(NTU Singapore scientists invent handheld device for quick monitoring of drinking water quality)
2019/4/15 シンガポール・南洋(ナンヤン)理工大学 (NTU)
・ NTU が、飲料水に含まれる微量の重金属を僅か 5 分で検出する、ポータブルなセンサーデバイスを開発。
・ 同センサーは、キレート剤とオプティカル測定システムを組み合わせたもの。キレート剤は血液中で検出した重金属イオンに結合し、重金属イオンと他の分子や酵素の相互作用を防いで体外への排出を促す。オンサイトでの水質検査に加え、家庭用の水処理システム等の機器に統合できる。
・ 重金属は高濃度でない限り、色合いや味覚、臭いで特定できないことから、飲料用水の品質検査は通常研究室で実施される。このような検査は極めて正確であるが、完了には最低でも一日かかる。
・ 現在市場にあるポータブルなセンサーデバイスは重金属を高速検出できるが、試験前にサンプルと緩衝液の混合プロセスを要する。また、このような試験キットのセンサーは酸素、熱や湿度の影響を受けるため、空気に曝された後30分以内に使用する必要がある。
・ 他のポータブルセンサーには、センシングプローブに水銀等の金属電極を使用するものや、試験紙の色の変化で判断するものがあるが、環境への重金属の漏出の懸念や読み取りにおける客観性の課題がある。
・ 新ポータブルセンサーは、使い捨てセンサーカートリッジにサンプル水を数滴垂らすだけで ppb の精度で重金属を検出。このような高感度は世界保健機構(WHO)標準に沿ったシンガポールの安全性限界要件に合致するもの。同センサーは、同国の Environmental Public Health Act が定める 10ppb を上回る、5ppb レベルで鉛を検出できる。
・ 同センサーはまた、酸素の影響を受けずに最高 40℃で作動。市販のセンサーの 2 倍の性能で、24 種類の重金属をオンサイトで高速検出する。
・ 同センサーは、キレート剤で改変したオプティカルファイバーセンサーと、これを照射するレーザーより構成。接続したプロセスユニットが結果を表示する。サンプル水に重金属汚染があれば、オプティカルファイバーセンサーのキレート剤に金属イオンが結合して出力光のスペクトルが変化し、プロセスユニットがサンプル中の重金属濃度を計算。全行程は約 5 分で完了する。
・ 同センサーは市場への投入に見合う充分な機能を備えるが、現在、水ろ過システムや電気ケトル等の家庭用品への同技術の導入について検討している。
・ 同技術について特許 2 件を出願し、NTU のスピンオフ企業である Waterply を設立。地元企業の協力により同センサーの精度向上に向けたデータ収集を実施中。同社はまた、中国の国有企業との協力で水質汚染に対処するための次世代水質センサーを開発している。
・ 本研究は NTU の南洋環境水処理研究所(NEWRI)および NTU 企業の NTUitive が支援した。
URL: https://media.ntu.edu.sg/NewsReleases/Pages/newsdetail.aspx?news=38f2f666-7fb5-4fd6- 8d39-c132538acc62
(関連情報) ACS Sensors 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
An Advanced Hand-Held Microfiber-Based Sensor for Ultrasensitive Lead Ion Detection URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssensors.8b01031
<NEDO海外技術情報より>