2021-10-05 IHI
IHIは,カーボンニュートラル社会の実現に向けて,アンモニア(*1)を石炭火力やガスタービンの燃料として利用する技術開発を進めています。アンモニアを燃料として広く利用するためにはアンモニアのサプライチェーンの構築が必要ですが,現在のアンモニアの用途は限定的であり,その受入・貯蔵のためのインフラは不十分です。そこでIHIは,これまで培ったアンモニア受入・貯蔵技術を拡充することで,輸入される大量のアンモニアを効率的に受け入れるインフラを早期・低コストで確立するための大型アンモニア受入基地(*2)の開発に着手しました。現状では限定的な受入設備規模を,液化天然ガス(LNG)受入基地と同規模へ大型化することを目指しており,2025年頃の開発完了を目指します。
大型アンモニア受入基地のイメージ図
2050年カーボンニュートラルという日本政府の目標の実現に向け,アンモニアを火力発電の燃料として利用することへの期待が高まっています。2021年6月に閣議決定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では,2050年に,現在の国内アンモニア消費量の約30倍となる,年間3,000万トンの需要が生じると想定されています。アンモニアは既に肥料や化学製品の原料として流通していますが流通量は限定的であり,今後の燃料需要に応えるためには,LNGと同様の流通形態が必要になると想定されます。
そこでIHIは,大型アンモニア受入基地の開発のため,燃料アンモニアの大量需要が見込まれる地域を想定し,運用および防災に関する設計条件の検討を開始しました。これまでに前例のない大型アンモニア受入基地の開発には,IHIが保有する腐食に関する知見や材料に関する実験技術を利用して,従来のアンモニア受入基地の数十倍規模への大型化を進めます。また,受入基地の実現には貯蔵タンクの大型化が必須であるため,LNG級大型アンモニア貯蔵タンクの開発にも着手しました。
IHIは,国内でLNG受入基地の約3割, LNG貯蔵タンクにおいては約5割の設計・建設実績をもつ国内トップメーカーです。大型貯蔵タンクにおいては,世界最大級の容量となる25万KLタンクの建造実績も有しています。これらの技術を生かし,貯蔵タンクも含めた大型アンモニア受入基地の総合的な開発を進めてまいります。
今後もIHIは,アンモニアの利用技術開発や将来の需要増大へ対応すべく燃料アンモニアサプライチェーンの構築を進め,カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。
(*1)
燃料としてのアンモニアの特長: アンモニアは,水素を高密度に含み,扱いやすいという優位性から,水素エネルギーの高効率かつ低コストな輸送・貯蔵手段(エネルギー・キャリア)となるほか,火力発電の燃料として直接使用することも可能です。既に肥料や化学製品の原料として広く利用されているため,製造・輸送・貯蔵までの一貫した技術がすでに確立しています。炭素を含まず,燃焼時にCO₂を排出しないことから,発電分野の脱炭素化における有望な燃料と期待されています。
(*2)
受入基地:国内外から船で輸送されてきた液化燃料等を受け入れて貯蔵し,需要に応じて再度ガス化し,パイプラインで発電所等の消費先に送り出す施設です。