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合成開口レーダ(SAR)画像による土砂災害判読の手引きの作成

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国総研レポート2020(研究期間:平成29年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 土砂災害研究部 土砂災害研究室
室長(博士(農学)) 中谷 洋明
主任研究官 野村 康裕
研究官 鈴木 大和
交流研究員 松田 昌之

(キーワード) 合成開口レーダ(SAR)画像,土砂災害調査,画像判読,災害対応

1.共同研究の実施
当研究室は、平成29年度から国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と「陸域観測技術衛星2号「だいち2号」による土砂災害監視手法の開発に関する共同研究」を進めてきた。本研究では、だいち2号によって観測された合成開口レーダ(以下、「SAR」)画像を使って土砂災害が発生した位置や範囲を速やかに特定する方法を考案した。また、研究期間中に発生した平成29年7月九州北部豪雨や平成30年北海道胆振東部地震の災害対応時に考案した手法を適用し、共同研究成果の有効性と課題を明らかにした。これらの結果に基づき、地方整備局等における災害対応への実用化を目指して、SAR画像による土砂災害判読調査手法について解説したマニュアルを作成することとした。

2.本調査手法の特長
だいち2号の打ち上げ(平成26年)以降、国内各地のアーカイブ画像が多量に蓄積されてきた。本研究では、これらを活用して災害前後の変化を可視化することで、単偏波SAR画像による高度な判読技術を必要とせずに、直感的で容易な目視判読を可能とした。図に示すように、従来のSAR画像を用いた土砂災害調査では斜面崩壊による地形変化や湛水域の形成を画像の濃淡で読み取る必要があった(図中段:国総研資料No.760)が、本手法では変状部分を着色して災害初動時における迅速な情報提供を実現した(図下段)。
また、近年多発している大規模な土砂災害の多くにおいて本手法を適用してきた。実際の災害対応で得られた本手法による判読精度や特性、対応に要した時間など情報は、地方整備局等で実用化を検討する際の重要な資料となる。本手法による運用面の情報に加え、衛星と斜面方向の関係による特性の違いなどの各種条件を整理し、迅速かつ的確な初動対応を実現した事例としてガイドラインに示す。

図 本手法の適用による視認性向上結果

3.ガイドラインの作成
本共同研究成果は、国総研資料第1110号「合成開口レーダ(SAR)画像による土砂災害判読の手引き」として発行した。

☞詳細情報はこちら
1) 国総研資料 No.1110
2)土木技術資料 Vol.61 No.12 2019 pp.16-19

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