない何か原因が存在・介在した結果が課題として現れている可能性がある。原因の一つとして、自治体側が支援制度や河川区域の利活用について詳しくないことも想定されるが、それらに熟知する河川管理者側から積極的に自治体側に働きかけることも有効と考えられる。

(2) 課題「河川の利活用施設の整備が計画通り進まない」の原因
当該項目を課題と回答した自治体 34 箇所に対する各原因の割合について整理したのが、図-8である。

図-8 課題「整備が計画通り進まない」の原因

比較的整備段階の回答が多く、特に「f.市区町村の予算が不足」は 35%を超える割合となっており、突出している。「その他」以外の回答としては、「a.河川管理者との連携不足」「b.地元調整が困難」「c.市区町村のマンパワー不足」「j.計画自体の熟度が足りなかった」が同程度に多いという結果であった。「その他」の主な内容としては、「関係主体や施設、他の計画との調整が必要」などであった。
予算不足については、支援制度は河川管理者によるハード支援を行うことになっているが、その内容は「まちづくりと一体となった治水上及び河川利用上の安全・安心に係る河川管理施設の整備」となっており、占用施設等の利活用に係る施設整備に対する支援は担保されていない。河川管理施設の整備以外については、基本的には自治体や民間事業者等の推進主体側で予算を確保する必要があり、そのことが課題として挙げられている要因となっていると推定できる。これに対しては交付金等の活用や、民間事業者との連携(PFI、CSR 等)、クラウドファンディング等の対応が必要となり、交付金制度や事例集などの自治体を支援する取組みも有効であると考えられる。
(3) 課題「河川の利用者数が増加していない(河川の利活用に苦慮)」の原因
当該項目を課題と回答した自治体 46 箇所に対する各原因の割合について整理したのが、図-9である。
当該課題は、かわまちづくりの成果に直結する部分であり、本質的な課題と言えるが、主に整備段階及び維持管理段階の回答が多い傾向があり、本項では両段階について着目して分析を行う。
整備段階では「h.情報発信が不足」が最も多く、「c.民間参入が困難」「d.多様な主体と連携が可能なキーパーソンが不足」が次点の回答割合となっている。
一方、維持管理段階では、「d.多様な主体と連携が可能なキーパーソンが不足」「c.民間参入が困難」「e.
市区町村のマンパワーが不足」「h.情報発信が不足」の3項目についてほぼ同数の回答が得られた。
整備段階、維持管理段階の両段階で、「c.民間参入が困難」「d.多様な主体と連携が可能なキーパーソンが不足」「h.情報発信が不足」が共通する。この 3 点は、民間との連携の実現を目指すことで、解決につながる可能性もあると考えられる。また、維持管理段階で挙げられた「e.市区町村のマンパワーが不足」については、上記 3 点と傾向が異なり、維持管理段階での回答数が多いという結果となった。「マンパワー不足」という回答については、市町村担当者が利用者数増のことを考える余裕や体制ができていないことが想定される。自治体の体制拡充が望めない状況では、それを補完できる他の関係主体とのネットワークを構築するなどの民間連携が重要になると考えられる。

図-9 課題「利用者数が増加していない」の原因

(4) 課題「河川の維持管理に苦慮している」の原因
当該項目を課題と回答した自治体 63 箇所に対する各原因の割合について整理したのが、図-10である。

図-10 課題「維持管理に苦慮している」の原因

整備段階、維持管理段階で多く回答されている傾向があり、課題「整備が計画通り進まない」と同様に、特に「f.市区町村の予算が不足」と回答している自治体が多く 25%を超える割合であった。次点としては、「e.市区町村のマンパワーが不足」「k.その他」が多い結果となった。「その他」の主な内容としては、「除草頻度増」「増水時の土砂堆積」「実施団体の高齢化、減少」などであった。
予算不足の回答への対応策としては、(2)で述べた通り、交付金等の制度活用や民間事業者との連携が考えられる。しかし、活用できる制度がなければ制度活用は難しく、また連携できる民間事業者が不在であれば民間連携は難しい。そのため、計画段階までに関係主体の役割分担や予算確保手段の検討を行い、整備後に維持管理に苦慮しないようにすることが望ましい。それらの対応により「マンパワー不足」の解決にもつながると考えられる。
(5) 課題「その他」の原因
当該項目を課題と回答した自治体 74 箇所に対する各原因の割合について整理したのが、図-11である。

図-11 課題「その他」の原因

整備段階、維持管理段階での回答が多い傾向にあり、「k.その他」の回答が一番多い。その後、「f.市区町村の予算が不足」「e.市区町村のマンパワーが不足」などが続く。
「k.その他」の詳細記述内容について、回答が多かった構想段階、整備段階、維持管理段階について確認した。構想段階では、「現在検討中・今後検討予定」との回答が多く、それ以外に「手続きが煩雑で気軽に実施きない」「かわまちづくりに精通した職員がいない」「地域問題と片付けずに国からも提案してほしい」などの意見があった。整備段階では、「財源不足・交付金メニュー不足」「体制・役割分担」「効果の検証」を挙げる自治体が複数あり、それ以外に「沿川市町村との連携」「民間プレイヤーの発掘」を挙げる自治体もあった。維持管理段階では、「地域主体で継続するための費用捻出」や「堆積土砂の撤去」の他、「団体の高齢化・世代交代」「成果が見えるまでには時間がかかる」「拠点の成果で満足してしまいがち」などの意見があった。
本項目では、予算や体制といった他と重複するものもあるが、効果検証や広域連携のように、活動を継続したり良い成果を出すために必要なことに対する課題意識があると感じられる。

4. 対応方策の提案
以上本稿では、全国の自治体に対して行ったアンケート調査の回答から、河川の活用可能性及び支援制度の認知度、かわまちづくりの検討段階に応じた課題とその原因について分析検討を行った。以下に、今回の分析検討を通じて明らかになった点及び今後のかわまちづくりの推進に向けた方策について整理する。
はじめに、各自治体で「河川を活用できないと思う理由」に関する回答について分析を行ったところ、地理な条件で活用できないと考える箇所を除くと、具体的な利活用方法を思いつかない、という回答が多く、河川管理者側から自治体に対する情報提供やそれにつながるツール作成など、現場の河川管理者を支援する施策の展開が必要であると考えられる。
次に、かわまちづくりの段階ごとの課題とその原因について分析したところ、それぞれの段階で特徴はあるものの、主に「キーパーソン不足」「マンパワー不足」「予算不足」などを要因として各段階において課題が生じている状況が把握できた。これらは、多くの地域で自治体内部リソースの限界や不足を反映しているものと捉えることができる。それぞれの要因は簡単に解消できないが、自治体の人員・予算確保に限界がある以上、民間連携など自治体以外の機関やキーパーソンとの関係を構築し相互協力しながら運営していくことが必須であろう。それを前提に考えれば、構想段階や計画段階から民間連携を模索することが重要であり、自治体に対して事例紹介や人材育成、民間とのネットワークづくりなどに関する支援策を行っていくことが、その後の整備、維持管理の各段階での着実な取組みにつながると考えられる。
なお、予算面については、令和 2 年度より都市再生整備計画事業制度が再編され、かわまちづくり計画等の水辺とまちが融合した良好な空間形成を推進する水辺まちづくり計画がある場合に適用できる「都市構造再編集中支援事業」が創設された。また、護岸の修景整備にかかる工事費用について、「ふるさと納税型クラウドファンディング」の仕組みを活用し寄付金を募る取組みを行っている地域もある。このように、予算不足の課題にしては、新たな事業制度や費用確保の仕組みに着目し取り組むことが有効である。また、そのために国としては支援策の検討を行うとともに、各部局の制度が連携して機能するような取組みや制度・仕組みの活用事例を共有することなどが重要と考えられる。

5.おわりに
本稿の分析は、国土交通省が令和元年度に全国の市区町村に対して実施したアンケート結果の一部を用いたものである。国土交通省水管理・国土保全局河川環境課の皆様には、アンケート情報の提供及び本稿の執筆にあたっての多大な助言を頂いた。ここに感謝の意を表する。また、アンケートにご協力いただいた全国の市区町村の皆様にも、この場を借りて感謝の意を表する。

<参考文献>
1) 「かわまちづくり」支援制度実施要綱:国土交通省水管理・国土保全局,2016
2) 令和元年度「かわまち大賞」受賞箇所の取組及び評価:国土交通省水管理・国土保全局河川環境課,2020
3) かわまちづくり計画策定の手引き:国土交通省水管理・国土保全局河川環境課,2020
4) 末吉美喜:テキストマイニング入門 Excel と KH Corder でわかるデータ分析,2019
5) 永井儀男ら:河川を活かしたまちづくりの成功要因について,リバーフロント研究所報告第 19 号,2008
6) 阿部充ら:「かわまちづくり」の効果と課題に関する基礎的研究,リバーフロント研究所報告第 27 号,
2016
7) 阿部充ら:かわまちづくりのプロセスに関する考察-先例地域関係者インタビューを通じて-,リバーフロント研究所報告第 29 号,2018

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