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シンガポールにおける新技術導入を促進する制度に関する調査

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国総研レポート2020(研究期間 : 平成 30 年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 社会資本マネジメント研究センター 社会資本システム研究室
研究官 鈴木 宏幸
主任研究官 市村 靖光

(キーワード) シンガポール,i-Construction,生産性向上

1.はじめに
国土交通省はi-Constructionを推進することで、新たな技術を活用した建設現場における施工の労働生産性向上や品質管理の高度化等を進めている。それらの新技術を現場に導入するためには、その技術に応じて、技術基準の改訂等の制度面や、企業へのサポート面でも対応していくことが求められる。
海外では既に新技術等の導入による生産性向上、現場の省力化に取り組んでいる事例がある。中でもシンガポールは、政府主導でBIM(Building Information Modeling)や新技術の導入を積極的に進めることで、建設現場の生産性向上に取り組んでいる。
そこでシンガポールの建設産業について、文献調査のほか、シンガポールの建設行政を担当するBCA(Building and Construction Authority)や、シンガポールで建築、工事を受注している日系企業にヒアリングを実施し、(1)技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う技能を有する労働者)の雇用、(2)新技術の導入、(3)工事の受注の各場面での取り組みについて整理した。

2.シンガポールの建設産業における取り組み
(1)技能労働者の雇用と技術向上
シンガポールの建設現場では、技能労働者がほぼ外国人であるという特徴がある。その労働力はシンガポールの高度成長期を支えてきたが、経済的な成熟期に入った現在、シンガポール政府は外国人労働者の数を抑制する方向に施策を進めている。
2010年2月にシンガポール政府省庁の横断組織である経済戦略会議の中で、企業が生産性向上のための投資を阻害するとして、外国人労働者への過度の依存を避けるべきであると提言している。その上で新技術等の導入を積極的に進めることで建設現場の生産性を維持、向上させる取り組みを実施している。そのためシンガポールでは技能労働者数の管理と生産性向上の取り組みが密接に関係しているといえる。
企業やBCAの職員へのヒアリングでは、シンガポールの建設現場では自国の人材を雇用することに制限はないが、国内の人材が建設現場で働くことはほぼ無いとのことであった。結果的に外国人の技能労働者を雇うことになるが、そのためには就労ビザが必要となる。
就労ビザは、建設現場の規模によって決められた枚数がその工事の受注者へ配布される。就労ビザの発給数は年を追うごとに減っており、その決められた数量で施工するために、工事の受注者は新技術の導入等の努力を求められる図式となっている。就労ビザの発給数を算出する根拠として、政府機関であるMOM(Ministry of Manpower)に提出される工事日報がある。公共工事では工事現場への入退室管理に生体認証が義務づけられており(図)、日報に記録された、毎月の技能労働者の入退場者数と施工された面積から「その工事で現場1平米あたりの施工に何人雇用したか」が算出される。それら過去の工事結果を基に、以降の工事における就労ビザの
発給数が設定される。

図 生体認証による工事現場への入退室管理

またシンガポールでは質の高い労働力を得るための施策が執られている。BCAはシンガポール国内で雇用されることを目指している、周辺国における技能労働者を対象に、その母国にスキル取得を目的とした技術センターを設置し、資格、技術の取得をサポートしている。また国内でもBCAアカデミーというBCA保有の施設で研修等を実施し、さらなる資格の取得や技術の向上を求めている。
更にBCAは、保有する資格が1つの技能労働者(単純工)より、複数の資格を保有する技能労働者(多能工)の雇用時に課す税額を下げることで、雇用する企業に多能工の雇用を推奨している。
企業へヒアリングしたところでは、多能工の雇用は、工事の際に技能労働者の待機時間が減ることにより、施工期間の短縮が期待できるため、企業にもメリットがある取り組みであるとのことであった。

(2)新技術の導入を促進する取り組み
1)サンドボックス
新技術の導入を検討するための手法として、サンドボックス(砂場)と呼ばれるものがある。これはまだ基準化されていない技術でも、提案された現場で試行することを許可するもので、シンガポールではこの手法を日本よりも積極的に活用しており、成否を含めて政府に蓄積され、次の工事へフィードバックする仕組みとなっている。この手法を早いサイクルで実施することで、シンガポールにおける新技術の導入が促進されていると考えられる。
2)Score制度による設計と施工の評価
シンガポールでは建築物の設計時に、建設の容易さ等を数値化して評価するBuildable Design Score(B-Score)と、建設時の施工性を数値化して評価するConstructability Score(C-Score)という制度がある。これらのScoreは、施工性を高める取り組みや、技術、設備、安全への配慮といった、BCAによって設定された技術等を採用することでポイントが加算され、このScoreが高いほど、安全で容易に建築できる設計、施工性の高い建設現場であると評価される。また現場の規模や、建築物の種類(学校や商業施設等)によって必要最低限のポイントが設定されており、B-Scoreは設計者、C-Scoreは施工者の責任の元で、必要なポイントを満たす必要がある。
更に各Scoreは、後述する工事の入札時における評価項目として使用されることから、受注者は積極的に新技術等を採用する仕組みとなっている。

表 PQM制度による評価の配分


3)PCaからPPVCへ
シンガポールではPCa(プレキャストコンクリート)技術は標準的に使用されている。近年、BCAは「PPV
C(Prefabricated Prefinished Volumetric Construction)」という、ある程度内装まで完成したプレハブユニットを積み上げる建築方法の積極的な使用を勧めている。この手法を採用することで大幅な工期の短縮や、危険箇所での作業減少等による安全面の向上が期待される技術とされている。

(3)建設工事入札時の評価制度
シンガポールでは建設工事の入札を行う際は総合評価によって受注者が決定されるが、その評価項目に「価格」「質」のほかに「生産性」という項目を設定しているところに特徴がある(表)。この生産性という項目内で、前述のScoreを元に算出される指数を用いた過去の実績や、企業が実施するBIM等の技術導入、労働力開発(教育)への取り組みが評価される仕組みとなっている。

3.おわりに
今後は本調査によって得られた成果と共に、他国の情報整理と検討を進め 、日本におけ る iConstructionの推進に寄与していく。

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