ad

直方市街部の堤防嵩上げに伴う河道掘削に係る検討

ad
ad

Consideration on river channel excavation associated with urban riverbank regrading in Nogata

リバーフロント研究所報告 第 31 号 2020 年 9 月

まちづくり・防災グループ 研 究 員 二瓶 智
まちづくり・防災グループ グループ長 阿部 徹
主席研究員 水草 浩一
まちづくり・防災グループ 次 長 竹内 秀二
まちづくり・防災グループ 研 究 員 佐治 史
まちづくり・防災グループ 研 究 員 阿部 充

1. はじめに
福岡県直方市中心市街地に接する遠賀川の左岸側堤防(勘六橋~日の出橋区間)は、2004 年 6 月に策定された「遠賀川水系河川整備計画【大臣管理区間】」に対して堤防高さが不足している。その上、近年では、2012年 7 月に氾濫危険水位を超過する出水、さらに 2018 年7 月には計画高水位を上回る観測史上最高水位を記録する出水が生じており、住民から早期の堤防整備を望まれている。
これらを受けて今後の河川改修内容としては左岸側堤防嵩上げに際し、管理用道路の設置(堤防天端幅の拡幅)や背後地の市街地側との接続の関係に伴う堤防法線の前出しにより河積が減少するため、右岸合流部(彦山川合流部)を予め掘削する計画となっている。なお、右岸合流部は春にはチューリップフェア、夏には花火大会が開催されるなど、多くの市民に利活用される場所となっており、整備後の利活用を踏まえた掘削計画が求められる。
上記背景の下、本検討は右岸合流部の掘削形状についてワークショップを開催し、市民意見を聴取しまとめたものである。

図-1 直方市中心市街地と遠賀川

2. ワークショップ概要
2-1 参加者
ワークショップ参加者として、将来の理想の遠賀川を描いた「遠賀川夢プラン」を作成した「直方川づくり交流会」(1996 年発足)の方々や、まちを元気にするために遠賀川の利活用について議論を行ってきた「市民部会」(2004 年発足)の方々に参画戴いた。関係機関としては、河川管理者である遠賀川河川事務所、直方市役所等の方々に参画戴いた。
また、「市民部会」でのアドバイザーでもあり、過去に遠賀川での景観や空間利用について研究実績のある九州大学の樋口准教授をファシリテーターとして、同研究室荒巻テクニカルスタッフにも参画戴き、計 28 名の参画者数での開催となった。

2-2 ワークショップ日程
ワークショップは表-1の日程で計 3 回、場所は本検討箇所近くにある遠賀川水辺館にて開催した。
第 1 回では、河川管理者から参加者へワークショップ開催趣旨と、右岸合流部の掘削範囲等について説明し、参加者から利活用等に関する意見を聴取した。第2 回では、第 1 回で出された意見に対する右岸合流部
の掘削形状や整備後の散策路、イベント会場の配置等に関して意見交換を行った。第 3 回では、第 1 回~第
3 回目までに出された意見等を反映した右岸合流部掘削形状や利活用等のとりまとめとした。

表-1 ワークショップ日程

2-3 ワークショップ実施方法
ワークショップ実施方法として、グループ分けはせずに、参加者全員が 1 つのテーブルを囲み、着席の際は行政機関や市民の方々をそれぞれ固まらないよう分散させることによって、参加者全員が意見交換しやすくなるよう配慮した。
また、テーブル上には全 3 回とも右岸合流部の粘土模型を準備した。参加者にはこの模型を活用しながら意見交換をしてもらい、右岸合流部の利活用等を考慮した掘削形状案に関する本ワークショップの成果としてとりまとめた。

写真-1 ワークショップ開催状況
(左:粘土模型、右:意見交換の状況)

3. ワークショップ成果
全 3 回のワークショップを通して、右岸合流部掘削形状や利活用等に関して出された主な意見は以下のとおりである。また、出された意見等を踏まえた掘削計画概要図を図-2に示す。
(1)掘削形状について
・掘削する際は直線的にするのは避け、緩やかな曲線など自然な線形になることが望ましい。
・チューリップの球根は水はけのよい土地を好む点と、左岸側から立体的に見える点から、かまぼこ型の横断形状を採用することとした。
・先端部は、イベント開催利用の観点から固い表面にした方がよい。
(2)利活用について
・チューリップ以外の花の植栽や、ジャズフェス、釣りなどのイベント開催が考えられる。
・「遠賀川夢プラン」の提案にある洪水などに対する防災意識を高めることを目的としたクリクリ灯台が実現することによって、利用者増加が見込める。
・バードウォッチングができるような環境としたい。
・先端部の公園の名前を公募するなど市民に愛着をもってもらう仕掛けも必要である。
・整備後の散策路についてプロムナードと遊歩道が考えられるが、道幅については利用目的等によって判断することになる。
・夜間に備え車止めは必要であるが、ベンチと兼用する方法もある。
(3)治水・整備関連について
・樹木の植栽についても治水上の問題と木陰の必要性から判断していく。
・過去に掘削した先端部には低水護岸が残っており、それが原因となって水深 3 メートルの深掘れ箇所があるため、深掘れ解消のための対策が必要である。
・今後のスケジュールについては、公園整備を含めると予算確保等の関係から時間を要することも想定されるが、できるだけ早く進められるようにしたい。
(4)その他
・「遠賀川夢プラン」の次回案を作成する際には、今回挙げられたアイデアを盛り込んでもらいたい。

図-2 掘削計画概要図
(上:平面図、左下:横断図、右下:縦断図)

4. おわりに
直方市中心市街地を流れる遠賀川は、これまで熱心な地元市民等の活動によって形成された素晴らしい景観、緩やかで居心地のよい河川敷など、憩いの空間となっている。今後も「遠賀川夢プラン」は市民の声として存続することとされており、よりよい河川空間となるよう整備や維持管理において「遠賀川夢プラン」が実現できるような配慮が必要である。
最後に、ワークショップ開催にあたり九州大学樋口准教授をはじめ、国土交通省九州地方整備局遠賀川事務所、直方市役所、そして参加いただいた市民の方々には、多大なるご協力とご指導をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。

<参考文献>
1) 光橋尚司,柏木才助,松尾峰樹,阿部徹:直方市街部まちづくりと調和した築堤のあり方に関する研究,リバーフロント研究所報告,2018

ad

0904河川砂防及び海岸海洋
ad
ad
Follow
ad
ad
タイトルとURLをコピーしました