国総研レポート2020(研究期間 : 平成 30 年度~令和元年度)
国土技術政策総合研究所 空港研究部 空港施工システム室
室長 山口 洋幸
専門官 石田 普賢
係員 森永 俊
(キーワード) 空港土木施設、維持管理、基準
1.はじめに
空港では、安全運航及び定時性の確保を目的に、土木施設の機能を正常に保つための点検、清掃等を実施している。しかしながら、航空機運航や空港運用に影響を及ぼす事例が発生していることから、現状の維持管理の基本的な考え方や実施頻度の見直し、達成すべき維持管理水準の設定等が必要となっている。現場条件に応じた効率的かつ効果的な維持管理を実現するために、調査研究している内容について本稿で紹介する。
2.維持管理状況の把握
空港の経常的な維持管理について、草丈状況では、平均値で30~70cmの範囲が多いが、雑草が繁茂し、それ以上の草丈となる状況がみられる。夏~秋の時期に航空機と鳥の衝突実績が多いのは、草刈後に草丈が短くなり鳥が餌となる虫等を捕食しやすい環境が発生すると考えられ、雑草の繁茂が影響して障害が多く発生していると考えられる。また、丈の高い雑草は着陸帯等の草地における消火救難活動や空港警備対策へ悪影響を及ぼすか、地上航空灯火の前面の草丈が高いと、見えづらい状況も発生している。
写真 航空灯火、警備センサーの障害
その他、滑走路等の舗装面上には、石ころ、ゴム片や金属片等の異物が見られ、航空機のエンジンが吸込むと大規模な修理が必要となる。これらの異物は舗装周辺からの流入や、航空機の運航の際に発生しているものと推測される。
写真 異物の飛散(小石、標識片)
3.維持管理水準の検討
維持管理水準の定量的指標の適用性に関して、各空港の維持管理を取り巻く環境に照らして検討し、草刈りの実施時期は4月から12月で妥当との結果となった。しかしながら、各空港の気候等の地域差や現場条件の関係から、実施回数を明確に判定することができなかったため、今後も検討を継続することとした。また、舗装面清掃工等については、実施頻度は年間4~6回の実施が妥当と判断された。ただし、実施時期については、空港ごとの条件が異なるため、技術会議や、維持管理官署との情報交換を実施し、継続的に検討することとしている。
図 維持管理水準定量化のイメージ
4.終わりに
本研究成果は、維持管理の基本的な考え方や実施頻度等について、令和2年度以降の空港土木工事共通仕様書や積算基準等への反映を予定している。