国総研レポート2020 (研究期間:令和元年度~)
国土技術政策総合研究所 都市研究部 都市計画研究室
室長(博士(工学)) 勝又 済
(キーワード) 将来人口・世帯,予測ツール,利用者ニーズ,改良,集約型都市づくり
1.はじめに
国総研では、従来市区町村単位の予測値しか得られなかった5歳階級別・性別人口及び世帯数を町丁目単位で予測可能な「将来人口・世帯予測ツール」(以下「本ツール」)を平成29年1月に一般公開1)し、多くの方にご利用いただいている。以降、本ツールについては、平成27年国勢調査結果に対応した最新の人口予測が可能となる等の改良を加えた「バージョン2(H27国調対応版)」を平成30年7月に公開2)~3)する等、利用者ニーズを踏まえた改良を随時行っている。本稿では、令和元年度に実施した主な改良等の内容、利用状況、今後の展開等について紹介する。
2.令和元年度に実施した本ツールの主な改良等
①クイックマニュアルの作成(令和元年 8 月)
本ツールは、予測計算を行うメイン機能の「将来人口・世帯予測プログラム」と、予測結果のメッシュ配分やグラフ・マップ表示を行うサブ機能の「予測結果簡易グラフ作成プログラム」「人口情報メッシュ配分プログラム」「予測結果簡易描画プログラム」で構成されている。それぞれに操作方法を丁寧に解説したマニュアルを用意しているが、本ツールを初めて利用しようという人が複数のマニュアルを読むのは負担である旨の意見を利用者よりいただいていた。そこで、本ツールを初めて利用する方に、一通り体験していただくための基本的な操作手順を説明した「『将来人口・世帯予測ツール』クイックマニュアル」を作成公開 3)した。同マニュアルは、
対象市町村の設定、予測計算、予測結果のグラフ・マップ出力までの一連の流れを、視覚的・直感的に理解できるよう、操作画面の画像を用いて説明し、A3サイズ2枚のボリュームに収めている(図-1)。
図-1 「将来人口・世帯予測ツール」クイックマニュアル
②世帯数等の予測計算機能の追加(令和元年 10 月)
利用者からは、世帯数の予測計算機能の追加要望が多く寄せられていたが、「バージョン 2」の公開時点では、予測計算に必要な国立社会保障・人口問題研究所の平成 27 年国勢調査結果に基づく「世帯主の男女・年齢 5 歳階級別・家族類型別世帯主率」のデータが未公表であったため、改良は不可能であった。今般、同データが公表されたため、世帯数等の予測計算機能を追加する改良を行った(図-2)。
図-2 世帯数等の予測結果のグラフ出力のイメージ
3.本ツールの利用状況
本ツールの公開先のG空間情報センター提供のデータによると、本ツールへの延べアクセス件数は約4,000 件/月、延べダウンロード件数は約 200~400件/月で推移している。「バージョン 2」公開直後の2018 年 8 月には、それぞれ約 19,000 件/月、約 1,200件/月に達した(図-3、図-4)。ダウンロードユーザーの属性は、都市計画コンサルタント等を中心とした民間企業(54.6%)が過半を占め、市区町村(17.0%)、大学・高専(11.4%)が続く(図-5)。利用者の声からは、本ツールの利用目的は、立地適正化計画や地域公共交通網形成計画等、都市の空間計画の検討が多いほか、福祉、医療、教育、防犯等の分野の需要予測等にも利用されているようである。
図-3 延べアクセス件数の推移 不足 (G空間情報センター提供データより作成)
図-4 ユーザー属性別延べダウンロード件数の推移(G空間情報センター提供データより作成)
図-5 ユーザー属性別累計延べダウンロード件数(G空間情報センター提供データより作成)
4.今後の展開
本ツールについては、今後も利用者ニーズを踏まえた改良等を行うとともに、本ツールの予測計算結果と連動し、医療・福祉施設の適正配置のマネジメントを支援する「地域居住支援機能適正配置予測プログラム」4)(図-6)等の各種ツールについても、社会実装が可能となり次第、公開してまいりたい。
図-6 「地域居住支援機能適正配置予測プログラム」による高齢者福祉施設(通所介護)の供給不足量の予測例
☞詳細情報はこちら
1) 国総研記者発表資料「地区レベルの将来人口予測ツールを作成しました ~まちの将来を見通し、コンパクトなまちづくりを推進~」http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/kisya/journal/kisya20170127-2.pdf
2) 国総研記者発表資料「最新の国勢調査に基づく将来人口予測が可能に!~地区レベルの将来人口予測ツールを改良~」http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/kisya/journal/kisya20180731.pdf
3) G空間情報センター「将来人口・世帯予測ツールV2(H27国調対応版)」ダウンロードサイト
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/cohort-v2
4) 国総研プロジェクト研究報告第62号『地域安心居住機能の戦略的ストックマネジメント技術の開発』「第Ⅳ編 地域居住支援機能の地域別将来必要量及び適正配置の予測手法の開発」
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/kpr/prn0062.htm