2023-09-05 国土技術政策総合研究所
国総研資料 第 1252 号
【概 要】
日本のコンテナ港湾の国際競争力の低下を受け,日本政府は1990年代から港湾改革を実施してきたが,少なくともコンテナ貨物取扱量の面では,日本の港はプレゼンスを低下させてきた.しかし,他のアジア新興国の成長に伴い,港湾取扱量の相対的なシェアは当然低下するため,日本の港湾政策や国際的なプレゼンスを取扱量だけで評価するのは適切ではないとも考えられる.本稿では,日本の港湾政策の対象である京浜港と阪神港の世界の海上コンテナ輸送ネットワークにおける重要性を,ネットワーク分析による中心性指標を用いて評価した.分析の結果,アジア主要港が常に上位に位置する一方で,各中心性指標における京浜・阪神港の順位が低下していることが明らかになった.しかし,政策による港湾の活性化に加え,アジア主要港のネットワークにおける重要性が増し,両港のアジア主要港とのリンクが強化されたことと相俟って,京浜・阪神港のネットワークにおけるプレゼンスは,貨物取扱量の順位の低下ほどには低下していない.また,3つのシナリオ分析では,国内ハブ機能の強化という政策目標が完全に達成されれば,京浜・阪神港はさらにプレゼンスが向上し,トランシップ機能をアジアのハブ港に依存する政策に転換すれば,ネットワーク上でのプレゼンスが確保されることが明らかとなった.また,日本の港湾は釜山港への依存度が高いため,ネットワーク構造上,釜山港の機能停止に対して極めて脆弱であり,この問題を解決するためには,京浜・阪神港を国内ハブとして機能させることが重要である.中心性指標に加えてネットワーク構造の脆弱性を考慮することは,日本のコンテナ港湾政策の方向性を検討する上で非常に重要である.
【担当研究室】
港湾・沿岸海洋研究部
【執 筆 者】
杉村佳寿,赤倉康寛,川崎智也
研究資料全文
3,171KB
目 次
1. はじめに
2. 先行研究の整理
3. 方法論
3.1 global maritime container networkの作成
3.2 中心性指標
4. 日本のコンテナ港湾政策
5. 分析結果
6. 考察
7. 結論
参考文献