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雨量強度Rrの解析(レーダ雨量計)

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2019-03-28 更新 (河川情報センター)

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雨量強度Rrの解析

レーダ雨量計で観測された、極座標メッシュの平均受信電力Prは、レーダ方程式により反射因子Zに変換され、次にZ-R関係を用いて、レーダ雨量Rrが算出されます。またマルチパラメータレーダ雨量計で観測される極座標メッシュの偏波間位相差Φdpは、単位距離あたりの変化量(距離微分)から偏波間位相差変化率(比偏波間位相差)Kdpに変換され、次にKdp-R関係式を用いて、レーダ雨量Rrが算出されます。こうして算出された極座標メッシュのRrを元にレーダの合成が行われています。

 1.レーダ方程式─(受信電力Prとレーダ反射因子Zの関係)─

受信電力Pr(mW)とレーダ反射因子Z(mm6/m3)、レーダ雨量計から雨滴までの距離r(km)との間には次の関係があります。

雨量強度Rrの解析(レーダ雨量計)

この関係式を、レーダ方程式といいます。CとFはそれぞれ、レーダ定数、総合補正係数といい、雨滴の状態、レーダ雨量計のハードウエアや設置条件により決まる定数です。測定された受信電力Pr、雨滴までの距離rから、レーダ反射因子Zが求められます。CとFの値は機器によって異なり、これに係る諸元値は経年的に確実に管理をする必要があります。
なお距離rは、レーダ雨量計が電波を送信してから受信するまでの時間t(s)から、次の関係式を用いて求められます。

※ 雨量強度と受信電力の関係
雨量強度と受信電力の関係の一例を図1に示します。
受信機の出力信号には、降雨からの受信信号の他に山岳等によるグランドクラッターからの信号が含まれているので、MTIにより不要な信号を除去し、降雨からの受信電力のみを抽出します。
瞬時瞬時の降雨からの受信電力は、大きく変動しており(標準偏差で5.57dB)、距離方向及び方位方向の平均化とスキャン平均を行うことにより、平均受信電力として処理されます。

【図1】 雨の強さと受信電力の関係

※ レーダ反射因子
雨滴から反射して返ってくる電波の受信電力は、雨滴の直径をDとした場合、単位体積中のΣD6に比例することが知られており、このΣD6(mm6/m3)をレーダ反射因子Zと言います。
※ レーダ定数C
レーダ定数Cは、雨または雪の誘電係数(| (ε-1)/(ε+2) |2)とレーダ装置の諸元によって表されます。


誘電係数は、一般的な値としては、雨が0.93、雪が0.21と言われています。雨におけるCは概ね6×10-7~2×10-7程度であり、10logC=-62(dB)~-67(dB)となります。
※ 補正係数F
補正係数Fはソフト補正係数Fsとハード補正係数Fhからなり、Fsはレーダ方程式が成り立つ前提として以下の3つの仮定が、完全には満たされないことに起因する誤差を補正するものです。
1.ビームが完全に雨滴に満たされる
2.雨滴が完全に球形である
3.雨滴の直径は波長に対して十分小さくレイリー近似が成り立つ
これら3つの仮定による誤差はおよそ-6dBであり、これに対数平均を行うことによる誤差の補正値(-2.5dB)を加え、一般的にFsは、10logFs=-8.5dB(=-6dB+(-2.5dB))程度の値が用いられています。Fhは導波管ロスなどで、レーダ雨量計毎に、実測して求めます。
※ MP化したレーダでは補正係数Fをレーダ定数Cに含める場合があります。

 2.Z-R関係による雨量強度の算出

レーダ雨量計の受信電力Prから求めたレーダ反射因子Zは、レーダビーム内に分布する雨滴の量を反映する値であり、雨量強度と関係があることが知られています。このため、実際の降雨におけるZとRg(地上雨量)との関係式(Z-R関係)をあらかじめ求めておくことによって平均的な雨量強度Rrを算出することができます。

ここでBとβは雨滴定数と呼ばれ、一般的な値は雨の場合Bが200、βが1.6、雪の場合はBが500~2000、βが2.0と言われていますが、雨滴の粒径分布等によって値が変化するため、台風、雷雨、地雨といった降雨の成因によって異なり、一降雨の中でも時々刻々変動します。
実際には、レーダ雨量計の設置後に行われるMTIの調整状況等によっても大きく変わるため、レーダ雨量計ごとに最新の降雨データを用いて適切な値を求めておく必要があります。
Z-R関係によって求めた雨量強度は、あくまでも統計的平均値であり、必ずしも時々刻々の雨量強度を定量的に示すものではありません。Cバンドレーダオンライン合成では、全国26基のレーダ雨量計を合成する過程で、地上雨量による補正を行うことにより、観測精度を保っています。


【図2】 雨滴定数Bβと降雨成因の関係
(出典:Fujiwara, M.: Raindrop size distribution from individual storms, J. Atomos. Science, 22, p. 585, 1965.)

 3.Kdp-R関係による雨量強度の算出

レーダ雨量計の偏波間位相差Φdpから求めた比偏波間位相差Kdpは、レーダビームがあたった雨滴の扁平度合いを反映する値であり、雨量強度と相関があることが知られています。このため、実際の降雨における雨滴粒径分布の観測データを用いた散乱計算により、KdpとRとの関係式(Kdp-R関係)を求めておくことによって、雨量強度Rrを算出することができます。

ここでa1とa2は係数で、雨滴粒径分布の観測データを用いた散乱計算により導出され、仰角依存性を考慮して観測仰角(EL[deg])の3次式で近似されています。
Kdpを用いて算出される雨量は前出のZ-R関係により算出される雨量よりも、山岳による遮蔽の影響や、強雨による減衰の影響、降雨成因の違い(雨滴の粒径分布の違い)の影響を受けにくいため、地上雨量による補正をしなくても、一定の観測精度を期待でき、補正処理の計算時間を要しない分、ほぼリアルタイムに雨量を算出できます。
XRAINではこのKdpを用いた雨量算定を、Z-R関係による雨量算定と併用することにより、Kdp法による観測が適切でない時間帯のデータを補い、トータルな観測精度向上を図っています。

 4.偏波パラメータの利用

MP化したレーダ雨量計では、以下に示す複数の観測値(偏波パラメータ)があり、一部の偏波パラメータは雨量Rrの算定の際の、減衰補正や異常値除去等の品質管理に利用されています。

【表1】 MPレーダ観測パラメータ

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