2020-09-25 防災科学技術研究所
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:林春男)と株式会社一条工務店(代表取締役社長:岩田直樹)は、令和2年10月13日(火)に、水位3mに耐える実物大「耐水害住宅」の大型浸水実験を公開で実施します。
国立研究開発法人防災科学技術研究所と株式会社一条工務店は、大型降雨実験施設を用いて水位3mという浸水状態を再現し、浸水対策を講じた家と講じていない家の2棟を比較する、水害に強い「耐水害住宅」の検証実験を公開で実施します。
本実験は、昨年から官民共同の水害被害軽減プロジェクトとして開始しました。昨年10月にはゲリラ豪雨や洪水による住宅の「床下浸水」「床上浸水」を防止する「耐水害住宅」の実験を実施し、洪水時にある水位(約1.3m)を超えると建物が浮きはじめることを明らかにしました。この成果を踏まえ、両者は、これまでの水密性に加えて浮力対策技術の検討及び開発を行ってきました。今回の実験では、豪雨による洪水状態を再現し、実物大の木造2階建て住宅2棟(一般仕様住宅及び耐水害住宅)の性能比較を行います。具体的には、水位3m(住宅の1階天井の高さ程度)に達した時の住宅及び住宅内部への浸水状況を観測します。また、対策を施した「耐水害住宅」においては、水位が高くなった際にかかる浮力で建物が浮上してから、洪水の水が引いた後に元の位置に戻るまでの一連の挙動が安全に推移するかを検証します。
平成27年の水防法改正により、浸水想定区域は、従来の「河川整備において基本となる降雨を前提」としたものから「想定し得る最大規模の洪水に係る浸水想定区域」に拡充されました。
浸水想定区域内での各種水害対策は、今後更なる強化が必要になりますが、家に対する浸水対策技術に関する普及はまだこれからの状況です。そこで、この官民共同のプロジェクトにより、「豪雨・水害」への備えや居住者の防災行動等に資する研究開発を実施し、各種対策工法や住宅におけるリスクの明確化、実験施設の新たな評価手法の構築、さらには各種対策工法の標準化等につなげることで成果の確実な社会実装を目指します。
- 取材申込み先
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PR事務局(共同ピーアール株式会社内)担当:長尾、広岡
- 実験主体
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国立研究開発法人防災科学技術研究所、株式会社一条工務店
- 日時
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令和2年10月13日(火)10:30~15:00
- 全体日程
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今回の公開実験は、実験前後に実験棟を公開します
- 10月12日(月)
- 13:00~16:00 実験棟公開 ※実験棟内部の見学・撮影可(希望者のみ)
- 10月13日(火)
- 08:30~09:30 実験棟公開 ※実験棟内部の見学・撮影可(希望者のみ)
10:30~11:30
挨拶(防災科学技術研究所理事長:林 春男 一条工務店社長:岩田 直樹)
実験概要説明(実験責任者)
11:30~13:30 「耐水害住宅」公開実験 ※水位3mまで注水
14:00~15:00 実験結果に関する記者会見 - 10月14日(水)
- 09:00~12:00 実験棟貯水槽排水
13:00~16:00 実験棟公開 ※洪水後の室内の様子がご覧頂けます(撮影可、希望者のみ)
※工程の都合上、実施時間が変更される場合があります。
- 場所
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茨城県つくば市天王台3-1防災科学技術研究所 大型降雨実験施設(E区画内)
- 対象
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報道機関 ※一般の方への公開は行っておりませんのでご了承ください。
実験概要
- 1)大型降雨実験施設
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大型降雨実験施設は、自然降雨に近い状態を再現できる世界最大級の規模・能力を有する散水施設です。最大で約3,000㎡(44m×72m)の範囲に散水ができ、ゲリラ豪雨と呼ばれる短時間での局地的な豪雨を再現する、10分当たりの雨量50mm(1時間当たりの雨量300mm)、最大雨滴粒径6mm程度の降雨が可能です。
- 2)「耐水害住宅」実験について
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大型降雨実験施設内(E区画)の地面を掘削して築造した大型貯水槽内に、木造軸組工法による一般仕様住宅(A棟)及び木造枠組壁工法による耐水害住宅(B棟)の実大実験棟を建築し、水深3mまでに達する洪水状態を再現します。それによって住宅に生じる浸水等の現象の観察及び2棟の建物の性能比較、及び、耐水害住宅が浮上して、水が引いた後に着地するまでの挙動を検証します。実験時は、各種計測機器やビデオカメラを多数設置し、両建物の状況をリアルタイムに記録・確認します。 (今回は実験の都合上、実験中に雨は降りません)
- 3)「耐水害住宅」仕様について
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浸水時に建物自体をあえて浮力で水に浮かせることで水没と水圧から免れ、さらに「係留装置」にて流失を防ぎ、水が引いた後すぐに生活復旧できる「耐水害住宅」を開発しました。一般的な仕様の住宅において、床下・床上浸水すると考えられる箇所は複数存在します。そこで建物本体だけでなくサッシ等の開口部の水密性の向上、水の浸入・逆流を防ぐ特殊弁の採用などの対策を施しました(図中1~5)。また、外部の電気設備は、その本体や稼働に関わる部品を水没から免れる高さに設置することで、被災後も電気や給水・給湯などのライフラインを確保しています(図中6~9)。
そして、浮力対策として、一定の水位に達した際に「注水ダクト」で水をあえて床下に入れて重りにして浮上を防ぐ仕様(図中10)、及び、浮力に逆らわずに安全に建物を水に浮かせ「係留装置」で元の位置に戻す仕様(図中11)の2つの仕様を開発しました。(今回の実験は、建物を浮上させる「係留装置」の仕様となります。)
※耐水害住宅の仕様詳細につきましては、当日配布資料をご用意します。【補足写真】