『レーザー打音検査装置』 の社会実装に向け大きく前進!
2021-03-15 量子科学技術研究開発機構
株式会社建設技術研究所(代表取締役社長:中村哲己)は、QST認定・理研ベンチャーの株式会社フォトンラボとの業務提携、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)との共同研究の成果により、道路トンネルの定期点検業務において、人力打音検査を代替え・定量化する「レーザー打音検査装置」を国内で初めて診断支援に活用しました。
写真1 道路トンネル目地部におけるレーザー打音検査状況
概要
株式会社建設技術研究所(本社:東京都中央区、代表取締役:中村哲己、以下「建設技術研究所」)は、株式会社フォトンラボ(本社:東京都中央区、代表取締役:木暮繁、以下「フォトンラボ」)との業務提携契約、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(本部:千葉県千葉市、理事長:平野俊夫、以下「量子科学技術研究開発機構」)との共同研究の成果として、道路トンネル定期点検業務の支援技術にロボット点検技術のひとつである「レーザー打音検査装置」を国内のトンネルで初めて診断支援に活用しました。
研究の背景
従来、トンネルなどの保守保全作業のうち、点検は専門技術者の目視確認や打音検査により行われ、多くの手間や時間がかかるとともに作業中のつい落などの危険性が伴うものでした。また、打音検査を実施できる技術者不足も今後懸念され、これを補完・支援するための遠隔・非接触計測技術の社会実装が強く求められていました。建設技術研究所とフォトンラボは、このニーズに応えるため、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究成果である「レーザー打音技術」の本格的な社会実装に向け準備を進めてきました。
国内初の社会実装「レーザー打音検査装置」
今回発表するのは、量子科学技術研究開発機構と共同研究を進めてきた「レーザー誘起振動波計測(レーザー打音)技術によるコンクリート診断の高度化に関する研究」の成果に基づき、一般的に変状が多く発生することが知られているトンネル覆工コンクリート目地部について、「レーザー打音検査装置」を用いた計測と診断支援です。「レーザー打音検査装置」では、ハンマーの代わりに覆工コンクリートを振動させる「振動励起レーザー」と耳の代わりに振動を計測する「振動計測レーザー」の2種類のレーザーを用いて、打音検査を遠隔・デジタル化します。今回は、人力打音の結果、内部損傷が懸念される箇所について、「レーザー打音検査装置」を用いた計測を行い、定量的なデータとして記録するとともに、損傷を模擬した供試体の計測データと比較することで、内部損傷の診断の品質向上に活用しました。
今回の技術のメリット
「レーザー打音検査装置」による計測では、技術者が危険な高所作業で打音検査を行う必要がなく本質的な安全が確保されるとともに、個人の技量差を解消することができます。さらに本装置で計測することにより、コンクリート損傷の診断品質が向上するとともに、トンネル健全性に関して定量的に記録を残すことができ、例えば数年前の記録と比較することで、コンクリートのはく落につながる劣化の進行度を診断することが期待できます。このような記録を継続的に取得することで、定量的な内部損傷等の経年変化の把握や劣化の進行把握も可能になり、点検・維持管理活動の効率化、高度化に寄与すると考えられます。
今後の展望
今回の「レーザー打音検査装置」は、トンネルの覆工コンクリートに着目して開発されたものですが、今後はさまざまなインフラ構造物等への適用を進めるとともに、人の手だけに頼らない安全で確実な点検ロボットの実現に向けた開発を進めて参ります。
特徴
(1)人力打音と同等以上の点検が可能です
量子科学技術研究開発機構との共同研究「レーザー誘起振動波計測技術(レーザー打音)によるコンクリート診断の高度化に関する研究」においては、複数のベテラン点検技術者が「欠陥」と判定した箇所について、レーザー打音検査装置でも異常を検知できることを確認しています。
■人力打音とレーザー打音検査装置の比較
写真2 供試体を用いた人力打音との比較実験状況(右側の図:レーザー打音検査装置の結果)
(2)高所作業車が不要です
レーザー打音検査装置の計測可能な距離は10m程度となります。車道上のレーザー打音検査装置により、トンネル覆工コンクリート天端の打音が可能です。
■トンネルにおけるレーザー打音検査装置の測定状況
写真3 トンネルにおける計測状況