2023-10-05 東日本旅客鉄道株式会社
8 月 5 日 21 時 24 分頃発生しました、東海道線 大船駅構内において列車と電化柱が衝撃した事故につきまして、怪我をされたお客さまをはじめ、多くのお客さまにご迷惑をおかけしたことを改めて深くお詫び申し上げます。
本事故を受け、8 月 7 日に立ち上げた原因究明・対策検討委員会において検討を行った原因と対策について報告いたします。なお、現在、運輸安全委員会による調査が行われています。今後、調査の結果を踏まえ、必要により追加の対策を講じてまいります。
1 概況
2023 年 8 月 5 日(土)21 時 24 分に、東海道線 大船駅構内にて、上り走行中の列車が電化柱と衝撃しました。本事故により、東海道線、横須賀線、京浜東北・根岸線で運転を見合わせ、複数の列車が駅間停車したため、お客さまの救済を行いました。当該の電化柱撤去及び車両点検を実施し、順次運転再開しました。
2 明らかとなった事実関係と原因
本事故の事実関係と原因は、以下のとおりと推定しております。
(1) 電化柱の折損位置
折損した電化柱と衝撃した車両の損傷部分に関する分析を進めた結果、電化柱の傾斜角度から、電化柱は根元部から折損したことが特定できました。
(2) 電化柱が折損に至るまでのプロセス 【別紙1】
① 何らかの要因により一時的に大きな荷重が電化柱に加わったことにより、電化柱の根元部に微小なひび割れが生じました。
② 通常、ひび割れは一時的な荷重が無くなると閉じますが、当該電化柱には常時、東海道上線方向にコンクリート柱の許容荷重※1 の約8割の荷重が加わっており、東海道上線の逆側に発生したひび割れが閉じない状態が継続しました。※2
③ ひび割れが閉じない状態が継続したため、ひび割れより雨水が浸入し、コンクリート柱内の鉄筋が腐食しやすい環境が形成されました。
④ 腐食によりコンクリート柱内の 10 本中 3 本の鉄筋が破断し、さらに1本の鉄筋の腐食が進展した結果、電化柱の耐力が電化柱に加わっている荷重を下回ったことにより、電化柱が折損・傾斜に至りました。
※1 コンクリート柱の許容荷重:コンクリート柱の破壊荷重の 1/2 の荷重
※2 コンクリート柱に人為的にひびを入れる載荷試験を実施したところ、コンクリート柱の許容荷重の7割以下の荷重の場合、ひび割れが閉じた状態となりました。
(3) その他
電化柱が折損に至るまでのプロセスを究明する過程で、一定方向に許容荷重の 7 割以上の常時荷重が加わっている経年 40 年未満のコンクリート柱 36 本に対して、第二次追加点検を実施しました。
その結果、電化柱1本にひび割れを確認しました。列車運行に支障はありませんでしたが、念のための補強を行いました。その他 35 本については、設備に異常は確認されませんでした。
3 電化柱折損の対策
当該電化柱と同様に、一定方向にコンクリート柱の許容荷重の7割以上の常時荷重が加わっており、ひび割れが発生した場合に、ひび割れが閉じない状態が継続する可能性のある当社管内の単独コンクリート柱 99 本を「重点管理柱」と定め、以下の対策を実施します。
(1) 重点管理柱の補強重点管理柱については、本事故の発生後に点検を実施し、健全性を確認しておりますが、念のため、すべての重点管理柱の補強を今後、2か月程度で実施します。
(2) 重点管理柱の建替え同様のリスクを除去するため、すべての重点管理柱を強度の高い構造物に計画的に建替えます。
(3) コンクリート柱の設計方法の見直し 新たなリスクを生じさせないため、設計指針を見直します。電化柱の新設・改良時には、コンクリート柱に常時加わる荷重が、許容荷重の7割未満となるよう設計することで、重点管理柱を新たに作りません。
(4) コンクリート柱の外観目視検査の見直し重点管理柱および許容荷重の6割以上の常時荷重が加わっているコンクリート柱の外観目視検査において、霧吹き器によりアルコールや水をコンクリート柱表面に噴霧することで、ひび割れを目視しやすい状態にする検査方法を導入します。なお、今回導入する検査方法の効果などを検証した後、同様の検査方法をその他のコンクリート柱に導入することを検討します。
(5) 新しい検査方法の検討ひび割れを確実かつ効率的に把握するため、カメラで撮影した画像を解析し、自動でひび割れを検出する検査手法や、コンクリート柱の外部から非破壊によりコンクリート内の鉄筋の破断有無を確認する検査手法の導入を検討します。
4 お客さまへの対応
(1) お怪我及び体調不良をご申告されたお客さまについて
お怪我をご申告されたお客さまは7名、体調不良をご申告されたお客さまは 12 名いらっしゃいました。
(2) お客さまの救済に関する取組み
長時間の駅間停車が見込まれる場合は、速やかに降車誘導の判断を行うとともに、列車に搭載している救済はしごの迅速な設置や、応援社員による駅間停車列車からの速やかな降車誘導開始ができるように継続して取組んでまいります。