2020-10-07 防災科学技術研究所
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長: 林春男)は、災害拠点建築物を想定した実物大5階建て鉄筋コンクリート造建築物の地震による降伏変形・振動減衰の関係を明らかにすることを目指し、令和2年10月19日(月)に、実物大試験体のE-ディフェンス加震実験を公開で実施します。
- 1.実施主体
-
国立研究開発法人防災科学技術研究所、株式会社堀江建築工学研究所、学校法人中部大学、国立大学法人東京大学地震研究所、国立大学法人名古屋大学、国立大学法人山口大学
※本事業は国土交通省建築基準整備促進事業の一環として実施します。 - 2.日時
-
令和2年10月19日(月)12時30分~16時30分
- 3.場所
-
国立研究開発法人 防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター
〒673-0515 兵庫県三木市志染町三津田西亀屋1501-21 - 4.対象
-
報道機関・実験関係者等
※一般の方への公開は行っておりませんので、ご了承ください。 - 5.内容
-
別紙資料による。
(別紙)5階建て鉄筋コンクリート造建築物の減衰評価~建築基準整備促進事業におけるE-ディフェンス加震実験~
- 1.研究背景・目的
-
- ①研究・実験の背景
- 地震後の機能継続性が強く求められる災害拠点建築物等では、柱や壁などの建物を支える骨組み(構造躯体)の厳密な損傷評価のみならず、非構造部材や設備機器等の変形追従性(注1)の観点からも建築物の応答変形(注2)が重要な設計クライテリア(注3)となります。建築物に対する限界耐力計算(注4)は、国土交通大臣認定を要する時刻歴応答解析(注5)を除けば、建築物の地震応答変形を明確に評価できる唯一の構造計算法ですが、算出される応答変形の検証精度には、部材の塑性率から算出される振動減衰(注6)性状の評価方法によって、ばらつきが大きいという課題があります。
- ②実験の目的
- 建築物の安全性を検証する設計手法(限界耐力計算)において、建築物に発生する変形(応答変形)の算定精度を向上させるために、ばらつきの最も大きな要因である部材の降伏点評価法(注7)について、新たな評価手法を構築します。
- ③国内外の関連する実験研究の中でのE-ディフェンス実験の位置づけ
- E-ディフェンスにて、災害拠点建築物を想定した5階建て鉄筋コンクリート(RC)造の降伏変形(注8)や振動減衰の評価を目的とした実験を行います。これまで建物の降伏変形や振動減衰は、主に解析や部材の静的な実験で評価されてきました。
今回これに加え、実物大試験体の加震実験を行うことにより、地震入力と降伏変形・振動減衰の関係を明らかにします。 - ④期待される成果と波及効果
- 建築物の振動減衰を表す数値hの設定に関わる降伏点評価法の検討により建築物の応答変形を精緻に算定する新たな評価手法を構築することで、災害拠点建築物等の設計に重要な設計クライテリアとなる応答変形を精緻に算定することが可能となります。
なお、本事業は、国土交通省が実施する建築基準整備促進事業における調査番号S30「鉄筋コンクリート造の限界耐力計算における応答変位の算定精度向上に向けた建築物の振動減衰性状の評価方法の検討」に関する事業の一環として、防災科学技術研究所の他、株式会社堀江建築工学研究所、学校法人中部大学、国立大学法人東京大学地震研究所、国立大学法人名古屋大学、国立大学法人山口大学および国立研究開発法人建築研究所と共同で実施します。
防災科学技術研究所では、本事業で得られた知見を、将来的に建築構造の性能設計の設計基準への展開を目指し、災害拠点建築物の強靭化に貢献していきます。
- 2.実験内容
-
鉄筋コンクリート造5階建て実物大レベル試験体について振動台実験を行います。
加震方向は1方向とし、層間変形角(注9)1/75程度の変形および損傷が生じる入力地震レベルで加震します。- 【加震波形】
- 地震波形
告示(El Centro NS)
最大加速度:約600 gal - 【試験体概要】
- 構造:鉄筋コンクリート造 純ラーメン構造
規模:地上5階 地下なし 塔屋なし
質量:約460 ton(基礎200tonを含まず)
縮尺:実大建物の80%
基準階床面積:12m×6m=72 ㎡
延べ床面積:5F×72 ㎡=360 ㎡
高さ:1FLより16.4 m(振動台底盤より17.6 m)
- (語句説明)
-
注1 変形追従性
建物の動き、変形に対して窓枠などの非構造部材が力を受けずに滑らかに変形する性能注2 応答変形
地震動において生ずる建築物に発生する変形(なお、変形量を応答変位という。)注3 設計クライテリア
建築物の設計時に目標となる基準注4 限界耐力計算
建築物の安全性を検証する設計手法の一つであり、保有水平耐力計算や許容応力度等計算などで想定する荷重・外力に加えて、極めて稀に発生する積雪及び暴風に対する安全性を直接検討するとともに、極めて稀に発生する地震動において生ずる建築物の変形量(応答変形)を計算し、その変形に対して安全であるように部材を設計することで安全性を確認する手法注5 時刻歴応答解析
建築物を階ごと又は部材ごとにモデル化し、地震時の地盤の動きなど建築物に作用する荷重・外力を時系列に従って逐次入力として与えることで、建築物の応答を直接的に確かめる解析手法注6 振動減衰
エネルギーが逸散することにより振動が減少すること注7 降伏点評価法
降伏点を算出するための方法注8 降伏変形
地震の揺れによって徐々に大きくなる建物の変形のうち、地震後に元の位置に完全には戻らなくなる時点の変形注9 層間変形角
地震力によって各階に生ずる水平方向の層間変位の各階高さに対する割合