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鉄とガラスからなるグリッドシェルの形状デザイン手法の開発

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2024-07-23 東京大学

発表のポイント
  • 建築技術の向上により近年、鉄とガラスによるグリッドシェルの建設例が国内外で増えていますが、効率の良い建設の仕方に課題を抱えていました。
  • 鉄とガラスによるグリッドシェルの効率の良い建設を強力に支援する、コンピュータを用いた新しい形状デザイン手法を開発しました。
  • 開発した手法により力学的に優れかつ施工のし易いグリッドシェルの建設が可能となります。

鉄とガラスからなるグリッドシェルの形状デザイン手法の開発

鉄とガラスから成るグリッドシェルのCGによるレンダリング

発表内容

東京大学大学院総合文化研究科の三木優彰助教と米国Thornton Tomasetti勤務の構造エンジニアToby Mitchellは、建築デザインにおける構造形式の一つである鉄とガラスからなるグリッドシェル構造の形状デザインに有用な新しい微分方程式を導出し、既存の計算機を用いた解法で簡単に解けることを示しました。この研究成果はコンピュータ・グラフィックスの最高峰の国際会議であるSiggraph 2024(Denver, USA)に論文が採択され、論文誌Transactions on Graphicsから出版されるとともに、7/30(火)2:40(米国Mountain Time Zone (MDT))にプレゼンテーションが予定されています(論文は7/19(金)に公開済み)。

三木優彰とToby Mitchellは2022年にも連続なシェル構造の形状決定手法をSIGGRAPH ASIA 2022で発表しています。連続なシェル構造は建築デザインにおける構造形式の一つで、鉄筋コンクリートで造る薄い曲面構造を指します(図1)。しかし近年建設技術の向上により、鉄とガラスからなるグリッドシェルの実施例が国内外で増えてきました。これは網目(グリッド)状に鉄の線材を配置し、ガラスパネルで全体を覆った構造形式で、より軽やかで現代的な印象を与えます(図2)。グリッドシェルの設計においては主曲率方向に沿った網目を選択すると全体を平坦なガラスパネルで覆うことができ施工がしやすいです。一方で主応力方向に沿った網目を選択すると力学的に合理的な構造が得られ、少ない材料で建設することができることがわかっています。しかし両方を同時に選ぶことができないため、効率のよい建設に課題を抱えていました。

本研究で目指したのはこの2つの網目を揃えることにより、両方の利点を兼ね備えた構造の設計を可能とすることです。三木とMitchellは最終的に2つの網目が一致する条件が対称な双線形型微分方程式で表現できることを導きました。幸運なことにこれは、三木とMitchellの2022年の手法で解いた微分方程式と同じ形式で、同じ計算手法(注1)で解くことができました。三木とMitchellはこの新しい微分方程式を「揃える」条件と名付けました。開発した手法はこの分野の標準的な設計手法としてスパン20m程度の大空間構造への応用が期待されます。

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図1:三木とMitchellの2022年の手法により計算した、連続なコンクリートシェルのCGによるレンダリング

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図2:3Dプリント(1/6)の壁面へのプロジェクションによるグリッドシェルの可視化。つながるかたち展03(駒場博物館、2023年)で展示したもの。

発表者・研究者等情報

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻・広域システム科学系

三木 優彰 助教

Thornton Tomasetti(Chicago, USA)

Toby Mitchell

論文情報

雑誌名:ACM Transactions on Graphics

題名:Alignment conditions for NURBS-based design of mixed tension-compression grid shells

著者名:Masaaki Miki* and Toby Mitchell

DOI:10.1145/3658142

URL:https://dl.acm.org/doi/10.1145/3658142

研究助成

本研究は、科研費「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:23K17784)」、能村財団、前田記念工学財団の支援により実施されました。

解説

(注1)変数射影法(Variable Projection method)と呼ばれる双線形方連立方程式の数値解法。

[1] J. H. Hong, C. Zach, and A. Fitzgibbon, “Revisiting the variable projection method for separable nonlinear least squares problems,” 2017 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), Honolulu, HI, USA, 2017, pp. 5939-5947.

[2] Eldén, L. and Ahmadi‐Asl, S., 2019. Solving bilinear tensor least squares problems and application to Hammerstein identification. Numerical Linear Algebra with Applications, 26(2), p.e2226.

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