2019/7/3 ドイツ連邦共和国・ミュンヘン工科大学 (TUM)
・ TUM の学際的研究チームが、金属有機構造体(MOF)をテンプレートとする技法を用いて、燃料電池触媒用の新しい白金ナノ粒子を開発。最適化された触媒の最大活性値は、コンピューター計算上の予測数値に極めて近く、現在市販されている最良の触媒の二倍。白金使用量削減による燃料電池の低コスト化への寄与が期待される。
・ 燃料電池は、風力発電所などの余剰電力から生産する水素を消費し、電気自動車のエネルギー源として十分活用できるが、触媒に使用されている白金が非常に高価であるため、適用が限定的。
・ 本研究では、白金の利用効率を高めるため、白金粒子の粒径を最適化し、現在市販されている最良な触媒の二倍の活性を実現した。
・ 燃料電池は、水素が酸素と反応して水を生成する過程で発電するが、この変換を最適化するためには、両電極に高度な触媒が必要で、白金は酸素還元反応の促進に重要な役割を担っている。
・ 研究チームはまず、システム全体のコンピューターモデルを作製。高活性の触媒効果を維持したまま、白金原子のクラスターの大きさをどれ程まで微小にできるか検証したところ、1nm の白金粒径あたり約 40 原子数の状態が最適であることが判明。このサイズの白金触媒は、質量は微小であるが、高い質量比活性を獲得。
・ 本研究の成功には、同大学の触媒研究センター(CRC)で学際的な研究チームを組み、取り組んだことが大きく貢献。モデリングの理論的な可能性、共同ディスカッション、実験から得られる物理的、化学的な知見などを組み合わせて、理想的な触媒設計の最適な形状、サイズやサイズ分布を提示。 CRC では、計算された白金ナノ触媒の作製や、実験的な試験を可能とする専門的技術も保有。・ 今回、理論的予測は正確に実証されたが、商用化には白金の削減量を現在の 50%から、さらに 80 %まで引き上げなければならない。
・ 今後は、構築したコンピューターモデルを有効に活用し、球状のナノ粒子の他にもより複雑な形状の高活性触媒を作製する計画。複雑な形状には複雑な合成法が必要なため、コンピューターによる計算や実験などの研究が一段と重要になる見込み。
URL: https://www.tum.de/nc/en/about-tum/news/press-releases/details/35554/
(関連情報)
Angewandte Chemie International Edition 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料) Optimizing the Size of Platinum Nanoparticles for Enhanced Mass Activity in the Electrochemical Oxygen Reduction Reaction
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/anie.201904492
<NEDO海外技術情報より>