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多自然川づくりサポートセンターにおける技術支援報告

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A report on technical assistance provided by the Nature-oriented River Management Support Center

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

自然環境グループ 研 究 員 末永 匡美
自然環境グループ グループ長 森 吉 尚
主席研究員 宮本 健也
自然環境グループ 研 究 員 内藤 太輔
自然環境グループ 研 究 員 白尾 豪宏
自然環境グループ 次 長 都築 隆禎
まちづくり・防災グループ 研 究 員 阿部 充

1. はじめに
平成 2 年から始まった多自然川づくりの推進に合わせて、(公財)リバーフロント研究所では全国の多自然
川づくりへの活動支援を継続的に実施している。本稿は令和元年度の支援活動の内容について報告する。

2. 多自然川づくりサポートセンターとは
「多自然川づくり」においては、「多自然川づくり基本指針」(平成 18 年 10 月)や「中小河川に関する河道計画の技術基準」(平成 20 年 3 月策定、平成 22 年 8 月改訂)等を基本としつつも、実際の現場に応じてその適応を考えることが必要である。
多自然川づくりサポートセンター(以下「サポートセンター」という)は、現場における多自然川づくりの知見、優良事例の収集、収集した知見の全国発信・普及を行うことを目的として、平成 20 年 2 月(公財)リバーフロント研究所に設置された。
サポートセンターの目的は以下のとおりである。
(1)技術資料の作成・公表
(2)技術の普及・人材育成
(3)河川整備の現場からの問い合わせ対応
(4)川づくりのプロセスに関するサポート

3. 令和元年度の活動実績
令和元年度は、(3)河川整備の現場からの問い合わせ 3 件(意見・相談 2 件、現地派遣依頼 1 件)、(4)
川づくりのプロセスに関するサポート 3 件(意見・相談 2 件、講習会等への講師派遣依頼 1 件)の合計 6 件
に対応した(図-1参照)。

図-1 令和元年度サポートセンターに
寄せられた相談・依頼の内訳

以下に、本年度に実施した活動の一例を示す。
河川整備の現場からの問い合わせ
○落差工改修における水生生物への配慮についての現地派遣依頼
対象河川は、表層地盤が砂礫で構成されていることから、表流水が地下に浸透し、瀬切れが発生する河川である。一方で、処々に湧水が発生しており、湧水が豊富な区間では、多様な水際が形成されている。特に未改修区間の既設落差工直下流には、流水により深みが形成され、渇水時に水生生物の避難場所として機能している(写真-1参照)。

写真-1 未回収区間の現況

写真-2 改修済み区間の現況

しかし、改修済み区間では、コンクリートブロック護岸の設置による流路の固定化、及び落差工下流に洗掘対策として設けられた護床ブロックにより深みが消失し、水際、水域の多様性が低下している(写真-2参照)。
このような状況を懸念した市民団体から、今後の河川改修の改善に関する相談が寄せられた。サポートセンターでは、市民団体に講師を派遣して合同現地見学会を行い、現地にて河川改修に関する以下のアドバイスを行った。
① 水際の多様性を高めるために、改修断面のうち余裕のある高水敷幅を縮小するとともに、低水路の護岸工法を 5 分勾配として低水路幅の拡幅を図る
(図-2参照)。

図-2 低水路幅の拡幅イメージ
(出典:多自然川づくりポイントブックⅢ H20/リバーフロント整備センターを基に一部加筆)

② 落差工下流の洗堀対策として、計画河床面を基準に護床ブロックを設置すると、改修前に形成されていた深みが消失することから、水辱池を設け、洗堀を防止するとともに、これまであった深みを保全する(図-3参照)。

図-3 水辱池設置イメージ

以上のアドバイスは、合同現地見学会後に提案書としてとりまとめ、市民団体に提供した。
○堤防のり面への草花等の植付け種の留意点に関する問い合わせ
堤防法面被覆の治水上の役割、及び現状の植生管理の実態を説明し、野草等を用いた堤防のり面被覆の取組み事例を紹介した。また、植付け種の留意点として、①外来種を用いた場合、堤防のり面が外来種の種子供給源となり、河川生態系に影響を与える可能性があることから採用を避ける、②河川管理者と今後の植生管理について十分に協議することを説明した。

川づくりのプロセスに関するサポート
○河川改修における環境配慮の妥当性と今後の整備方針についての相談
多自然川づくりの観点からみた整備手法を評価し、これからの整備における更なる工夫について助言することが可能な専門知識を有する講師を紹介した。
○大臣認定制度に関する相談
多自然川づくりポイントブックに掲載している大臣特任制度について、制度を利用した事例と例規集を提供した。

その他、市民団体、建設コンサルタントからの多自然川づくりに関する問い合わせに対応した。

4. おわりに
平成 29 年 6 月にとりまとめられた「河川法改正 20年 多自然川づくり推進委員会」による提言『持続性ある実践的多自然川づくりに向けて』を踏まえて、今後益々多自然川づくりに関する様々な取組みが現場で行われると想定される。
サポートセンターでは、川づくりの質向上により一層貢献するために、今後も最新の多自然川づくりに関
する知見、優良事例の収集や、発信・普及に努めるとともに、サポートセンターの活動を改めて事業者、建
設コンサルタント、市民の皆様に知って活用していただくため、サポートセンターの広報活動にも積極的に
努めていきたい。

<参考文献>
1) 国土交通省 水管理・国土保全局:多自然川づくり
<http://www.mlit.go.jp/river/kankyo/main/kankyou/tashizen/>
2) 多自然川づくりポイントブックⅢ:多自然川づくり研究会,日本河川協会,2011
3) 床止めの構造設計手引き:(財)国土技術研究センター,1998

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0904河川砂防及び海岸海洋
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