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船のビッグデータを活用した政策支援

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国総研レポート2020(研究期間 : 平成 20 年度~)
国土技術政策総合研究所 港湾研究部 港湾計画研究室
室長(博士(工学)) 安部 智久
研究官 中島 健司

(キーワード) 自動船舶識別装置(AIS),船舶動静,ビッグデータ

1.はじめに
国際条約に基づき、船舶はAIS(自動船舶識別装置)信号を発信することが義務づけられている。船舶間の衝突防止が主目的ではあるが、当研究室では主要な海域でAIS信号を受信・蓄積しそれを分析することで港湾の開発・運営に貢献している。本稿ではこのような「船舶ビッグデータ」を活用した取り組みを紹介するとともに、今後の展望について述べる。

2.船舶ビッグデータとしてのAIS
AIS信号そのものは、船舶が数分おきに自船の位置、進路、船速、船長等をVHS信号で発・受信するものであり、リアルタイムで受信できるほか、多数の船舶の動静を同時に把握することが可能である。例えば当室では久里浜庁舎に受信設備を有しているが、東京湾に所在する船舶の動きの多くが把握できる。加えて、設置以降これまで10年以上に亘りデータを蓄積している。また近年AIS信号は陸上の受信設備のみでなく衛星によって取得することが可能となり、全球レベルでのデータの取得が実現している。船舶は港湾の重要な利用者の一つであり、AISは利用者による安全・効率的な港湾利用に貢献している。

3.これまでの活用事例
港湾内での船舶動静の把握により、泊地等の水域施設の計画や利用状況の把握、港湾関係工事での安全確保といった目的での利用がされている。また東日本大震災の際には、東京湾への津波来襲時の船舶の避難状況を分析することにより、非常時の水域確保に向けた検討に寄与している。さらに大きなスケールでは、衛星データの活用によって、近年脚光を浴びつつある北極海航路の航行実績を分析し、国総研HPにより情報提供している。

図:2019年台風15号通過時の船舶挙動(千葉沖)

4.現在の取り組みと将来展望
近年強力な台風の襲来により船舶の走錨による港湾施設への衝突も発生していること等から、安全な水域の利用に向け、台風襲来時の船舶挙動を詳細に分析している。図はその一例であり、走錨船舶の特定やその船速の推計が可能となっている。また関係者がリアルタイムで必要な情報を共有することは、通常時・非常時問わずタイムリーかつ適切な行動に繋がる。国土交通省の港湾物流情報システムでは当室提供のAISデータを活用してコンテナ船の入港状況がリアルタイムで提供されている。さらに非常時のより迅速な対応のため、船舶の位置情報提供により港湾BCPを支援する試みを行っている。これまでに蓄積されたデータの活用も将来的に掘り下げるべき分野である。例えば、人工知能などのアルゴリズムも活用し、過去の実績から水域利用パターンを認識し、非常事態発生時の船舶挙動の予測に繋げる等、新たな分野への展開も期待される。

☞詳細情報はこちら
1) 国総研資料No.1052, No.923, No.782, No.754 http://www.ysk.nilim.go.jp/kenkyuseika/kenkyusyosiryou.html

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0905港湾及び空港
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