2023-09-05 国土技術政策総合研究所
国総研資料 第 1251 号
【概 要】
気候変動への世界的な関心が高まる中,日本ではカーボンニュートラルポート(CNP)政策が掲げられている.本稿では,CNP政策のより確実な推進を目的として,浚渫土砂の有効活用を通じた安定的な封じ込めにより,含まれる有機炭素の貯留効果を港湾における新たな気候変動対策として提案した.封じ込めによる炭素貯留に加え,ブルーカーボン生態系(BCE)の基盤材を浚渫土砂の有効活用先とすることでBCEによる炭素貯留効果が増加し,これらの対策がCNPの実現と残余排出の吸収に大きな意義を持つことがシナリオ分析により明らかになった.CNPの実現に向けた次世代エネルギーの輸入拠点の整備が求められているが,本稿の結果は,浚渫土砂の有効活用による封じ込めを前提に浚渫事業自体にも気候変動対策としての意義があることを示唆している.日本のように環境政策や港湾ガバナンスにより,政府や港湾管理者のイニシアチブが重要となる国では,これらの新しい対策の実現可能性は政府のイニシアチブが重要となるが,港湾運営に加えて港湾整備に焦点を当て,浚渫土砂と BCE を炭素吸収源として利用することは、世界を先導する取組みとなる.
【担当研究室】
港湾・沿岸海洋研究部
【執 筆 者】
杉村佳寿,岡田知也,内藤了二,桑江朝比呂,中川康之
研究資料全文
1,234KB
目 次
1. はじめに
2. 先行研究の整理
3. 日本の港湾環境政策とその特徴
4. 浚渫土砂の有効利用による炭素貯留
4.1 港湾事業における浚渫土砂の有効利用
4.2 浚渫土砂の炭素貯留効果に関する2つの考え方
4.3 想定される議論
5. 浚渫土砂の有効活用とBCE創出による炭素貯留のポテンシャル
5.1 浚渫土砂の封じ込めによる炭素貯留の定量的効果
5.2 CNP実現に向けた新たな対策の意義
5.3 新たな対策の政策への反映
6. おわりに
参考文献